――△【凶暴なる波動砲ヘルタッチ】△――

四本の脚で茶色い胴体を持ち運び、そして砲台状の頭部から、エネルギー砲を発射し、
対象物を暴力的に破壊する。

オレンジ色の髪を持った初期装備の少女は、不幸にもその生物に出くわしてしまい、
まさに今、被害者になる所であったのだ。



しかし、響いたトーンの高い少女の声と同時に、初期装備の少女は命を救われる事になったのだ。



「デイトナ!!」

デイトナの横から暗い赤のジャケットを纏った少女が飛び込み、そしてデイトナを空中で抱きながら
そのまま地面へと身体を落とす。



―ズゴォオン!!

生物の波動砲の着弾地点から去ったその後に、轟音が鳴り響く。
硬い地面を叩きつける、そんな音である。



そして地面に身体を倒した状態の二人のすぐ後ろで響くものは、希望の音であった。

「危ねぇだろこの蜘蛛くも怪獣めがぁ!!」

紫色のスーツを纏った男が両手に持った黒い拳銃を吠えさせる。
勇敢にもその生物の真正面に立ち、罵声を突き飛ばしながら攻撃したのだ。



―パァン!!

―パァン!!



この単発の音が何度も響き、銃弾を受けた生物は頭部から鮮血を流しながら
後方へと数歩重たい音を立てて後退りながらよろめくが、最終的には動かなくなり、そして地面へと崩れ落ちる。



μ この銃声サウンドこそが、希望の音ホープジュエルだったのだ!! μ



「あ〜危なかった……」

赤いジャケットを羽織った緑色の髪をした少女は背後に走っていた危機が去った事に対して一息吐きながら
ゆっくりと上半身を持ち上げ、そしてすぐ目の前でうつ伏せになっている初期装備のオレンジ色の髪を持った少女に話しかける。

「あ、それとデイトナ、大丈夫? デイトナ?」

立ち膝の状態で、すぐ目の前の初期装備の少女を揺すりながら、緑色の髪をした少女は声をかける。



――そして、オレンジ色の髪の少女はゆっくりと上半身を両手で持ち上げ……――



「う……うん、ワタシは……」

地面を押し出すかのように、両手を伸ばし、そしてゆっくりと自分を助けてくれたほぼ同い年の少女と顔を合わせる。



――デイトナは、ようやくその時助けてくれた少女の正体を知る――



「あっ……! ミ……ミレイ!!」

デイトナは声を震わせながら、間近にいるミレイに飛びつくように抱きついた。

「ってあぁのちょちょ……な、な、何よ!?」

ミレイは飛びつかれた反動で背中から倒れそうになるが、何とか力を入れてそれだけはまぬがれる。
だが、突然身体を締められたミレイは突然の様子に整理され切っていない声を焦るように発する。

「ミレイ……! 手ぇ貸して……! ワタシ怖――」



――ミレイはこれからデイトナに何が起こるのかを手早く予知し……――



「ちょちょストップストップ!! 泣くのやめて! 駄目! やめて! だいじょぶだから!!」

ミレイはこれから起こる事に恐怖し、抱きついているデイトナを強引に押し離し、
最終的にはデイトナの両肩にそれぞれの手を置き、揺らしながらなだめる。

「え? あ、うん……」

ミレイのそのある意味で妙とも言えるその説得行為によって、デイトナは危うく泣き出しそうになっていた感情を
なかに押し込み、そのミレイの必死の行為に答えて気持ちを落ち着かせる。



