【釈迦への悪魔宿りし鬼火/SACRED MURDER】



「どうだ? よくよく見たら結構美しいもんだろ? 火っつうのはよ〜」

植物の実りを感じさせてくれないこのバブーン荒野で、
一人の宗教のなれの果てのような姿を持ち合わせた人間ならざる者デミヒューマンが金色の杖の先端を地面に軽く叩きつけながら、
敵対する人間そのものヒューマンに妙な質問を提供している。



χ こいつデストラクトにとっては…… χ

夢幻を生み出す火炎ライジングフレイムインユートピアこそ、この世で崇拝すべき存在にして究極の芸術品トロピカルグレイブなのだ。
今も直接炎にその青い身体をあぶられながらも、平然としながら次の言葉を発して見せる。



「お前ら人間世界の概念さえ捨てりゃあなあ、こうやって火ん中で動く事だって可能になんだぜぇ」

確かにこの亜人の皮膚は炎で今もあぶられ続けているが、まるで損傷の様子を見せつけない。
まるで、この特殊体質を自慢しているようだ。



「こいつ……もう人間じゃねぇ……」

――何を今更分かりきった事を……――

炎に直接身を曝け出しているデストラクトに、スキッドはただ驚かされるばかりだった。

「それよりどうしよ……、あんなに火が立ってたら、近づけない……!」

クリスは周囲に立ち上がる灼熱の炎に動きを封じ込められるかのように、その場から動かず、
そして相手にとってはまるで影響を見せない真っ赤な盾ファイアに悔しさを覚える。



●◆ 一応クリスの赤殻蟹の武具も炎と同じ赤をしているが……

色が耐性を示すものでは無く、単なる外見でしか無い。
炎に飛び込めばまずクリスは助からない。

だが、こんな所で立ち止まっている訳にはいかない。



「火だろがなんだろがやるしかねぇだろ!!」

やや物々しい音を立てながら、斬破刀を構えた土色の武具を装備した男が炎の中に潜むデストラクト目掛けて走りこむ。

◇ι 双角竜装備のフローリックだアーマー・オブ・ホーンズ

そびえ立つ角が装備者に対して勇気と力を与え、敵対する相手には威圧感と恐怖を与える。

――足元の炎は……

――角竜の甲殻双角竜シールドが防いでくれるのだから……

――安心して挑める……



「やっぱそう来なくっちゃなぁ!!」

デストラクトはある意味での不安を覚えていた事だろう。

κ 戦いバトルがつまらなくなる事を……



●● 迫る斬破刀フォールスティール

斜め上から襲ってくる刃を見た途端、デストラクトは一気にテンションを再発させ、
地面に向かって先端をだらしなく落としていた金色の杖ヴァナプラスタを持ち上げ、
やって来る刃に叩きつけてみせる!



―ガキィン!!

いつもの金属音タイアーノイズである。

だが、すぐにその一時ひとときは消し飛ばされる。

「てめぇに負けっかよ!!」

フローリックの怒号の入った気合と共に、弾かれた斬破刀を再び目標物へ向かって力を注ぐ!
人種が違えど力負けはしたくないものなのだから!



「諦めた方がいんじゃね?」

○○ 横からやって来る斬破刀サンダーブレード

青い亜人は妙な忠告と共に、自分自身の横に自分の武器を付き立て、
身体を二つに分けられる危機を回避する。

「誰がやめっかよ!!」

金色の杖に自分の刃がぶつかり、両腕に衝撃が走るも、
その中でもフローリックは相手の言いなりにはなるまいと、次の攻撃手段を手早く頭の中で走らせる。

「やっぱ丸焦げがいっちば――」
「お前のウィッシュ、叶わねぇぜ!」

▲▲ 金色の杖ヴァナプラスタが持ち上がる!

再び飛竜のように殺戮の炎デスブレスを吐き散らすかと思われたが、やはりここは仲間を信用すべきなのだ。



μ μ 上から降ってくる、上半身裸の剣士……



まるで上から踏みつけるかのように、両足の裏から顔面へと迫ってくる。
一体この男ジェイソンは何をしたいのだろうか?

