鎧壁竜装備のヘビィボウガン使いの二人は、毒煙鳥装備の男に誤射し、そして爆風によって
近くにいた女性ハンターに悲鳴を上げさせたと言うのに、バイオレットを始末したかどうかの事だけを考える。
ヘルムの下では期待に満ちた笑顔を浮かべ、その間に徐々に煙が晴れていく。
「
ρτ
油断した男も男であった。単独で大勢のハンターを相手にしている人間――のような奴――が隙を相手に見せるとは思えない。
寧ろ、煙で姿が見えなくなってしまったその時こそ本当の勝負時と考える必要があっただろう。
――■ 煙の中からの
α 縦に
β
κ
――□ 胸部を串刺し!!/WINK TEAR!! □――
「ぐぅえ……!!」
岩のような甲殻で作られた武具の脆いであろう首元、接合部分を貫通され、そのまま
ボウガンを無造作に落としながらそのまま崩れ落ちる。
「ゴルム! てんめぇ……!!」
恐らくは絶命した男の名前だろう。ゴルムを殺された男は再び射撃を試みようとするが、
バイオレットはまるで涼しい顔をしている。
「言ったろ? お前ら全員死刑だ……ってなぁあ!!!」
――何者かの
足元に倒れている毒煙鳥装備の男を放置し、ハンマーの<
――因みに、
ι 胸部に
「おぉらよ!!」
骨組装備のハンター目掛けて飛びかかり、顔面に向けて右拳を飛ばす。
「ぐおっ!!」
突然の行為だった為か、攻撃を仕掛ける間も与えられず、素直にやや細身な身体から繰り出される
正反対の威力を持つ拳によって、鼻血を垂らしながら壁へと
――別にこの骨組装備の男が殺意を見せていた訳では無かったと言うのに……――
「お前のハンマーなかなかいいもんじゃねぇか、借りっぜ」
顔に付着したままの返り血を気にする事無く、男の目の前に転がる
最も先端に位置する部分を片手で持ち、そして頭の部分を引き
▼ 目線の先に/RESERVATION ▲
そう言えば、遠距離から射殺しようと企んでいた
遠距離には遠距離で仕返ししてやるのも面白い……。
よし、こいつの出番だぜ……
右手で柄を掴んだまま、左の脚部に装着してある
「の前に仕返しのプレゼントしとっかぁ」
β 先程徹甲榴弾、或いは拡散弾を撃ってきた奴のどちらかだ…… β
―バスッ!!
――戸惑い無く弾丸はヘビィボウガン使いを黙らせる――
きっと咄嗟に狙われた鎧壁竜装備の男は誤って味方であるはずのゲリョス装備の男に
撃ってしまったが為に照準を定めるのに必死だったのかもしれないが、
決断力が遅ければ、地面に身を崩す事になってしまうのだ。
「にしてもまだまだ多い――」
敵対している相手が多い事を呟いたバイオレットに襲い掛かるのは、
蒼鎌蟹装備の男であり、両手には……
γ
「覚悟!!」
蒼鎌蟹のヘルムで表情は見えないが、僅かに歳の入った男の短い気合の声と共に
双剣が勢い良くバイオレットの目の前で左右から風を斬る。
「へっ!!」
鼻で非常に短く笑いながらバイオレットは後方へ跳び下がる。
掴んでいたハンマーの柄を手放したのは言うまでも無い。
「終わりだ!!」
下がるバイオレットを逃がすまいと、ギザミ装備の双剣ハンターは現在武器を持っていない
バイオレット目掛けて更に斬撃を
――迫る縦振り!!――
―ψ しかし…… ψ―
「終わりはてめぇだっバーカ!!」
バイオレットは簡単には終わらない亜人なのである。
――近くにあった椅子の脚を左手で持ち……
σ 座る部分を相手の顔面目掛けて殴りつける!
―ドスッ!!
