●●● 悪巧み!/ILL−NATURED!! ●●●
―■
―■
―■ いざ……
γ 出力はほぼ
γ その激越な力にかかれば!
γ 身体を軽々とぶっ飛ばす事が出来るのだ!
「あいつ……あんなとこいやがって……」
デストラクトはとある目的を手に入れたようにも見える。
きっと、ハンター
χ サングラスが黒から赤へと変化し……
χ いよいよ、
「おるぁああああああ!!!!」
―ヴォオオオオオ!!!
――右の腕に抱きかかえられるように持たれたロッドから激炎が発射され……
――まるでスライディングでも見せるかのような
折角だから通り道にいる敵対者を跳ね飛ばしてみるか。
足払いで転ばせる要領で行けば当たり負けの心配も無い。
だが、わざわざぶつかる義務は無いのだが……。
「なっ!」
▼正面から迫るのは、高速で向かってくる敵対者……▼
フローリックは真っ直ぐ突進してくるデストラクトに一瞬だけ驚くが、距離は充分にあり、回避に困るものでも無かった。
普段飛竜の突進を避けるのと同じ要領でその炎を背後に噴射した突進を避けてみせる。
▲ すれ違い様に飛ばされた文字は…… ▲
「あぁばよ!!」
まるで、置いて行かれるような、空しい一言だ。
それより……
μ 噴射されている炎が酷暑を残していく……
炎は使用者を押し出すだけでは無く、熱の強さも半端では無い。
周辺が揺らぐ程に非常に高い温度を誇っている。
必要性の無い
そして……
▲ スキッドの目の前も過ぎていく…… ▲
「あいつどこ行く気だよ!」
スキッドには直撃は愚か掠りすらせず、寧ろ初めから狙われていなかったようにも見える。
λ しかし、デストラクトの目的地は一体どこに?
「確か……ここら辺だったな……」
エルシオは、やや離れた戦場でとある何かを捜索している最中だった。
いくら猫人らしい口調が無い乱暴なそれであるとは言え、身体は結局猫人そのものだ。
▽□
その姿は猫人特有の可愛らしさがあるのだが、初めて見た者がこいつの口調を知った時に何を思うのやら……
だが、しかし……
ο 可愛らしい捜索も強引な終局を迎えるのだ ο
「ここのはずだが……!」
―シュッ!!
●□ 突然現れる、誰か
□● エルシオは小さいのだから、足元しか見えないが、良い空気は伝わらない
「てめっ……!」
エルシオは予想外の追撃にその
「エぇルシオぉ〜、お前なんか探しもんでもしてんのか〜い? それとも迷子のニャンコロ演じてんのかぁ?」
―― RED EYES CONFIRMATION ――
ε 夕焼けに照らされた青い上半身
ε 背負うように右手に構えられた金色の杖
ε そして、見下されたようなこの
「別になんだっていいだろ……」
相手は
何をしていようが実質
だが、体格差が圧倒的なものなのだから、どうしても恐怖を抱いてしまう。
「強がんなよネコちゃんよ〜。ちゃんと犬のマッポの……」
文字通り可愛がるような言葉を投げかけるも、
結局デストラクトの右腕に力が徐々に加わっていく。
「世話に……」
υ 口元が恐ろしい程に引き攣り……
「なれやぁああああ!!」
まるで待ち侘びていたかのように大声を張り上げ、金色の杖を力を込めて振り落とす!
―ブゥン!!
――棍棒とも言える質量を持ったロッドが今、エルシオの元へ!
このままエルシオは叩き潰されてしまうのだろうか?
猫人は小柄だからこそ、結局の所弱いのだ。
あの金色の杖はそんな小柄相手でも一切の容赦を認める事はしない。
「はあああああ!!」
◆◆
どれだけ愛らしさを追求しているのか。
馬鹿な男どもが聞いたら癖になるような、その気合の声。
ある意味声だけで生きていけそうなものだが、……おっと、それより、この気合と同時に響くもの、それは……
―ガキィン!!