「ミレイ! お前んとこ大丈夫だったか!?」

ミレイの元に寄ってきたのはアビスである。先程の波動砲による轟音がミレイを襲っていなかったか
きっと心配だったに違いない。

アビスの後ろには、拳銃をスーツの裏にしまいながら歩くテンブラーと、
周囲の騒動を見渡しながらテンブラーに並んで歩くネーデルの姿があった。

「アビス、一応こっちは何とか大丈夫」

ミレイは隣まで近づいてきたアビスに対して、立ち上がって赤いジャケットについた砂を払いながら答える。

「いや〜ミレイちゃん今のナイス救助劇だったぜ。所で、そのはミレイちゃんの友達か?」

どうやらテンブラーはミレイの飛び込み救助の様子をしっかりと見ていたようだ。
パナマ帽の下のサングラスを親指で軽く正しながら、初期装備の少女の事を聞こうとする。

「あ、はい、デイトナです。一応はあたしの後輩ですが、あ、それよりデイトナ、何あったのよ? 凄い焦ってたみたいだけど」

テンブラーの問いにミレイは頷きながら答えるが、その内容の中でデイトナの様子を思い出し、
既に立ち上がっているデイトナに向き直りながら訊ねる。



「それなんだけど……、なんか妙な男が酒場にやってきて……ハンター達を殺し始めたの……」

自分が先程までいた場所で起きた惨劇を思い出したデイトナは、突然身体を震わせ、
恐怖によって一時的にむしばまれてしまったであろう思考を振り絞り、
かなり省略こそされているものの、それでも意味としてはしっかりと成立する内容を伝える。

「ハンター達って、なると……、ってそれって集団でその、殺しってのをやったって事?」

デイトナの説明を聞く限り、男が一人でやってきて、複数のハンター達を殺したと解釈出来るはずだが、
流石に堅い武具を纏い、そして飛竜を倒す為の武器を持った連中相手に単独で挑むと言う事が
ミレイの中では想像が出来ず、デイトナの言い分を所々で意味を置き換えながら
ミレイなりの解釈の内容をデイトナへと返す。

