突然ノーザンに銃口を向けられたハンターの少年は振り向いて言った。

「獲物? それってあのどくちょう……!」

 しかし、そこで少年の声が止まった。銃口を向けられていれば、それも無理は無いのかもしれない。ボウガンは人間の命を簡単に奪える凶器なのだから、黙っていろという方が無理だ。

 あの強靭な鱗や甲殻を打ち破る為の火薬製の兵器であるのだから、人間が食らえば一巻の終わりである。



毒鳥竜どくちょうりゅうだぁ? 何とぼけてやがんだよ? さっき俺が狙ってた標的と戦ってたから今砥石使ってんだろ?」

 毒煙鳥どくえんちょうが飛んでいった方向にはこの少年がいたのだから、きっと毒煙鳥と戦い、そしてその結果として劣化した剣を研いでいたと考え、そして疑ったのだ。

「標的って……何の事だよ? あんたが言ってる標的って誰だよ?」

 少年は必死な思いで否定をしている。



毒煙鳥どくえんちょうの事だ。お前あそこから来ただろ。だったらあいつん事狙ってたって事じゃねえか。飛んでるとこ見たはずだぜ」

 ノーザンは未だに銃口を少年の顔面に向けたまま、疑い続ける。

「そう言えば確かに空は……なんか飛んでたけど……」

 少年は少し前の事を思い出すなり、そう言い返した。



「なんだ、やっぱ知ってんじゃねえかよお前」

 それでもノーザンは銃口を逸らす事をせず、少年を攻め立て続ける。

「でもあれは俺の上通ってっただけだぞ? 俺その毒煙鳥って奴と戦ってないぞ?」

 それは事実なのだろうか、少年は怖いからか、やや弱々しく答えているが、その発言に嘘が含まれているとはあまり考えられない。



「証拠あんのか? 見せろや」

 少年を疑い続けるノーザンの態度は、まるで少年を追い詰めているようにも見えた。

「証拠って言われても……、でも俺やってないのは事実なんだって!」

 自分は事実しか言っていないのに、それを受け入れてくれない男に多少苛立ったものの、それでも相手が怖いから本気では抵抗する事が出来ない少年であった。

 しかし、ノーザンはそれで許してくれなかった。銃口を僅かに少年の顔面から逸らし、そして銃弾を発射させたのだ。

 飛ばされた銃弾は少年の横を通り過ぎ、そして少年の背後にある木々の中に入って消えていく。



「おいおい、人のもん奪っといて逆ギレかおい?」

 自分の獲物を奪ったであろう少年に対し、改めてリロードをし直した武器を向け、更に迫る。少年を見下しながら言ったノーザンは、更に少年に言う。



「いい事教えてやる。お前以外にも俺の獲物狙ったアホがくっさる程いてなぁ、そいつらもお前と同じで逆ギレしやがったから、あの世に送ってやったぜ。お前もどうせ反省してねんだろうし、あいつらんとこ送ってやるよ」

 ノーザンは自分の行いをまるで反省しようとしない少年に対し、再度銃口を向け、そして、再び最終的な決断を判定したかのような台詞を出した。



「死ね」



 引き金に手を伸ばしたまさにその時である。

 茂みから現れたのは、紫色の鶏冠が印象的な大型の毒鳥竜と、その子分達だったのだ。その毒鳥竜達が現れた隙を突かれ、少年に逃げられてしまう。

「あ! くそ! 待てや糞ガキがぁ!!」

 獲物を奪おうとしていた少年を逃してしまい、怒鳴りながら少年を追いかけようとするが、現れた毒鳥竜の大群のせいで思い通りに事が進まなくなってしまった。

 結果、少年の始末に失敗し、結局は自分も逃げる破目になってしまう。



「まあいいや、あんだけの量ならあいつもただじゃ済まねえだろうし、そんまま死ねや糞ガキが」

 毒鳥竜の大群から何とか抜け出したノーザンは、背後にいる毒鳥竜の群れの中にいると思われる少年に言い残し、そしてノーザンは毒煙鳥を再び追った。

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