「あぁ?」





■■ 一瞬、今闘ってた相手フローリックの後ろから人影が見えたが……

θ 実はデストラクト目掛けて降りてくる前……

ジェイソンはフローリックを踏み台にし、そのまま垂直に飛び上がる。
そして落下地点をデストラクトに合わせた。それだけである。





£ では、今の状況に戻って £





やや間抜けな様子で上から聞こえる男の陽気な声を確認するデストラクトであるが、
この落下が意味するものに気付くには遅すぎた。

「おぉらよ!」

そしてすぐに……

「う゛えっ!」

▲▲ 踏みつけられたスタンプ……

顔面を踏みつけられ、それでも尚ジェイソンの重量に逆らい、倒れずには済むが、
急所の一つでもある箇所を踏まれれば身体的な損傷は勿論、精神的な部分も大きいであろう。

(ってかオレん事踏み台すんなや……)

突然自分の肩を踏みつけられた事を少しだけ根に持ちながら、フローリックはそのままデストラクトに狙いを付け直す。

飛び降りるジェイソンの横からすぐに攻撃出来るように。

「おらぁ!!」



ξ 真っ直ぐと伸ばされる斬破刀ストレートライン!!

――斬破刀の鋭さを持ってすれば……

――このまま一気に貫けるに違いない……!

――ジェイソンの援護があってこその!

――いや、無理だ



「小細工すんじゃねぇ!!」

咄嗟に目の前からの危機を察知したのだろう、デストラクトは反れた身を強引に持ち上げ、力尽くで刀の軌道を逸らす。
装着していたサングラスが全くずれていないのは一種の特性だろうか?

――何とか直進攻撃を免れるが……

「数いりゃあ勝てっと思ってんじゃ……」

□■ 体勢を取り戻した青い亜人デストラクトは……

炎でも撒き散らして目の前で人間炙りローストでも披露して見せようと考えたが、
自分自身の側面から途轍もない違和感を感じ取り、サングラスの裏から横目で確かめる。
その瞬間に声を止めたのだ。



ψ 赤い武具に身を包んだ少女……

無言で銀色の片手剣を握りながらデストラクト目掛けて迫っている。

「はぁああ!!」

身を低く保ちながら神速で迫るクリスに備えるデストラクトだが、
とある一言も決して忘れはしない。

「メンドくせ……」



▽△ 今も二人相手に闘っていると言うのに……

武器を横に向け、長い柄の中心でその銀色の刃を受け止める。
勢いで身体が後ろへと飛ばされぬよう、右足を引いている。

発射口はどう言う訳かフローリックとジェイソン側へと向けられているが、偶然?

「横が空いてんぜ!」

ηη 側面は防御手段を持っていないノー・ガード ノー・コンボイ……

フローリックはそこを見逃さなかった。
狙える時に狙う。これこそが剣技の最大のポイントである。

――他者への配慮は、自分への危機だ

敵一人なんかに気を取られていては、確実に外部の攻撃を受け、
終了を迎えてしまうだろう。



「うぜぇよ……」



π 杖の先端フレアマズルは、偶然を意味する物では無い

■たまには懐かしい物でも見せてやるか……ひひひ

クリスの剣を受け止めた状態で、杖が持つあの特殊能力を見せ付けるのだ。
先端の先に立っている獲物は、相当不運な事だろう。

▼ ▼ 発動オペレーション ▽ ▽

ファイアー!!!

β 龍の息吹サタンカウンセルを思わせる炎

β 燃えカスブラックダストへと変貌させる掃除道具クリンリネスにも見える!

β 横を護衛するなら、多少規模パワーは薄くてもいいのだ!

β 距離を取ってもらうだけでいいのだから!



「にゃろ!」
「わっと!」

フローリックとジェイソンは迫る炎におののき、素直に距離を取る道を進まされる。

●● さて、邪魔者はいなくなった…… ●●

だが、油断は出来ない。クリスは唯一の女性ではあるが、スピードを備えた存在だ。
油断していればたちまち銀色の刃の餌食になるだろう。

「はっ!!」



――早速迫るクリスの攻撃!

「楽しませてくれや!」

―ガキィン!

素早く横からやってくるクリスの刃シルバーキラー

デストラクトはたかが少女には驚きもせず、自分自身の武器ヴァナプラスタで即座に防御に移る。
金属音を響かせるも、もう既に次の攻撃が迫っている。

「ふっ!!」



――正面突き!

「おっと!」

スピードが売りのクリスとは言え、そう簡単にデストラクトはくたばったりはしない。



★ ▼ ★ 炎揺らめくこの台地 その奥で……/PHANTOM SPACE ★ ▼ ★



―シュン!!

