人の心が手に取るように見えてくる ユング心理学入門 自分の小さな「箱」から脱出する方法 |
知能指数(ちのうしすう、Intelligence Quotient, IQ)とは、知能検査の結果の表示法のうちの代表的な方法である。知能指数以外の表示法である知能偏差値、知能年齢、知能段階点、パーセンタイルについても本記事で述べる。 概要IQとは、知能検査の結果を表す数字である。「生活年齢と知能年齢の差」を基準とした「従来のIQ」と、「同年齢集団内での位置」を基準とした「DIQ」の2種類があるが、従来のIQはあまり使われなくなりつつある。また、検査によってはより細かい「言語性IQ」と「動作性IQ」も決定する。いずれも、平均値は100、標準偏差は15または16である。 IQは、高いほど知能が高いことを、低いほど知能が低いことをあらわす。従来のIQは「知能年齢 ÷ 生活年齢 × 100」の式で算出される。IQは100に近いほど出現率(人数)が多い。主流の検査での最高値は160程度で、最低値は40程度だが、検査によっても違う。50~70は軽度知的障害、35~50は中度知的障害、20~35は重度知的障害とされるが、40未満を測れない検査も多い。知能年齢とは、よく精神年齢とも呼ばれるが、年齢尺度の知能検査で測られる「大体何歳程度の知能か」を示すものである。ただし知能年齢は、成人後はあまり有用な概念ではない。IQは年齢を基準とした数値なので、年齢が違う人同士の知能を直接IQで比較することはできない。同じ人でも、別の知能検査で測れば異なるIQが検出され、同じ知能検査でも2回目以降はIQが高くなる。また、体調によっても結果は変わる。Web上でIQを測定できるサイトもあるが、正確なものではない。知能は両親からもある程度遺伝するが、生活環境によってもある程度変動する。幼いころのIQはある程度成長しても持続し、30以上変動する例は1割に満たない。 知能検査がない時代の有名人のIQなどというものがあるが、後世の推測である。コンドリーザ・ライスのIQが200であるなどという噂も出回っているが、IQ200という数字が現行のアメリカの知能検査で算出されることはない。 IQは万能ではなく、この検査の対象が知能のすべてを含むわけではない。IQ以外にも、50を中心とした知能偏差値や、5段階または7段階に区分した知能段階点などの表示法もある。IQは、知的障害者の療育手帳取得、就学時健康診断、学力と比較しての学習指導などに利用されている。 種類一般的に知能指数・IQと呼び習わすものには、生活年齢と知能年齢の差を基準とした「従来の知能指数 (IQ)」と、同年齢集団内での位置を基準とした標準得点としての「偏差知能指数(Deviation IQ, DIQ, 偏差IQ、偏差値知能指数)」の2種類がある。すなわち、狭義のIQはDIQを含まずに従来のIQのみを意味するが、広義のIQはDIQも含むという事である。本記事では、DIQも含んで広義のIQを意味する場合は単に「IQ」と表記するが、DIQを含まず狭義のIQを意味する場合は「従来のIQ」と表記する。 ウェクスラー式の全年齢、田中ビネーVの14歳以上の領域など、日本の新しい知能検査は、大部分が結果表示にDIQを採用しているものの、田中ビネーVの13歳以下の領域や、田中ビネー1987年版(第4版)の全年齢など、従来のIQを主体としている場合もある。 ウェクスラー式では、「全検査IQ(full scale IQ, FIQ」「言語性IQ (verbal IQ, VIQ)」と「動作性IQ (performance IQ, PIQ)」に分かれて算出され、いずれもDIQである。なおFIQの数値はPIQとVIQの中間に位置するとは限らず、例えばVIQは87でPIQは86だがFIQは85である場合など、PIQとVIQのどちらよりも低い場合や高い場合がある。WISC-IIIやWAIS-IIIでは、さらに群指数という「言語理解 (VC)」、「知覚統合 (PO)」、「作動記憶 (WM)(WISC-IIIでは注意記憶(FD))」、「処理速度 (PS)」の4種類の領域別の数値も算出され、これはIQと同じく中心値が100で標準偏差15の指数の形を取る。 田中ビネーVでは、14歳以上対象の場合に、総合DIQの下に「結晶性」・「流動性」・「記憶」・「論理推理」4種類の領域別IQを算出することが可能である。 VIQとPIQの差、あるいは4つの群指数間の差を「ディスクレパンシー」といい、あまりにも大きい場合(15程度)は発達障害を疑ったり、特別な支援を検討する。 算出法DIQを含まない場合、従来のIQを算出する方法の検査では、