「うっ!」
蒼鎌蟹装備の双剣使いは短い悲鳴を飛ばしながら、椅子の攻撃で軽くよろめいてしまう。
同時に双影剣による華麗なる斬撃も
「さってと……」
υ どんな方法で始末してしまおうか、考えている僅かな時間に…… υ
「もうこれ以上やめて!!」
「あぁ?」
やや可愛らしい声が背後から響き、反射的にバイオレットの視線がそちらへと移る。
目の前には……
η 真上から振り落とされる
「おっと!」
赤殻蟹装備のやや緑を帯びた黄色の甲殻が特徴的な女性――声色から見ると少女か?――の一撃をバイオレットは隣にあった
テーブルの上に背中から横に転がる形で回避する。
―ドスゥン!!
――超重量の狩猟笛に直撃されていれば、いくら彼でも危なかっただろう……――
「無礼た真似しやがって……」
テーブルの上を転がり、そのまま端にまで移動して降りたバイオレットは瞬間的に反撃方法を思いついたのか、
突然テーブルの下へ潜り込み、そして、全身の力を下から上へ、まるで背中を使って持ち上げるかのように注ぎ込む。
狙いは八つ裂きにしようとしてきた……
λ 蒼鎌蟹装備の男!! λ
「おぉるぁあああ!!」
面積の広さに比例した重量を誇るであろう木製のテーブルもバイオレットにかかれば持ち上がってしまうものなのである。
標的に定めた蒼鎌蟹装備の男に襲い掛かる重量級のテーブルはそのまま男を下敷きにしてしまう。
「わぁあ!!」
―ドォオン……
重たい甲殻と重たい木材がぶつかり合う鈍い音が響く中で、バイオレットは先程放置したあのハンマー、<
持ち上げ、ひっくり返ったテーブルの中心目掛けて叩き落す。
「ミンチんなっちまえよぉ!!」
テーブルが下敷きになっている男がもがいている為か、多少揺れているが、
そんな事を御構い無しにバイオレットの一撃がそこへ加えられる。
――▲■ 超重圧殺!!/COMMINUTED FRACTURE ■▲――
―ドスゥン!!
―ピシィッ!!
テーブルの叩き付けられた部分に大きな
一撃が決定打となったのだろう。
――テーブルの端から血が流れているのが見えるが……――
「んじゃ次は誰にしよっか――!」
テーブルの端から、床に沿って流れる血液を眺めているバイオレットは背後からの殺気を感じ、
その後の決断がここで固められた。
「はぁあああ!!」
――赤殻蟹防具の少女による、
「まぁたおめぇかあ」
バイオレットは面倒そうに持ったままの
そして
―バチィン!!
―▲■ ハンマーと狩猟笛のぶつかり合い ▼■―
勝者となったのはハンマー側だった。ハンマーの方が質量が上だったのか、バイオレットの腕力が強かったのか、狩猟笛側は
情けなく床へと落とされてしまう。反動が強かったが為に思わず狩猟笛は持ち主の手から離れてしまう。
残ったのは、手持ち
動揺し、怖がる少女より多少身長の高いバイオレットは右脚の
床に落とされた狩猟笛に右足を乗せ、そして少女の顔に自分の顔を近づける。
「雑魚が手荒な事したって、結局は雑魚なんだよ……」
様々な者の返り血で赤く染まり始めたバイオレットは
そして何故か
「なぁ!!」
―バァン!!
ξξ 響く銃声……
εε バイオレットの狙った先……
οο そこは……
――甲殻で保護されていない露出した太腿部分……――
「きゃあああああ!!」
左脚に深く
甲高い悲鳴を飛ばしながら赤殻蟹装備の少女はうつ伏せに倒れ、腰と股関節、そして
撃たれた箇所を歯を食い縛って両手で押さえる。押さえても流れる血は止まる事を知らない。
その脚からは僅かに筋肉組織まで露出されてしまっている。
甲殻で護られてさえいればこんな事にはならなかったかもしれない。悲劇だ。
「後で遊んでやるぜ……。さぁて、今度はお前だなぁ!? 構えなんかしやがってよぉ!!」
次にバイオレットが眼を付けたのは、
青怪鳥装備の少女だった。まさか、友人関係でも持っていたのだろうか。
「
撃たれた友人を助けたいのは気持ちだけで、身体は言う事を聞かない、と言った所だろうか。
右手に蒼の拳銃を持った黄土色の髪をした凶暴な男がどんどん迫ってくる。
悪足掻きに振ったサンダーベインもただバイオレットの目の前を通り過ぎるだけで、直接
「じゃあ武器捨てろ」
―バァン!