「良かっ……た、間に合って」
エルシオの目の前に立ちはだかったのは、
エルシオの真上を飛び越え、手早く右腕の盾でロッドを防ぐ。
勇敢な助け舟に感謝を提供したいものだ。
ρ 因みにそのエルシオを守ってくれた少女とは……
□ ◇ ◆ ■ 赤殻蟹装備のクリスだ/NOBLE ANGEL ■ ◆ ◇ □
――その金色の盾と……
――銀色の剣を交差させるようにして……
――歯を食い縛りながらまだ防いでくれている
「お前、なかなかの奴だなぁ」
自慢の
しかし、武器を下ろしてやるような真似は絶対にしない。
「この子に……手ぇ出さないで!」
へらへらしたような態度のデストラクトに対し、クリスは……
●○ 縦に切り抜かれた額当ての下で
○● 水色の瞳を強張らせ
★★
「何が『この子』だお前。お母さんか?」
まるで自分の子供を庇うような言い方が引っかかったのだろうか、
デストラクトは鼻で笑いながら、ふざけ半分な発言を飛ばしてみせる。
「んな訳あるか……」
意外にもそんな発言をしたのは、勿論ではあるが、
○ ○ ● 猫人こと、エルシオだ/WEAK MATERIAL ● ○ ○
護られている立場でありながらも、相変わらず大きな態度が目立つ。
まさか自分の母親がクリスになるなんてあまり想像したい事では無いだろう。
勿論、
「分かってるっつう……どぅわっ!」
当たり前である事を言おうとしたのかもしれないが、
デストラクトは今回初めての一撃を身体に受ける破目になる。
■■□ 腹部に入った、
膝当て部分で相手を狙うかのように脚部を持ち上げたのだ。
少女だからと言って無礼てはいけない。
「行くよ!」
――左膝を引き、次の一撃を考えていたのだが……
「『行くよ』じゃねぇぜえええ!!!!」
誇りと怒りの混じった大声がロッドに再び灼熱を
◇◇◇未だロッドは金色の盾に触れているが……
◇◇◆そんな事は関係無い
◇◆◆
◆◆◆さあ溜まったぞ!
◆ ◆ ◆ これが三つ溜まった時には既に赤い装備の少女は半分地獄を目にする事になっていた……
η
η まるで
ζ そのまま……
――■★ 強引に少女を押し出す! ★■――
「きゃっ!!」
力任せに押し出され、そのまま
素早く現在の体勢を別のものに切り替える。
■■
●▽ 上から下へとなぞられる灼熱の炎!/A STORM OF BUSTLE ○▼
横へと飛ぶように回避したクリスは自分の傍らへと同じく回避していたエルシオを
手早く右腕で持ち上げ、そしてエルシオと共に一旦デストラクトから距離を置く。
「あの世逝きだぁ……おっと!」
―>黄泉の世界への移送宣言は砕かれた
何かがデストラクトの正面から飛んでくるのを察知し、炎を途切れさせ、そして淡々と吐いていた宣言も中断し、
上半身を横へと大きく逸らし、
「お前こそ逝けよ!」
やや遠方から走り寄ってきたのはスキッドである。
◆◆ 一発の通常弾が
「スキッド君ありがと!」
クリスは手早く左腕をあげて蒼鎌蟹装備の少年に礼を渡す。
右腕はエルシオで塞がっているからこその腕の選択だ。
▼▼
「ガキのお遊びかぁい?」
徐々に距離を取りつつあるクリスの姿を堂々と、平然と眺めているデストラクトであったが、
ψ ヴァナプラスタを怪しげに撫で始める……
だが、すぐに
笑えない状況を見事なまでに作り上げる。
――■◆
―>
―>風力はデストラクト自身の下にある砂も力強く吹き飛ばすほど……
―>その力は前方、即ちスキッド達も一切の例外は存在しない
「おぉらよっ!!」
―ドスゥ!!
●○ その圧力は二人を軽々と襲い…… ▼▽
「うわぁ!!」
「きゃあ!!」
■被害者は宙に舞うこの状態で何を思うのだろうか……
直接目には見えていない何かに力強く吹き飛ばされ、
自由の効かない空中の世界へ放り出される。
一瞬だけ時間の流れが遅く感じられるが、
それよりクリスが抱いていた
「あ! エルシオさん!」
α
砂と共に飛ばされている
空中で何とか手を伸ばし、
なかなか届いてくれはしない。
「くそ……」
エルシオも身体の小ささをまるで恨むかのように、
やや素直に小さな
э WARNING…… ATTENTION…… Э
δ The worst situation is from this.
σ 地獄はこれから見せてくれるのだ……
δ The complaint is not used here.
σ 泣いても、喚いても、見逃してくれない。
δ acute pain of the hell will turn into the prison.