で算出される。成人(何歳からかは検査によって違う)の場合は生活年齢を18歳程度に固定して計算する(知能年齢、生活年齢については後述)。 DIQを算出する方法の検査では、
で算出される。ビネー式の場合は16分の1、ウェクスラー式の場合は15分の1を使用する。 分布IQの平均値は100であり、85?115の間に約68%の人が収まり、70?130の間に約95%の人が収まる。 右図のように、IQは100を中心として山型(ベルカーブ)に分布する(正規分布)。ただし、従来のIQを使用する場合は、必ずしも綺麗な分布ではない。標準偏差2つ分 (2SD) 以上平均値から乖離している場合は異常値とされる。田中ビネー式の標準偏差は16であるため、68以下と132以上が異常値とされる。ウェクスラー式の標準偏差は15であるため、70以下と130以上が異常値とされる。 最高値と最低値従来のIQを使用する場合は、年齢の低い児童の場合はIQが200を超えるような場合もあるが、従来のIQは相対的な発達の度合いを示す数字であり、検査問題も難しさは有限であるため、年齢を重ねるごとに一定値以上の数字が出る確率は徐々に減っていく(一定値以下の数字が出る確率は減らない)。成人後は各知能検査によっても異なるが、160程度が上限である場合が多い。 DIQを使用する場合は、分布が厳密であるため、低年齢でも高年齢でも、160程度が上限で、40程度が下限である場合が多い。 WISC-IIIのFIQ、PIQは上限が160、下限が40であるが、それを超える得点も取りえるため、その場合は「161以上」、「40未満」と表示する。VIQは上限が157、下限が43である。4つの群指数は上限が150、下限が50であるが、それを超える得点も取りえるため、その場合は「151以上」、「50未満」と表示する。 新田中B式知能検査の中高成人用では、上限はISS80、IQ145であり、下限はISS20、IQ55である。 知能年齢・生活年齢被験者の知的な能力が、何歳の人の平均と同じかをあらわしたものを「知能年齢 (Mental Age, MA)」と呼ぶ。「精神年齢」とよく言われるが、訳が不適切だとの指摘がある。発達検査などの場合は「発達年齢」と呼ぶ場合も多い。対義語は「生活年齢 (Calendar Age, CA)」であり、「暦年齢」・「実年齢」などとも呼ばれる。「肉体年齢」ともいうが、これは実年齢に対する肉体の成熟度合いの意味にも取れるので、使用しないのが望ましい。例えば知能年齢が11歳3か月で実年齢が11歳9か月である場合は「MA 11:3, CA 11:9」と表記する。成人後は知能の伸びが緩やかになり、老年になると下降していくため、知能年齢の概念は、成人後はあまり有用ではないとされるが、児童の発達を見るのには感覚的に受け入れやすい。 異年齢との比較「従来のIQ」の数字は、あくまで知能の発達の早さを意味するものであり、異年齢の他人との数字の単純な比較によって直ちに天才的であるとか成人より高知能であるとかを断定することはできない。たとえば5歳の児童が、10歳の平均的な児童と同じ知能を示せば、IQは200になる。だから、IQ100の11歳児とIQ200の5歳児を比べれば、平均的な児童であるIQ100の11歳児の方が、突出して数字が良いIQ200の5歳児より知能は高いことになる。絶対値ではなく、月齢との相対値であることに留意しなければならない。 また、5歳でIQ100の人が7歳になったらIQ90であった場合、一見すると数字が低くなったので知能が退化したかに見えてしまう。しかしながら、5歳時のMAは5歳0ヶ月であり、7歳時のMAは約6歳3ヶ月である。このため実際には知能水準は伸びている。こういったことから、IQよりMAを使用した方が発達度合いが感覚的に分かりやすい場合もある。 同一人物内のIQの変化同一人物を複数種類の知能検査で測定すれば、違う数値が出ることはありうる。例えば、WISC-III開発時に田中ビネー(原典に版の表記なし。多分第4版。)とWISC-IIIを38人(やや少人数)に対して実施したところ、WISC-IIIの平均FIQが100.1であるのに対し、田中ビネーの平均IQは111.7であった。WISC-Rと田中ビネーの比較でも同じ様な結果は出ており、一般的に「田中ビネーの結果はWISCの結果より10ほど高いと考えた方が良い」と言われている。