――淡々とした台詞、そして、右腕の付け根に入った銃弾……――
「うっ!!」
機動力の確保の為にどうしても防御が甘くなっている関節部分を正確に打ち抜かれ、力を失った右腕からサンダーベインが落とされる。
オマケに撃たれた箇所からは容赦無く血も流れ始める。
(誰か……助けて……)
痛みで声を直接発する事が出来ず、茶色い瞳を涙で濡らしながらどんどん近寄ってくる男から
何とか後退り、逃げようとするが……
λ 一体何を思うのか……
――仲間? 家族? 富? 名声? これからの目的? 野望? 夢?
愛らしい茶色い瞳を強く閉じ、涙を
(助けてよ……クリスさん……)
何故かあの少女の名前が出されるが……
「んじゃ、早速ご馳走してやっからよぉ……」
――妙な回りくどい言葉を発しながら左手でサンダーベインを拾い上げ……――
「楽しみんしてくれやぁあ!!」
――痛がる
――θ サンダーベインを突き刺した!!/THUNDER BLADE!! θ――
「う゛お゛あ゛ぇ゛ぁあ゛あ!!」
とても少女のものとは思えないような野太く汚い激痛に苦しむ声と共に、口からは大量の血液を吐き出し、
胴体を保護する青いメイルが真っ赤に染まっていく。
涙で濡れた瞳に力が入り、そして刺された腹部からも
「さあてと……」
これからの予定を思わせる言葉を呟きながら、ほぼ瀕死に等しい怪鳥亜種装備の少女をそのまま
サンダーベインごと持ち上げ、そして右手に握られたままの蒼の拳銃<ロウカレスHc-900>を死亡寸前の少女の頭部へと向ける。
内臓を突き破られ、最早少女らしい表情を一切かなぐり捨てた苦痛に塗れた表情で苦しみ続ける少女は、
これから自分に与えられる運命もロクに考える暇も与えられず、最期の制裁が下される。
―> 頭部へ向けて……
―> 放たれた銃弾……
―> 今度、本当に絶命し……
―> 返り血が一気にバイオレットへ流れ落ちる……
「
完全に息絶えた怪鳥装備の少女をまるでただの物体であるかのように適当な場所――壁の辺り――へ
投げ落とし、そして空いた左手に紅の拳銃<メイビアG-365>を構え、何かを訴える。
■◆ 一体何を? ■◆
「そう言やあギルドナイトとか言う連中どうしたよ? こいつら弱過ぎで話んなんねぇぜぇ? なあギルドマスターよぉ?」
バイオレットは更なる殺戮を求めているのだろうか、カウンターの裏で震えているであろう
ギルドマスターに向かって、両手の拳銃を下に向けたまま、平然と訊ねる。
――だが、ふと眼に入ったハンマー使いの女性ハンター……――
「っとそん前に……えぇもん見っけぇええ!!」
興味を見せた大声を発しながら、バイオレットは横でハンマーを両手で持ちながら
震えている大きな茶色いポニーテールの少女へ向かって跳躍し、一気に距離を縮める。
同時に左手で漆黒のロングコートの裏から大型のナイフを取り出す。
左手に握られていた紅の拳銃<メイビアG-365>はしまわれている。
「や……やめて……下さい!! 私なんか……狙っても……!!」
革製装備の少女は赤い瞳を震わせ、口調も震わせながら
バイオレットからゆっくりと後ずさるが、逆にバイオレットの欲求をそそってしまう。
「お前よく見たら、結構可愛いっぽいじゃねぇかぁ」
右手に持った蒼の拳銃<ロウカレスHc-900>をゆっくりとしまいながら、少女の顔をまじまじと見つめる。
少女に映るのは、灰色の色をした狡猾な容姿と、そこに埋め込まれた緑色の眼である。
「い……いや……!! いやぁ!!」
――少女はサイクロプスハンマーを振り落とそうとするが……――
―ドスゥン!!