炎が立ち上がっている台地に、何かが風を斬る音を小さく響かせ、とある誰かに向かっていく。

「おらぁ喰ら……」

■クリスへ伸ばされる黄金の杖ヴァナプラスタ

クリスを押し出そうと、上体を前方へと押し出し、同時に右腕も力強く伸ばす。
クリスの赤い腹部の甲殻目掛けて突き出したのだ。

だが、攻撃の終了と共にデストラクトの右腕に何かが通る……。
言葉の中断もそれが関係している……



γ きっと銃弾である

皮膚を斬り、人間と同じ赤い色をした血を滲ませる。
デストラクトの思考に一瞬だけ戸惑いと怒りが沸き立ち、動きも同じく一瞬だけ止まるが、大体の予測は付いている。

「よっしゃぁ! 行くぜぇ!」

蒼鎌蟹装備の少年こと、スキッドだ。やっと、ここで援護に回る事が出来た喜びをその台詞がいかに証明している事か。
構えられたグレネードボウガンもまるで同じ喜びを手にしているようだ。

▼ ボウガンの弱点トライフリングプレイス ▼

直線的に、高速で飛ぶ弾は非常に魅力的ではある。
だが、そんな道に仲間がいて、標的への軌道を塞がれてしまえば出番は激減、最悪、足手纏い。

そして今、この問題点が解消された時なのだ。



■再び狙おう。あの男へ!

「てめぇか……」

デストラクトはすぐに理解する。自分の腕に傷をつけた奴が誰か。



■□ ■□ 攻撃目標-変更アタックポイント・チェンジ ■□ ■□

最早クリス等どうでもいい存在だ。
とは言え、退しりぞけなければ変更とか言っていられない。

武器の持ち方を少しだけ変え、両手で立てるように持ち、そして、振り被るようにしてクリスに攻撃をけしかける。

「お前どけ!」



―ブン!!

まるで飛んでくる球体を打ち飛ばすかのように、クリスを殴り飛ばそうと、デストラクトは力を込める!

「きゃっ!」

可愛らしい悲鳴なんか出しながらも、防御はほぼ完璧である。
クリスの右腕に装着された金色の盾はしっかりと持ち主を保護してくれたが、
反動には逆らえず、引き摺られるように後方へと押されてしまう。



χ さて、狙うべき相手は……

「面白れぇもん見せてやるぜ……」

多少距離を置いているスキッドに目をつけたデストラクトは、
杖の先端を片手で持ちながら、向けるのだ。



★ν 先端が赤く光りだすキュアークリムゾン…… ν★

――元々は金色だったのに

――先端だけが真っ赤に光り出し……

――いよいよ、準備が完了するチャージコンプリート



■◆ ARIEL IMPACT!! ◆■

目の前が一瞬白い光に包まれ……

透き通ったような爆音と共に……

一撃必殺の砲弾ヘビーアクシデントが発射される!!



α 狙いは、スキッドだ!

「うわぁ! なんだこれ!?」

反射的にその場から跳び、避けたから良かったものの、
土の地面はまるで巨人の手ですくい上げられたかのように抉られており、周辺には土の欠片が散乱する。



――まるで、隕石の衝突であるメテオストライク――

「あんにゃろ、まだ色々隠してやがっぜ……」

正直言えば、デストラクトの能力には隠された物が非常に多い。
フローリックは素直に驚くしか無かったが、相手はそんな感想を待ってくれるほど緩い存在では無い。

「驚くんじゃねぇよ。もう一発見せてや――」





―ブォオオン……





δ まるで燃料が振動するかのような、聞き慣れない音……





「なんだ?」

充炎しながらも、背後から感じる騒音にデストラクトは軽く後ろに目をやってその正体を確かる。



――そんなに距離は離れていない――









――いや、寧ろ……――











――近い!――















「どけこの大仏野郎!!」

この声は明らかにあのアイルーエルシオである。
今までどこに行っていたのだろうか?

いや、それより、エルシオが乗っているこれは



――四輪駆動車ジープだ――



管理局が用意したであろうその鉄の塊がどんどん接近してくる。
一般世界ではあまり出回っているとは言えないが、それを使いこなす彼らはなかなかの技術者という事になるだろう。

「小細工しやがって!」

轢き殺されてしまってはどうしようも無い。
即座に攻撃を中断し、デストラクトは横に跳び、駆動車を回避する。



――地面を軽く滑るように停止した後は……――

「お前ら! 早く乗れ!」

エルシオは小さい左前足ひだりうでを自分側へと振りながら、乗車を促す。

「っつうかてめぇ何してたんだよ」

一体今までどこで何をやっていたのか聞こうとしながらも、フローリックは素直に暗い緑色をした駆動車の荷台の部分へと登る。



「んな事ナウはいいだろ?」
「とりあえず早く乗ろっぜ! クリス、急げ!」

ジェイソンは持ち前の身体能力を駆使し、ふちに手をつける事無く跳躍だけで荷台へ飛び乗り、
スキッドはやはり登るように荷台へ上がり、そして一番距離があり、その影響でまだ乗車を完了していないクリスに呼びかける。