なおK-ABCとの比較、ITPAとの比較も、どちらも28人を対象として実施されたが、この2つについては大きな乖離はなかった。 なお、田中ビネーV開発時にもWISC-IIIとの比較は行われており、平均5歳11ヶ月の97人に対して実施された結果、田中ビネーVの平均IQ129.9、平均DIQ111.7に対し、WISC-IIIの平均FIQは115.6であった。DIQ基準でいえば拮抗あるいは田中ビネーVがやや低めといえるが、IQ基準では14程度田中ビネーVが高い。 ただし後述の通りIQは検査の開発時期によって変化するため、これらの得点の相違は、検査の性質の差によるものか、検査の開発時期が異なることによる差か、確かなことは言えない。 同一シリーズの知能検査でも版が違う物で測定すれば、違う数値が出ることはありうる。例えば、WISC-III(WISCの第3版)開発時にWISC-R(WISCの第2版)と比較したところ、WISC-Rの平均FIQは108.9であるのに対し、WISC-IIIの平均FIQは103.3であった(日本版相関係数0.84)。なおフリンの研究によれば、全く同じ知能検査を使用して比較しても、IQは10年で3ポイント程度上昇していく傾向である。この傾向は、レーヴンのマトリシスのような文化的な影響度を最小限にした典型的な非言語性テストでも、いっそう著しく見られるのであり、その原因は不明である。田中ビネー第4版と第5版の間の比較調査は今のところ見当たらないため、こちらは改訂により高く出やすくなったのか低く出やすくなったのかは不明である。 同一人物を同じ知能検査で複数回測定すれば、2回目以降は数値が高くなりがちである。例えば、WISC-IIIを同一対象に14?180日(平均76日)の間隔を置いて再検査したところ、一回目の平均FIQは101.1であるのに対し、2回目の平均FIQは109.4だった。なおVIQは上昇幅が少なかった。 正確性外国人などの非ネイティブ者、言語障害者、非識字者などの場合は、言語面に重点を置いた検査で著しく低い数字がでる場合が多い。このため、そういった被験者を対象とする場合は、非言語式(ノンバーバル式、B式)の知能検査を用いなければならない。逆に、上肢(手指など)に障害がある場合は、B式検査では著しく低い数字が出る場合もある。一部で、欧米系白人のIQが高く、黒人などのIQが低く算出されている統計を見受けることもあるが、前述フリンの研究では、同じ白人であっても50年前のそれは現在に比べ、非言語性テストで平均IQが15も低く算出されるということがあり、性急な結論は出せない。 1920年代にコックスという学者が、歴史上の数百人の人物のIQを推定して算出した書籍を出版したが、それらの人物の時代には知能検査はなく、親の職業や幼少時などのエピソードで判断している場合が多かった。この書籍で発表されたIQはインターネット上の各所に掲載されているが、信頼性・妥当性ともに高いとはいえない。じっさいにケンブリジ大学の教授陣のIQをウェクスラーテストで測定した結果と比較すると、コックスの推定は全般的に高すぎるし、分散も大きすぎる。あくまでも参考程度に見るべきである。テレビ番組(テスト・ザ・ネイション)やインターネットの無料サイトで測定するIQは、全てがそうであるとはいえないが、あまり正確ではなく、適当ではない。それはバラエティー性(解くのが楽しいか)を重視したものが多く、有料の知能検査ほどには正確さ、適当さはないといわれる。例えば、IQの算出には生活年齢がほぼ必須であるが、ネット上の知能検査のうち、年齢の入力欄があるものは今のところ一部のみであり、また制限時間が厳密に設定されている検査も少ない。また、元来の目的から言えば、IQはその高さを競うためのものでは無いということも考慮すべきである。 特に年少児や発達障害児の場合は、知能検査時の体調や感情的状態によって、IQがかなりの程度上下すると言われている。 決定要因知能がどの程度親から子に遺伝するか、IQがどの程度生活環境によって変動するか、低年齢時のIQがどの程度後まで連続するか、ということには諸説があり、社会的にも誤解されやすい。たとえば「IQは生得的なものであり、努力をしてもあまり変わらない」という説は、後天的な努力を否定する遺伝決定論として批判もある。その一方、「教育によってIQがかなり上昇する」という説は、教育の重要さを示す反面、業者の宣伝文句となって過度の早期教育をあおる危険性もある。