σ 最低最悪、そして最凶の景色が今、産み落とされる……
и 周辺世界を軽々と変貌させる破滅の爆撃/BOMBSHELL CATASTROPHE И
「そろそろ始めっかぁ……」
▽○ ヴァナプラスタを逆さに持ち…… ●▼
―>地面に向かって……
ЮЮ DESPAIR SCENE
GREATEST MODE‐Σ
―ドカァン!!
―バカァン!!
まるで地面を叩き割られてしまう程の音量が響き渡る。
爆音が呼び出した
λ
λ
λ
「きゃっ!! エルシオさぁん!!」
もう少しで手が届きそうだったが、炎がそれを認めなかった。
残酷にも、届けるべき対象はすぐに炎によって遮断されてしまう。
「俺は……だいじょぶだ!!」
恐らくクリスの視界に炎が現れた事によってエルシオは炎で焼かれてしまったと
勘違いされた事だろう。
自分を心配してくれているクリスに向かってエルシオは精一杯大声で対応して見せる。
▲ ● ● 残った二人は/DETACHED PLACE ○ ○ △
「くっそ! 何しやがったんだあんにゃろ!!」
僅かに距離を取っていたフローリック達であるが、
炎に乗せられた熱風がここにまで迫り、そして炎そのものも遅れて迫り、デストラクトの恐ろしさを垣間見る。
「フレイムフィールドにチェンジさせやがって……」
ジェイソンも裸の上半身に直接伝わる熱気を感じながら
炎に包まれた台地での恐ろしさ、そして楽しさをこれから考え始めようとしている。
両手に構えたインセクトオーダーをそれぞれ空中で一回転させながら。
△ ○ ○ 爆心地で/THE CENTER OF THE EXPLOSION ● ● ▲
「危なかった〜……、でもどうしよ……」
爆音こそは消えたものの、炎は消えてはくれない。
地面からまるで植物のように現れた炎は今もバチバチと言う弾けた音を小さく響かせながら、
風に揺らされ、
θ だが、炎の中からゆっくりと現れるのは……
「どうだ? なかなか豪華な景色だろ? 今のうちに心に刻んどけよ?」
そう、
■ スキッドとクリスの目から見れば…… ■
まるで炎の中から誕生したかのように、最初は黒く映され、そして徐々に本来の青い皮膚が映し出される。
本来の色が映されたのは、炎を完全に潜り抜けてきた事を意味する。
「火ってのはなあ、人間っつう
右手に持った
я 炎は確かに人間世界では抜きん出た
周囲を照らし、暖め、焼き、そして、物体の動力源にもなる。
これだけ素晴らしい
いや、考えさせてくれる奴が今ここにいる……
「世界の歴史変えた存在に殺されるってある意味名誉な事だと思わねぇか?
薄暗くなりつつある空の下で、まるで新しい太陽光を再現したかのような揺らめく炎がデストラクトの特徴的な、
珠をいくつも埋め込んだような金色の髪。それがより一層協調されて照らされる。
まるで仏教の成れの果てを思わせる姿で炎が提供してくれる最期を説明してくれているが……
――確実に面白くないし、喜ばしいものでも無い……――
「それと、
炎が身体に触れても尚焼かれる事の無い青い身体をまるで自慢するかのように立ち尽くし、
そして背中に乗せていたロッドの膨れ上がった先端部をゆっくりと地面に下ろし、妙な雑学を教え込む。
ν 炎が光となって
そして足元から燃え上がる炎は、まるでデストラクトを
触れるデストラクトを決して焼く事はせず、とある役割を負い始める……
■■ ●●
これこそ炎達の本当の快感と言うものだ。
薄暗い空間の中では一種の芸術品になったようにも見えてしまうのが不思議だ。
「筋肉が凝縮して死に様がクールに決まんだよ。だったら、今ここで……」
鍛え上げられた上半身、そして子供らしさでは無く、やや荒れた若者を表現するかのような黄土色をしたクオーターパンツ。
そして杖を持ったその姿は、まるで……
τ 荒くれた仏のようだ! τ
「実験してやっか?」
炎の中で、不気味に笑い始める!
これぞまさに……
まさに……
Ы 地獄で仏に相応しい!
П This is what I have least expected in time of need.