「待って! すぐ乗るから!」

ジープが見えた時点で既にクリスはその身軽な足を走らせていたが、まだ到着に至っていた訳では無かった。



――流石はクリスだ。面白いように、クリスとジープの幅が狭くなっていく――



――だが、デストラクトも黙ってはいない!――



「逃げんじゃねぇよ臆病もんがぁ!!!」

黄金の杖ヴァナプラスタを右腕で抱えるように持ち……

ジェット噴射の要領でこの荒野を去ろうとしているエルシオのジープ目掛けて突っ込んでこようとしているデストラクトには一種の恐ろしさを覚える。

「クリス急げ!」
「分かってる!」

スキッドのかす言葉に惑わされず、クリスは走る速度を全く緩めない。





――クリスはもう少しで辿り着く……――





――だが、デストラクトもスピードを緩めない……――





――もう少し……――





――もう少しだ――





―ブオォン!

「駄目だ! もう限界だ!」



◆非情にも、再発し出すジープ

クリスが目の前だと言うのに、乗るのを待たずに発動させたのだ。
口が悪いだけでは無く、一時的とは言え、仲間も無視すると言うのだろうか、エルシオは。

「っておいちょちょ待てよ! まだクリス乗ってねぇだろ!」

スキッドは非情な再発を試みたエルシオに向かって怒鳴り立てるが、エルシオは冷静だった。

「こっちも死んじゃたまんねぇ」

それだけ言うと、エルシオはハンドルに神経を戻す。



「てめぇ……それでも助けてもらったんだろよ」

▼ フローリックも流石にその行動を受け止められなかったに違いない



σ 等と言っている間に…… σ



「クリス! 掴まれ!」

◆◇ スキッドの右腕が伸ばされる ◇◆



徐々に加速し、最終的にはいかなる人間の最高速度マッスルリミットを持ってしても、
絶対に追いつけない速度スピードにまで達しようとしている。



◇◆ クリスも利き腕では無い右腕を伸ばす! ◆◇

左腕なんかを伸ばせば手と手が噛み合わないのだから、正しい判断かもしれないが、今はそのような事、どうでもいい。



Ш 青い甲殻の腕と、赤い甲殻の腕が近寄ったり離れたり……

「もうちょいだ!」

スキッドの声がクリスに僅かな勇気を提供する。

「えいっ!」

その勇気がクリスを後ろから押し出し、伸び切っていた赤い腕が更に伸び、そして……





――◆◆ 手と手が触れ合うジョグレス! ◆◆――

「よっ!!」

スキッドの掛け声がクリスを引っ張り、そのまま荷台へと引っ張り込む!



▼▼ 既に、ジープは最高速度マックススピードにまで達している……

――立ち上がる炎を踏み潰し

――科学を結集させた力で今この荒野を駆け巡る!





◆□ もう、デストラクトでも追いつけない…… □◆

まるで諦めるかのように、いや、諦めて炎の噴射を止め、どんどん遠くへ行ってしまうジープ、
そして今回闘った四人と一匹を黙って眺める。



「けっ……逃げやがって……下らねぇ」

黄金の杖ヴァナプラスタを背中に担ぐように持ち上げ、近くに埋まっている大岩に腰をかける。



――そして、響く、竜の地響きガーゴイルバイブレーション――



「あぁ?」



デストラクトに迫っていたのは、あの、昏睡に陥れられていた、岩に塗れたあの飛竜であった……。

今頃目覚め、あんな状態にさせてきた奴を探そうとしていたに違いない。
だが、とりあえず今はデストラクトでも倒しておこうとか考えていたのだろう。



叶わぬ願いノー・リヒューズ





――【鉱石纏いし体当たりストーンダイナマイト・スターター】――

ぶつかってしまえば相手は一撃で粉砕出来る!

重量があれば当たり負けする必要も、心配も無い!

相手は人間に近い生命体だ!

突進してしまえばどうにかなるものなのだ!



――オマエハ……クタバッテモラウ!



恐ろしい地響きはもうデストラクトの目の前!
















φ ここで取った、デストラクションの行動アクションは…… φ

























「お前うざい……」























δ 非情に淡々とした台詞















































δ そして……

























◆◆ 
爆発音エクスプロージョン!! ◆◆

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