実は、この両者はともに、知能の遺伝性の問題とは、知能の絶対水準が主として遺伝で決まっているか否かであるという捉え方ををしている。しかし現代の心理学者や行動遺伝学者は、この問題については、主として、集団の知能の分散のどの程度が遺伝により決定されているかという考察をしており、絶対水準については何も語っていない。 ターマンがスタンフォードビネーテストを発表したころは、このテストで測定される知能は、生得的な能力を測っており、かつその絶対水準がおおむね遺伝によって決まっていると考えられていた。ターマンや、彼の影響を受けた鈴木治太郎らの著書を読むと、父親の職業や、都会と田舎でビネーテストの成績が違うことを、主として遺伝的な差と見て疑うところがない。しかし、その後、時代が新しくなるにつれて知能テストの成績が向上するという、後にフリン効果と呼ばれる現象が見出されることによって、そのようなナイーブな考え方が成り立たないことが明らかとなった。 遺伝性知能は、両親から遺伝するとされている。しかしながら、どの程度遺伝するかは諸説がある。この研究については、双生児法による行動遺伝学的研究から、標準的な知能の分散の何%が遺伝により、何%が環境によるのかという形で結論付けられる。この考え方によれば、教育の機会均等が図られている社会では遺伝率が高く、そうでない社会は、遺伝率が低くなると予想される。現代の先進工業社会では、知能の遺伝率は子供で50%、成人では70%以上を示す研究が多い。成人の方が遺伝率が高いのは、成人は自我が発達しているため子供ほど周囲の影響を受けず、自己の行動をその遺伝的特性に合わせて決定するからだと言われている。 1994年に『ベル・カーブ』 (The Bell Curve) という845ページの本が、リチャード・ハーンシュタインとチャールズ・マレーによって発行された。これは、知能の大部分が遺伝によって決定されると述べていたため、多くの論争を巻き起こした。 生活環境IQは、生活環境によって大きく変わるとされている。たとえば1923年の研究では、イギリスの運河船の上で生活している子供は、学校出席率は全日数の5%で、両親が非識字の場合が多い。これらの76人の子供の知能を測ったところ、平均IQは69.6であった。なお、4?6歳では平均IQは90、12?22歳では平均IQは60であり、成長とともに知能の伸びが低くなっている。 また、僻地の生活者も平均IQは低いとされる。1932年の研究では、アメリカのワシントンD.C.西部のブルーリッジ山脈に住む子供を対象に知能検査をしたところ、山のふもとの村の子供のIQは76?118だったが、山間部の子供のIQは60?84だった。また運河船の例と同じように、年齢が高いほどIQが低くなっている。 また、離島の児童も平均IQは低いとされる。広島大学の武村一郎らによる1965年の研究では、瀬戸内海の人口7千人の島の小学生152人に対して田中ビネー知能検査を実施したところ、男子の平均IQは92、女子の平均IQは80であった。なお、IQ75以下は22%と著しく多かったが、本土の特殊学級の知的障害児との比較では、知能検査のうち学習経験に左右される検査問題では、離島のIQ75以下の児童は低年齢で正答率が低く、高年齢で正答率が高いという特徴があり、一般的な知的障害児とは違いがあった。この研究グループでは、この現象を「離島性仮性知的障害」と名づけている。 なお、生活環境のみならず、検査時の環境や体調によっても大きく変化するが、これは他の検査でも同様であるため、「心理検査」で詳述している。 恒常性同一人物のIQは、一般的には成長しても低年齢時とあまり変わりはないとされている。たとえば1948年にアメリカのホンジックが行った研究では、222人の被験者を対象に6歳時と18歳時のIQを比較した(文献によっては、1歳時と18歳時となっている)が、50以上変化した例は0.5%で、30以上変化した例は9%であった。しかしながら、20以上変化した例は35%で、10以上変化した例は85%であり、ある程度は変動するものだということができる。また、狩野広之による1960年の研究では、小学校1年から中学校3年までの児童生徒を対象としてIQの変化を調べたが、「小学校1年生時点のIQはそれ以降大きく変わるケースが多い」ということと、「小学校3年生以上では、IQの変化はかなり少なくなってくる」ということが分かった。 大きな事件があった場合や、深い悩みがあった場合などはIQが大きく変動する。