バイオレットは真上からの軌道を素早く読み、易々と右にずれて回避したのである。
「当たんねぇよっバーカ!!」
それだけ言い飛ばしながら、右手で少女の頭を掴み……
――左のテーブルへ顔面を強打させる!!
―ドン!!
「うっ!!」
顔面からテーブルへ落とされ、少女は小さい悲鳴をあげ、同時にハンマーの柄から両手が離される。
バイオレットは左手に持ったナイフを軽く振りながら、恐るべき言葉を口に出す。
「よし、お前は可愛いとこあっから、褒美に剥ぎ取りならぬ、切り取りでも見せてやっぜ……。感謝しろよ!!」
εε とうとうナイフが落とされた…… εε
■□■□■ 血と屍に塗れた酒場内部で/LIFEBLOOD AND CARCASS ■□■□■
一体
飛竜を仕留める事を
だが、異常過ぎる光景である。
ほぼ生身に近い
そして自身は一切攻撃を受けず、逆に更にこの空間が荒れる事を望む。
遂にはハンターを潰す役割を負う者として使命を授かった集団を相手にしようとしているのだ。
「頼む……もうこれ以上はハンターの者達を苦しめるのは止≪や≫めてもらえないか? いくら何でもここまでする理由は無いじゃろう……」
ギルドマスターはその一般的な人間の半分ほどしか無い小柄な体格を
カウンターの影からゆっくりと見せながら、殺しのプロとしても差支えない灰色の皮膚を持った男相手に懇願する。
「おっと、訂正見〜っけ。おれは
いかに自分が余裕な立場を保っているのかを広めるかのように、バイオレットは必要性の感じられない訂正をする。
左手の紅の拳銃を振り回し、運良く生き残ったハンター達に威嚇行為までもしてみせる。
そして、右手には先程首を斬り落としたハンマー使いのハンター装備の少女の頭から生える茶色いポニーテールが握られている。
それを振り回し、回転させ続けながら口をも動かしているのである。
遠心力に従って首から血液が周囲に飛び散る。
「んで話は戻すが、ギルドナイトの連中どうしたよ? いねぇのか? それとも、こいつらハンターどもがあのお偉い、強い、そんなギルドナイトの代わりんなるとでも考えてたのか? そう言う間違った判断はこれから先長生き出来ねぇぜ? 今の状況が答えだぜ?」
バイオレットはどうしても戦闘の渇きを癒せないのだろう。今のハンター達だけでは
まるで暇潰しにもならず、飛竜以外の者とも戦えるスペシャリストとでなければまず癒せないのか。
「か、彼らなら今は表に出て未確認生物達を相手に戦っとるわい……。今の光景は……なんかの間違いじゃろう……」
普段はハンター達の中で頂点に立つ存在として崇められているギルドマスターも、
今となってはただの臆病者老人である。
無残にも
夢である事を願うしか無かったが、目の前の現実は現実であり、書き換える事は出来ないのだ。
現実の残酷さがそこに縫い付けられている。
「現実逃避したって無駄だぜ? やだって理由で目ぇ逸らすなんざあガキとなんら代わりねぇんだぜ?」
等とバイオレットがどこか説教のようなものを浴びせている最中に……
――入り口から逃げようとしていた一人の男性ハンター……――
「ってお前は臆病もんかぁあ!!」
逃げる気配を背後から感じ取ったバイオレットは、右手に持ったポニーテールの少女の頭部を投げ捨て、
そして右手にも拳銃を構えた後、そのまま両手の拳銃を吠えさせる。
――即座に背後へ振り向き……
――首筋部分を正確に狙い撃つ……
―バァン!!
―バァン!!
「うあぁあああ!!」
黄甲蜂装備の男性ハンターは彼にとっては予想外の銃弾による攻撃を受け、
悲鳴を飛ばしながら入り口の目の前でうつ伏せに倒れこみ、そのまま血を流しながら絶命する。
「おれん事敵に回した以上は
再び絶望的な空気が流れる中で、バイオレットは発砲の為に持ち上げていた拳銃二丁を再び
下に向かってブラブラと揺らしながら楽しげにここまで発展した経緯を語る。
「おれは話し合いだけで解決したかったってのによ〜」
ある意味では基準は彼に
ここの人間を生かすも殺すも彼の気分次第であり、そこに触れた場合は容赦と言う世界から隔離される。
バイオレットの精神は残虐そのものだ。
――だが、そんな状況でも勇敢に銃口を向ける者が……――
「これでもおれは正当防衛なんだぜ? 仕事だからここ来てっだけだし、それに勤務中に殺されでもしたらたまったもんじゃねえからこうやっておれはやりたくもねぇ防衛行為しちまって――」
―バスッ!!