きっとその『男』がハンター達と同じような武具を纏った仲間を引き連れ、その上で虐殺行為をしたのだろう。
ミレイの中ではこのように組み立てられている。



――だが……――



「いや、違うの……。集団なんかじゃない……。たった一人で、何人も殺して……」

ミレイのあれこれと考えた解釈はそのデイトナの震えた言葉によって全てが無駄となる。
あの凝縮された言葉の中には、無駄に省略されたものは何も無かったのだ。

「あの、デイトナさん、ちょっといいですか?」



――その単独での虐殺をおこなった男について何か思ったのか、ネーデルは……――



ネーデルは青く長い髪を風に揺らしながら、震えて説明するデイトナに近寄る。

「は、はい?」

敬語で接されたデイトナも、一瞬だけ戸惑いながら、ネーデルに合わせて敬語で軽く頷く。

「その男って、肌が灰色じゃなかったですか? そして黄色い髪をしてませんでしたか?」

まるでその殺人鬼を昔から知っているかのように、その男の特徴をネーデルは出し、
そしてその特徴が酒場で殺害をくわだてた男と一致するかどうか、確認する。

「確かに……その男です。まるで殺す事を遊びのような顔でやってたんです……」

やはり一致したのである。デイトナはあの灰色の皮膚を持った異様な姿の男のあの行いを想像し、
再び身体と声を震え上がらせる。



――特徴を聞いたネーデルは、遂にその男の名を口に出す……――



「その男は、バイオレットです。この街の破壊活動の指揮官を担当してるんです。まあバイオレットも上からの指令を受けてるんですが」

ネーデルはその男、バイオレットの役割と、彼の上にも何かがいる事を静かな口調で説明する。

「バイオレットかぁ……あんにゃろ……」

バイオレットの名前を聞き、テンブラーは何故か意味ありげにサングラスの裏で目を細めるが、
その後すぐにまた次の言葉を発する。



――だが、そこに――



「そいつも……」
「あの、ネーデル……」

テンブラーはネーデルに質問でもしようとしたのだろうが、ほぼ同じタイミングでミレイも入ってきたのである。
両者は互いに声を詰まらせる。

「ん? ミレイちゃんなんか質問でもすんのか?」

テンブラーは横にいるミレイを見ながら、訊ねる。

「あ、いや、テンブラーさんも何か?」
「ああ別に俺は後でもいいから、ミレイちゃんから先に聞きたい事聞きなよ」

テンブラーはミレイに譲り、その口を閉じる。

「はい、ありがとうございます。んでネーデルさあ、なんでそのバイオレットって奴の事やけに詳しく知ってんのよ?」

確かにネーデルはバイオレットの事情を知りすぎているように見える。
簡単には得る事の出来ないような情報を持ち合わせている為、ミレイはそんな質問を投げかけたのだ。

テンブラーにはいつものトーンの高い女の子らしい優しさの多少見えた口調で礼を交わし、
逆にネーデルに対しては多少ながら強みが籠ったような口調で接する。

「おいミレイ、お前そんな疑うみたいな感じで行くのやめろよ」

アビスはそのミレイの態度の変化が気になったのか、ミレイの肩を軽く引っ張りながら
質問と言う名目で攻めようとする行為を止めようとする。

「違うわよアビス。別に疑うつもりは無いけどさあ、ちょっと気になっただけ。別に変な事とかしないから心配しないで」

決してミレイはネーデルを追い詰めるつもりは無いと言葉だけでアビスを抑えるが、
実際聞いている側としては追い詰めているように見えなくも無いだろう。



――そして再びネーデルに向き直り……――



「んでネーデル、なんで知ってんのよ?」

ミレイの青い瞳が少し細くなり、どこか重苦しい空気が夜のこの道に流れ始める。

「えっと……、実は……」

ネーデルにはしっかりとした理由を持っているようではあるが、目の前の緑色の髪をした少女の威圧感からか、
非常に言い辛そうに赤い瞳を下に降ろしたままの状態を保つ。



――そこに助け舟が入り……――



「ミレイちゃん、ちょっとは冷静になったらどうだ? んでもってネーデルちゃんよ、ちゃんと言ってごらん。別に俺らはネーデルちゃんに敵対したりする気なんてねえし、それに、もしホントにバイオレットの手下とかだったとしても別にいんだぜ? まっさかネーデルちゃんのような優しそうながバイオレットみてぇにじゃんじゃん殺戮活動なんか出来る訳もねえんだし、ちゃんと正直に言ってみな。俺らの事、信じてくれよ?」

テンブラーは一度ミレイに静止の言葉を投げかけた後、どんな事実を教えられようとも、
絶対に手出しをしないと言う事を誓い、ネーデルが安心して発言出来る空気を組み立てる。

少女には多少甘い印象を受けるテンブラーならではの行動だったのかもしれない。

「……はい、えっと……」

テンブラーの説得でようやく事実を伝えようとし始めるネーデルであるが、やはり気まずそうな様子がチラチラと見える。



――ミレイの視線に多少不安を覚えているのか……――



「確かに……、えっとわたしはバイオレットと同じ組織の人間です……」

その瞬間、回りの人間を取巻く空気に更に重いものが感じられたが、相手の返答を
そこで求めず、再び、素早く、ネーデルは口を開く。

「でも、えっと、わたしは怖かったんです、あの組織が。だから今回を持って逃亡を図ったんです……。本当です」

勿論何の組織かはここではまだ分からないが、敵の大型組織から逃げるとは、
ネーデルも落ち着いた性格にしてはなかなかやると言える。

「逃亡、なるほどぉ、確かにそうだよなあ。ネーデルちゃんみたいなが趣味悪い組織にいるって事自体おかしいからなあ」

テンブラーはその逃げてきたと言う簡単な説明を聞き、ネーデルのその性格と照らし合わせ、
組織と関わる事を嫌がった理由を勝手に頭の中で作り上げながらそんな台詞を考えた。



――そんな中で、ミレイはとある話を思い出し……――



「あ、そうだデイトナ。さっき酒場から逃げてきたって言ってたけど、早く行かなきゃ不味いんじゃない? まああんまりあたしが言えた事じゃないけどさあ」

ミレイはデイトナを見て思い出したのだ。酒場に妙な男こと、バイオレットが現れたと言う話を。
そこでミレイがネーデルを問い詰めた為にここで立ち話状態になってしまった為、実質ミレイに責任があると言える。
それを分かってての発言なのだろう。

「う、うん、今フューリシアさんがその、バイオレットって言う男と闘ってる所だから、早く助けてあげて!」

デイトナは両手の拳を強く握り締め、それを胸の前に持ち上げながら叫ぶ。

「分かったわ」



――ミレイは一言吐き、足を動かし始める――



「でもさあ、そんな化け物相手にあたしらで通用すんの――」
「ミレイちゃん、悪いけどなあ、バイオレットとのやり取りは俺がすっぜ。あいつはホントに化けもんだからなあ」