「病気」・「父の復職」・「非行」・「競技での成功」・「過保護」・「人種的な悩み」・「体重・容貌の悩み」などの要因で、IQが大きく変動するとされている。 一部では、IQは生涯不変の神秘的な数字(マジックナンバー)であるという誤解があるが、学力検査ほどではないにせよ、変わりうるものである。また、当然ながら知能検査の種類によっても変化する。 限界最初期の知能検査の成り立ちは、児童や成人に知的発達の遅れの問題がないかどうかを調べるためのものであった。IQはその測定のために便利な表記法として編み出されたものでしかない。このためIQは知能全般にわたる能力を示す数値と考えるべきではなく、知能検査の内容に含まれる言語的能力や論理的能力をはかることができる目安程度のものと考えるべきである。こういった意味を踏まえて、IQは限定された事柄についての判断材料として扱うべきである。元来、人間の知能は普通の知能検査によって全て数値化できるほど単純なものではないと考えられるし、たった一つの数字で表現することが可能なものか、ということも問題である。このため、いくつかの検査では領域別の数字が出せる作りになっている。 また、障害の診断を目的としても、IQは正常か高水準であっても学習障害や自閉症などが存在する場合があるので、あくまで知的障害の診断を主目的とするならともかく、全ての発達心理学関係疾患の診断に有効なわけではない。もっとも、これらの疾患の場合は、知能の各部分の数値がアンバランスであるなど(ディスクレパンシーが大きい)、特徴的な検査結果が出る場合も多いが、それ専門の検査も存在するのでそちらの方が適切である。勿論、身体障害の診断にはほとんど無力である。 また、「IQは知的発達の遅れがないかを表示する数値であるため、知的発達の早い児童について出た数値については、その正確さや有用性全般に疑問がある」とする説もある。しかしながら、高知能児を対象に早期教育・ギフテッド教育を優先的に行う国もある。 IQ以外の表示法IQは知能の代表的な表示法であるが、IQ以外にもいくつかの表示法が使われている。 知能偏差値知能の偏差値を「知能偏差値 (Intelligence Standard Score, ISS)」という。これは、知能を偏差値の形で表示したものであり、50を中心として上に行くほど知能が高いことをあらわしている。特徴としては、母集団の結果にばらつきが多い年齢層とばらつきが少ない年齢層の両方で、正確な表示ができることなどがあげられる。また、標準学力検査の結果も学力偏差値で表示される場合が多いため、IQと学力は比較しにくいが、知能偏差値と学力は比較しやすいという特徴もある。また、DIQはもともと偏差値・標準偏差の考え方を利用した表示法なので、知能偏差値はDIQと簡単に換算できる。伝統的に集団式検査に多い表示法である。 これは偏差知能指数 (DIQ) とは異なる。DIQは中心値が100で、知能偏差値は中心値が50である。
簡単に換算するには、標準偏差15の場合、
とすればよい。 知能年齢前述の知能年齢をそのまま使用して、IQを出さずに生活年齢と併記して表示する方法。IQは生活年齢を基準として相対的な知能の高低を表示する方法であるため、発達の遅れ・進みの度合いが分かりやすいが、絶対値でないため感覚的に理解しにくい。しかし、知能年齢で表示すれば、14歳未満の場合は感覚的に理解しやすくなる。なお、成人の場合は知能年齢での表示は適しない。 知能段階点知能を5段階ないし7段階に分けて表示する方法。あまり精密な結果を出さない方が良い場合などに用いられる。ウェクスラー式とビネー式では分類基準が異なる。
パーセンタイル「知能百分段階点」ともいう。その知能水準が、最下位からどの程度の位置に存在するかを表したもの。一般人100人の集団のうち、下から何番目かという意味だと考えても良い。たとえば「40パーセンタイル」とは、100人のうち下から40番目に位置し、下表ではDIQ97に相当するものである。たとえば、DIQ108以上の人は、下表では70パーセンタイルであり、100人中30人存在することになるが、DIQ130以上の人は、下表では98パーセンタイルであり、100人中2人しか存在しないことになる。ただし、従来のIQではこの表は当てはまらない。