「!!」
――飛び上がり、そのままカウンターの上に飛び乗る――
「ダ〜メだこりゃ。やっぱ死刑再開だぜ。まっ今
バイオレットはどこの誰が自分に発砲をしてきたのか、把握していたらしく、
その証拠に
「死ね」
―ドスゥ!!
ρπ 短いバイオレットの宣告と πρ
πρ メイビアG-365が発する
頭部から血を流して倒れる戦士系装備の女性ハンターを気にする余裕も与えられず、
バイオレットに向かって罵声を飛ばす
「貴様ぁいい加減やめたらどうだぁああ!!」
そんな罵声を飛ばしながら襲い掛かってきたのは、派手な外見を添えた
まだ距離は離れているが、
「ベテランさんの登場かあ? でもなぁ……」
装備品は実際の所、非常に珍しく、そして調達も極めて困難な素材で作られたものだ。
しかし、それでバイオレットは怯む事は無く、素早く拳銃を両足の
右手を漆黒のコートの裏に忍ばせながらハンター目掛けて飛び上がる。
――空中で小型棍棒を取り出し……――
「ザコはザコらしくしてろやぁああああ!!!!!!」
ハンター側の
ハンターは顔面に棍棒の一撃を受け、その反動で……
δ 背後のテーブルへと身体を落とされる!!/HEAD CRUSH!! δ
―ゴィン!!
―バキィン!!
鉄がぶつかるような音と、テーブルが中央から大きく割れる音が瞬間的に、そして順番に響く。
被害者側は衝撃によって剣を手放しながらテーブルの中へと埋もれ、動かなくなる。
そしてテーブルの横に無造作に転がった
少し前に約束を勝手に交わした
「おらよっと!」
左手に
そしてそう距離の離れていない目的地へと着地する。
目の前に映る……
――左脚を押さえて倒れているザザミU装備の少女……――
「約束通り、戻ってきてやったぜ……」
バイオレットは左手に持つ
右手に<ロウカレスHc-900>を構えながら未だに脚を痛がる少女を見下ろした。
倒れている少女の目線から映るこの男は……
υυ まるで、巨人でも立っているかのように、巨大に見える…… υυ
「い……いや……来ない……で……」
一部分だけをしっかり護ってくれなかった武具に対する恨みと、無慈悲に武器を持ち出してくるバイオレットに対する恐怖により、
少女の表情が歪んでいく。
――まず脚の激痛により声が詰まり……――
――絶望感が涙腺を緩め……――
――視界が歪む……――
ηη 誰かが助けに来てはくれないのだろうか……? 来てくれれば、助かるかもしれないのに……
「おいおい泣いちゃってっぜ〜おいおい。おれも実質飛竜と
思わず吹き出して笑ってしまいそうになる感情を堪えながらバイオレットは涙を面白そうに眺め、
左手を天井に向かって引き……
「とりあえず、死ねぇ!!!!」
■□■
:
(もう駄目……!! 誰か……!!)
――変えられない現実を前に、少女は目を強く閉じる……――
――誰でもいい…… 助けてくれれば何でもするから……――
φ 次の瞬間/THE END φ
―ブサッ……
「う゛お゛ぇ゛あ゛ぁあ゛あ!!」
「ふっ……、
バイオレットの左手に持たれた
残酷なまでに、正確に深く突き刺したのだ。
少女のものとは思えない苦痛と汚らしさの混ざった悲鳴がそれを、残酷なまでに、正確に表現している。
そして、口からは一気に鮮血が吐き出される。
両目も濁りを見せ付けながら大きく開かれる。
―パァン!!