本来は脅威が迫った際に差し伸べられる救いの手であるが、
ここでの意味は、その場の見た目通りである。
★ ■ ◆◆ こいつこそが既に地獄の仏だ!/EMPEROR IN OUTRAGE ◇◇ □ ☆
*** ***
「良かったわ、とりあえずミレイさんは大丈夫」
ドンドルマの国立病院のとある一室の外で、中年のナースと、紫色の髪を持った少年が話している。
「良かった〜……ちょっと様子見させてくれませんか?」
その少年は勿論アビスであるが、アビスはそわそわとしながら、ドアの取っ手に手を伸ばそうとしている。
「それは駄目よ。気持ちは分かるけど、やっと今落ち着いたとこだし。やっぱり駄目よ」
女性はアビスのその外面上だけを見ればあまり気持ちの篭っていないような願いを拒否してしまう。
気持ちは理解しているようではあるが、今のミレイの状態を考えれば下手に病室内へ入って騒がしくしては良くない事態に進むと女性は考えたのだろう。
「それは……分かりますけど、あの傷ヤバかったですよね……」
――ミレイの腹部にあったあの深い切傷……――
あの時の機関車の中で肥満の男によってつけられた腹部への引っ掻き傷が開き、ミレイを苦しめたのだ。勿論ナースの手によって何とか痛みを引かせる事に成功したが、やはりそれは安心しきれるかと言うとそうでも無かったのだ。
「でも大丈夫よ。ちゃんと手当てはしたし、今はよく眠ってる所。あ、それと、貴方いくらミレイさんの事心配するってもあそこまでしてたら……」
女性の言う通り、ミレイはしっかりとした診察によって激痛から解放され、そしてその反動なのか、今は深い眠りに落ちているのである。
だが、その女性の最後の方の言葉から、アビスがやや淫らな、勿論控え目な性格のアビスなのだから度の越したものとは考えられないが、妙な行為を想像させられる。
「え、いや、あれはちょっと……んと、緊急だったから……ですよ!?」
アビスは僅かに顔を赤らめながら、両手をバタバタを目の前で降り始める。
――実はあの時……――
苦しむミレイの傍らで、アビスはと言うと、必死で右腕を撫で続けていたのだ……。
恐らく痛みを和らげてあげると言う好意なのかもしれないが、アビスは男、そしてミレイは女。
それを考えると、ある意味で妙なものが感じられる……。
「でもいくら緊急ったって、あれじゃあちょっとだけセクハラよ? ミレイさんは気付いてたのかしら?」
女性の言っている事は一応正しいものである。女の子の身体を必要以上に触っては嫌われる手前にまで進みかねない。だが、問題はミレイがその行為に気付いていたのか、それとも気付いていないのか、そこである。
「え、あ、じゃな、じゃなくて……ちょっ、あ、いや、んと、だいじょぶですよ! 多分……」
ひょっとしたらミレイに何か思われたのかもしれないと焦りを覚えたアビスは一体何が言いたいのか分からないような短い単語を無意識に連発させながらきょろきょろし出すが、あれは自分の好意であると言い聞かせて見せるも、結局自信が見えないで終わる。
「何が大丈夫なのよ……はぁ……。それと、もう面会時間はとっくに過ぎてるから、今日はもう帰りなさい。明日ならまた会わせてあげるから」
どうやら緊急の診察の間に面会の時間は過ぎ去っていたらしく、アビスに伝えながら出口があるであろう場所に向かって指を差す。ある意味でそこにはアビスのあの別の視点から見れば妙にもなる好意に対する配慮も見える。
「あ、そうだったんですか……? 分かりました、じゃ、今日は」
それを聞いたアビスはやや気まずそうに、軽く笑みを含みながら対応し、そして途切れの悪い言葉と共に軽く
*** ***
時間帯は既に夜と言う所にまで来ていても尚、ドンドルマの街は活気に溢れており、街道は常に人々が歩き、或いは馬車に乗っている。それらがすれ違い、そして常にその空間では人と人が変わり続けている。
とは言え、殆どの露天や小売店は閉店していっているものの、夜には夜にしか無い楽しみもあるのだ。酒場等の大人が楽しむような施設はこれから騒がしくなるに違いない。
そしてアビスはと言うと、そんな未だに消え失せる事の知らない喧騒の中で、ゆっくりと自宅へ向かって歩いていたが。
「ん?」
アビスは突然空から何かが流れるような音が聞こえ、夜空を見上げる。同時にその足も止まる。
――小さな、彗星のような球体……――
ground zero...