発達指数発達検査などの場合はIQの代わりに「発達指数 (DQ)」であらわす場合も多い。この場合は、知能面以外にも、歩行・手作業などの運動面、着衣・飲食などの日常生活面、ままごとなどの対人関係面の発達も重視された数値となる。発達検査は低年齢対象のものが多いため、発達指数はIQよりも低年齢で多用される。 EQ・SQ近年、「心の知能指数」ことEQも話題になっている。さらに、男性のみ対応の性的能力指数「SQ」というものも開発された。 活用IQや知能偏差値などは、各種の批判があるものの、いろいろな場面で活用されている。 学校などで行われた知能検査は、結果が非公開になる場合も多い。また、知能検査の結果は教師であれば知ることができるが、IQが低い児童の潜在能力を低く見てしまい、ゴーレム効果(ピグマリオン効果を参照)・ハロー効果によって本当にその生徒の知能が本来より下がってしまう危険性があることに注意するべきである。 学校で行われた知能検査の結果は、標準学力検査の結果などとともに内申書や指導要録などに記載される場合がある。 障害者認定IQ70または75未満(以下)の人は知的障害があると認定され、また療育手帳の交付対象となる。なお70以下の人は理論的には2.27%だが、そのうち知的障害者認定を受けているのは6人ないし7人に1人程度である。また、DIQを結果表示に用いる知能検査では、IQ40未満が実質的に測定できず、障害者手帳の交付時の診断で齟齬をきたす場合がある(外部リンク1参照)。 就学時健康診断就学時健康診断の際にも、知的障害の存在可能性などを調べるために知能検査が行われる。その多くはあまり精密でない簡単な検査だが、一部では健常児と障害児を分離し、統合教育に逆行するものだとして批判されている。なお、2002年の法改正により、知能検査以外の適切な検査を使用することも可能となった。 学力との相関学習指導などの目的から、知能と学力の相関を調べる場合がある。これは各学校の教育の達成度合いを見て、学校評価をするためにも使用される。 学力偏差値と#知能偏差値を比較し、知能検査の結果に比して学業成績が良い生徒を「オーバーアチーバー」といい、その逆を「アンダーアチーバー」という。均衡している場合は「バランストアチーバー」という(「アチーブメント」は達成度の意味)。修正成就値で8以上の差があるかを基準にする場合が多い。この場合の学力偏差値の算出には、各社発行の標準学力検査が用いられる。知能検査は全集団を対象に標準化されたものであるため、知能と学力を比較するには、同様に全集団を対象に標準化された学力検査でなければ正確に比較できないためである。この検査は、日本、あるいは1都道府県を基準として標準化されたものであり、教師作成テストの対義語である。なお新入学時用や各学期用の製品も存在する。またこの場合の知能偏差値の算出には、集団式知能検査が用いられる場合が多い。
大学入試2005年度より名古屋商科大学が推薦入試で「IQ入試」と呼ばれる方式を導入している。また、「IQ」という名前こそ冠していないものの、国際基督教大学の入試の1科目である「一般学習能力考査」も知能検査に近い内容を出題している。類似の出題を入試科目の中に含めている大学は、他にも多数存在する(現在は廃止されたが、中央大学総合政策学部「基礎能力テスト」などの先例もあり)。 公務員試験「教養試験」という科目名で出題される「数的推理」「判断推理」「空間把握」や、「適性試験」、クレペリン検査などには、IQ テストの要素が強い。 特定集団の知能指数受刑者刑務所の収監者に対する知能検査で、IQが低い者が著しく多いことが知られている。元議員のジャーナリスト山本譲司は自己の受刑体験から刑務所内に知的障害者が多いことを知り、著書で問題提起をしている。2004年度の新受刑者のIQは、50から119までは10ごとに区分され、他は49以下、120以上、測定不能に区分されて集計されている。このうち最も多いのが80〜89で全体の27%を占め、69以下(知的障害者)の合計は全体の22%となる(測定不能はただの検査忌避も含まれそうなので含めず)。一方110〜119は1%しかいない。 ただしこれらの検査結果が完全に正確なものであると断言することはできない。知能検査は被検査者と検査担当者のラポール(信頼関係)が確立していることと、検査環境が心理的・生理的に快適であることと、検査時の精神状態が安定していることが正確な結果を出す前提条件である。ところが刑務所に収監されることが確定しているというあらゆる面で不安定な時期の被検査者にとって、実力を完全に発揮することは難しい。そのため、平常時に検査を行った場合よりも低い結果が出ている可能性も否定できず、この統計は有益なものであるが盲信することは慎むべきである。 |