――そして、最期の銃弾が瀕死の少女の息の根を止める……――
右手の拳銃<ロウカレスHc-900>が最後に吠えたのだ……
「ってかお前はまだ生きてんだろ? さっさと天国か地獄のどっちか送ってやっぜ!」
バイオレットは対象が誰なのか、そして、その確信しても良いのかどうか分からない台詞を誇らしげに飛ばしながら
破壊されたテーブルに埋もれた状態の金の深緑竜装備のハンターの前に立つ。
――左手にも拳銃<メイビアG-365>を持ち……――
「あ〜ばよ!」
そして、両手の拳銃から銃弾が連続して放たれる。
悲鳴をあげる余裕等、その攻撃の前には存在しなかった。
だからこそ、ほぼ無言で確実な死を受け取った。
「ヘ……ヘニング!!」
突然響いたのは、少女とは言えないが、女性の強さと重さの混じったような声が響き、
それがバイオレットに過剰反応をさせる原因とさせる。
「あぁ? いきなしどうし……へっ、ありゃ
叫んだ女性と、今殺した金の深緑竜装備の男――名前はヘニングだったらしい――とどんな関係かは不明だが、
それより、その女性の装備に眼を見張ったのである。
―> 頭部を大きく覆い尽くす白い毛
―> 額部分から伸びた一本の蒼い角
―>
―> まるで水着を思わせるかのように、露出した肩口、腹部、太腿
―> 武具として認識するには多少無理の見えるこの装備は通称
――ζζ 一角獣装備 ζζ――
「はは〜んお前さてはあいつの彼女かぁ? どっちにしてもお前はここで死ぬんだよ」
左手の紅の拳銃<メイビアG-365>だけを
ずらりと並べられているテーブルの上を伝いながら右手に持つ蒼の拳銃<ロウカレスHc-900>の
一角獣装備の女性に向ける。
「死ねぇ!!」
―パァン!
―ピキィン!
「……」
だが、バイオレットはここで
―― 一角獣装備の女性はボウガンで弾を見事に
咄嗟に一角獣装備の女性は愛用の
自分自身へ銃弾が侵食するのを防いだのだ。
女性の紫色の強い瞳が何かバイオレットをどん底に陥れるような雰囲気を物語る。
「なかなかやっじゃねぇ――」
「これでも受けな!!」
それでも向かってくるバイオレットを相手に今度はレックスタンクを両手で左右から挟むように持ち上げ、
それを向かってくる
――恐らく先程の銃弾を受けて
投げつけられた方は身を
そして一角獣装備の女性の目の前へと降り立つ。
――そこに飛んできたのは……――
「あんま手荒な事して……!!」
レックスタンクなんかをぶつけてきた一角獣装備の女性に一つ苦痛を伴う制裁を与えてやろうと
ダラダラとした小言を呟いていると……
――顔目掛けて横蹴りが飛んでくる!!――
「なっ!!」
しかし、バイオレットも馬鹿では無い。<メイビアG-365>を持ったまま、左腕で顔の横を保護し、
女性にしてはなかなか強烈な威力ではあったが、受け止める事は彼にとっては容易な話だ。
「甘いよ!!」
再び飛んできた攻撃は……
――握られた左手!!――
「!!」
女性の
更なる追撃をこの女性は仕掛ける。
――漆黒のコートに覆われた背中目掛けて左足による横蹴りを飛ばす!!――
「はぁああ!!」
これまた鋭い一撃だった事だろう。
「いっ!!」
背中を攻撃されたバイオレットは彼にしては珍しく、勢いによってそのままテーブルと、椅子の中に
飛ばされてしまい、木と木がぶつかりあう音を響かせながら埋もれていく。
――そしてその僅かな
「これ以上好き放題暴れるんなら、こっちもまともにやらせてもらうよ!!」
背中を見せているバイオレットに向かって一角獣装備の女性はいつでも格闘へと入れるよう、
構えながら強さに溢れたメッセージを付き放つ。
(はぁ? なんだこいつ……)
木造のテーブルと椅子の中に飛ばされながらも、その一角獣装備の女性が放ったメッセージを受け取っていたようだ。
バイオレットは武器も持たない奴が何をしでかすのかと、疑問を抱く。