ε 未だに賑わい続ける夜のアーカサス……
ε その光景はまるで
ε やはりハンター業がこの街にとって大きな貢献となっているのだろう……
ν しかし、光の
ν
――■■ 混濁する
「なんだあれ……?」
アビスの眼中に入る、彗星のような物体。その面妖なそれは少年の心に好奇心を
しかし、それは好奇心を湧き立たせるだけでは飽き足らず、もっと大胆な激動に走り出そうとしているのだが、それがアビスにはまず伝わらない。何せ、彗星のような物体は言語を話さないのだから、伝わるはずが無い。だが、言葉を使わなくても、これから何が起こるのかを伝える方法が一つ、存在する。
▼
π やがて
ρ まるで初めから
σ
г ш さあ始めよう……/PAIN GAME ч ц
■■始まったのだ……
□□始まったのだ……
■■始まったのだ……
被害となった建物は火達磨と化し始める。
その被害になった建物からはアビスは相当な距離があった為、詳しい事情は分からないが、
なんだか悲鳴が響いているような気がしてくる。
「な……なんだよこれ……」
ただ空を流れているだけだった頃は呑気に眺めていただけのアビスでも、
遠距離からの破壊音、そして徐々に大きくなっていく悲鳴を聞けば、この空気が不安になってくるのも無理は無いだろう。
▼アビスの周囲にいる街の人々が騒がしくなり……
「おい、なんだよあれ!」
「あれ燃えてるぞ!」
「逃げた方が――」
丁度喋っていた者達は全員男性であったのだが、ここで再び惨劇がやって来る。
λ どこからともなく飛んできた
▲遂に、アビスの近くに建てられていた建造物に直撃……
「わぁあ!!」
球体はまるで建物に張り付くように吸い付かれ、そして一気に建物を燃え上がらせる。
聴覚的な刺激こそは少なかったものの、目の前で炎が立ち上がれば黙らずにはいられず、
アビスは両手で頭を抱えながら身を
きっと遠距離で飛ばされていた物体と同じ種類の物だろう。
炎の欠片がゆっくりと地面に落下し、アビスを
襲おうとしてみせる。
「危ねっ!」
上から感じた異様な熱を感じ、すぐに
■等と言っている間に再び
まるで夜空を泳ぐように流れる炎の球体が別の建造物に命中する。
それは直接アビスに身体的な影響を与えるものでは無いものの、心理的な部分では話は別である。
◆▼ そろそろ付近でも男女の悲鳴が飛び交い始め……/BLOODY SHRIEK ▼◆
やはり炎の飛来が収まる事は無く、徐々に街の建物は炎によって蝕まれ始めている。
その光景の中では既に賑わいと言う明るい騒ぎは消え失せ始めている。
今は恐怖と悲鳴がこの街を支配し尽くそうとしているのだ。
――誰がこんな
――どこから飛んで来ているのか、それも気になる……
――この街を破滅に追い込んで何を目的とするのか……
●
……いや、それよりまず
「あ、そうだ! あいつだ!」
アビスの頭に咄嗟に思い浮かぶものがあった。
それはたったさっきまで一緒にいた人物であり、妙な話をして少しだけ怒られた事もあったが、
それでも共に危機を切り抜けた大切な友人である。
そして、今はよりによって、怪我をしている状態であり、
だが、深く考えてみればこの状態を作ったあの激闘もこの破滅の事件の予兆だったのかもしれない。
……そして、今アビスは
今来た道を全速力で戻り、響き渡る悲鳴を無視して、時折目の前に落ちてくる火の粉を飛び越え、
すぐに安否を確かめようと、頭の中に目的の少女を思い浮かべながら国立病院へと早急に向かっているのである。
(ミレイ……大丈夫か……?)
心の中で、もし炎に巻き込まれていたらどうしようか、不安になっているのである。
■勿論、無事なら良いのだが……
【
「お前達! 早急に準備を整えるのだ! 急げ!」
ギルドナイトの制服を着た中年ながらも頑丈な印象を強く植え付けてくれるような顔つきをした男が、
同じく制服を着用した他の者達に命令を与えながら、乱暴に人差し指を立てた右腕を振り回す。
そこはギルドナイツが出入りする基地であり、
現在、非常に
「隊長! 軍隊はまだ到着されてないのでしょうか!?」
恐らく部下であろう同じく制服を着た男がそんな確認を取りにやって来る。
「要請は既に届けてある! 彼らの援護が来るまで我々だけで護れるだけ護り続けろ!」
質問を受けた隊長の男であるが、要請済みである事を伝えた後はすぐに気持ちを切り替え、
助けが来るまでの間はこの街に残されている戦闘力、即ち彼らギルドナイトだけで持ち応えるよう、再度命令を飛ばす。
「了解しました!」
それだけ言いながら、敬礼し、すぐに武器であるボウガンを取って隊長の男の目の前から姿を消す。
徐々に職員達は武器を取り、基地の外へと走り去っていく。
この街で戦う力を持っているのは、ハンターと、ギルドナイトくらいであるのだから、
つぎ込めるだけの力を注がなければこの脅威を弾き飛ばすのは難しい。
――だが、何故か一人だけ戻ってくる男が……――
「隊長! 大変です!」
無論、
もっと別の何かがあるに違いない。
「大変だって……何があったってんだ?」
一瞬隊長も今のこの混沌の状況をそのまま伝えに来たのかと考えたが、
部下の信頼を考え、別の内容が来ると察知して改めて訪ねて見せる。
「妙な物体がこっちに飛来してきてます!」
基地の出口側に指を突き付けながら報告に来た部下が説明を施す。
しかし、鳥かなんかでもやってきたのだろうか?
■ ■ 【
●○ 一体あれは何なのだろうか?
▲△ 鳥と呼ぶには、あまりにも奇形過ぎる……
〜〜【
通常、鳥と言う生物ならば、
η しかし、今迫ってきている存在は
しかし、どのように浮力を手に入れているのだろうか?
κ よく見れば、背中から何かが突き出している……
まるで棒のように突き出た突起の先端には
計四枚のブレードが高速で回転しており、生物として考えれば非常に特殊な飛行手段として見て取れる。
● 基地内部/In the base ●
「な……なんだよあれ……。今まで見た事無いぞ……」
基地の窓から外の様子を覗いた隊長の男は異型の謎の生物を見るなり、先程まで走らせていた部下に対する威圧感を散逸させてしまう。
「ですが、あれでしたら射撃部隊が赴けば大丈夫かと思います!」
敵は空中にいる以上、近距離武器ではまるで太刀打ち出来ない事は目に見えている。
だからこそ……
▽▽ ボウガンの出番である!
「兎に角、被害が広がらんようにな! 急げ!」
能力を信じた隊長は早急に部下達を外へと向かわせる。
勢いよく伸ばされる右腕がそれを物語る。
●
「ぐが……」
一匹から始まり、それに続いて他の飛行生命体も口元にエネルギーを溜め始める。
空にいれば外部からの邪魔が入らず、安全に、堂々と力を込められるのだろう。
■
ф 口の中がどんどん満たされる……
まるで口に大きな
ф やがて、
もう口に留めておく必要性が無くなる
τ δ◆プレゼント/HOT TOUCH◆δ τ
「がぁあ!!」
飛行物体どもは一斉に濁った叫びをあげ、
地上に向かって
≪
まるで小規模の隕石を降らすかのように、白い悪魔達は吠え始める。
ただの音だけで済ませてくれないのが彼らである。
溜め込んだ
γ―> 狙う場所は……
ρ―> どこでもいい
γ―> 街を破壊出来ればいいのだから……
π―> 単に街を燃やせられれば!
人間の目でも捉えられる白い煙が尾を引きながら、
真っ赤な炎が街に向かって降り注ぐ。
●
爆音は響かないが、破壊と言う意味合いは決して失われていない。
ぶつかると同時に
これならば
周囲に響く
▲▲
「あれだ! 撃ち落せ!」
ギルドナイトの制服を着た衛兵の中でリーダー格であろう男の怒鳴るような尖り声で
周囲の衛兵に攻撃命令を飛ばし、ボウガンの銃口を空へと向ける。
――ドォン!!
――ダダン!!
――シュン!!
力強く構えられたボウガンの銃口から、次々と弾丸が発射される。
まだあの要請の後の結末が形になってここへと現れるまでは、
ギルドナイトが力を出さなければいけないのだ。
◇◇
街の空気を切り刻みながら、真っ直ぐと破壊すべき対象へと突き進む弾丸。
平和、秩序、解放、その他様々な意味を込めた思想をそれぞれ一発一発に取り込み、
巨大街を
火薬の力は意志を込められた弾丸に高翔する能力を提供する。
だが、それは決して無限を物語る訳では無い。
そして、自在に宙を動き回る知識を与える訳では無い。
弾丸は、真っ直ぐにしか進めない。それは風と、自然の掟に等しい。
勢いと言う秘儀を受け取ったら、後はその直進地帯に標的が重なってくれる事を
ただ祈るしか無く、外してしまった場合は重力に引き寄せられる時を待つだけ。
そして、仮に標的にぶつかる事に成功したとしても、最終的には
外れた時と同じ結末を辿る。
◆ 飛行物体の
―> α 生物が同時に持つ
―> α それとも単純に
≪素早く飛来する弾丸を回避する/RUN OFF≫
相手は相当な数が飛んでいるが、それが命中しやすくなる理由にはならないのだ。
まるで崇高な王が通り過ぎるかのように、迅速にその空間を空けるのだ。
鈍さを覚えさせないとは流石は巨大な街を破壊する目的を考えるだけの事はある。
「ぐがが……」
いくつもの銃弾を飛ばされた怒りを直接形にして返そうと企み、
飛行物体は例の濁った低い
炎の塊を口から飛ばす。
◆▲ いくつも飛ばされるそれは、まるでそれぞれが競争でもするかのように地面へ向かう…… ▲◆
――煙の尾を引き
――いくつかは周辺の建物へとぶつかるが……
――上手く地面へ辿り着いた炎の塊は……
「うわ、うわぁあああ!!」
球は不幸にも直撃されずにその身を散らしてしまった訳であるが、
この球の特殊能力が衛兵の何人かを炎に包み込んでみせたのだ。
υυεε
地面へ触れると同時に周囲に炎が広がる事を忘れてはならない。
広がる炎も
衛兵の悲鳴は、炎に包まれた事を意味する。
数名がこれで重症を負ってしまったのだ。
ζ 更に……
何やら四本足を携えた
アーカサスの街、ここへ到着する時間はもう長くない……