酒場へ向かって駆け足になるミレイの横で、テンブラーの言葉が入る。

そのすぐ近くをアビスとネーデル、そしてデイトナも駆け足でこの道を走っている。

「え……、そんなに、強いんですか?」

ミレイもかなりの格闘術を身に付けている身ではあるものの、先程のデイトナの
ハンター大量虐殺の話を聞く限り、大体のバイオレットの戦闘力は分かっていたが、
敢えて再確認と言う形で訊ねる。

「ああつえぇぜ。あいつは体格はそこら辺の男と対して変わんねぇ、ってかまあまあって感じだけど、あいつと素手でやるとしたらかなり自殺行為だからなあ。そのフューリシアさんとか言う人も、あんま無茶してなきゃいいけどなあ……」

テンブラーはバイオレットと面識があるのだろう。だが、多少体術に自信があった所でバイオレットは
そう簡単には打ち倒せない人物であると、多少テンションを落としながら言った。

「一応フューリシアさんはハンターとしての腕も凄いですし、地味にあたしの体術の師匠でもあったんですけど、やっぱり凄い心配です……。殺されてない事を、祈りたいですが……」

どうやらミレイにとっても、フューリシアは大事な人物であるようである。デイトナとも繋がりがあるのだから、
ミレイとも繋がりがあるのか。

だが、よりによってバイオレットと対面中なのだから、安否に対してミレイは不安を覚えてしまうのだ。

「確かに心配するって気持ちは分かるけど、一個だけ一応いちお言っとくぞ」



――走りながら、テンブラーはとある忠告を与える……――



バイオレットあのやろうとやり合うのは俺だけの方がいいな」












――■◆ 毒煙鳥の召喚し閃光/WHITE FLASH ◇□――



そして、とある街のエリアでは、白い光を放出させた大型の怪鳥と闘う四人のハンターの姿がある。
発光は、この灰色のゴム質の皮膚を持った怪鳥の特殊能力と言った所である。

そう、たった今、この夜の空間を鮮明に、明るく照らす為の光が放たれ、
その被害者となったあの四人の戦士ハンターは……



「な……何だよ今の……」

青いギザミ装備のスキッドは、ゆっくりと光が収まっていくその中で、
持ち上げていた左腕をゆっくりと下げながら、光の厄介さを思い知らされる。



――εε 白閃光スプレットフラッシュ εε――

周囲に強力な光を放出させ、付近にいる生物どもの視界を一時的にではあるが、奪うのである。
その哀れな生物が視界を奪われ、横にも前にも動けない間に、
この怪鳥毒煙鳥は色々と苦しめてきてくれるのである。

だから、今のスキッドは……



毒煙鳥も光を放つ為、恐らくは全身に力を込めていたのだろうが、放出後となったのだから、
もう力を抜いても良い頃だ。

φ 丁度毒煙鳥の視界の中にいたのは…… φ



一応スキッドも毒煙鳥との戦いの経験はあるのだから、素直に視界を奪われて
身動きが取れなくなる状態になったと言う訳では無い。

両腕と、愛用の鎧竜製猟銃グレネードボウガン顔面りょうめを必死に保護ガードし、
視覚障害は何とか免れたのだが、彼の立ち位置は毒煙鳥の目の前なのだ。



ιι 照準確認エネミー・ロックオン!! ιι



毒煙鳥毒煙鳥は両脚に力を込め、スキッドに急接近する。
ついでに、翼を軽く羽ばたかせる行為アクションも忘れない。



――【尖口の急落下ダウンフォールビーク】――

スキッドへ接近し、そして下に向かって毒煙鳥の嘴が力強く落とされる!!

「おっと危ね!!」

一気に近寄ってくる毒煙鳥の軌道から素早く外れるスキッド。
地面を素早く蹴り、毒煙鳥の外見に相応しい重たい一撃を逃れる。



「余所見したらインジュリすっぜ!」

――毒煙鳥の真後ろから響く、陽気な声色――

それは毒煙鳥自身は気付かず、そのまま後ろから攻撃を受けるのだ。



■■ ジェイソンの斬撃/RUBY TWINKLE ■■

深紅の髪の男ジェイソンは毒煙鳥の背後から飛び上がり、翼の間の背中を正確に狙う。

――二本の柄を逆手に持ち……

――そのまま力強く突き刺した!!



「おらぁ!!」

ジェイソンの陽気な気合と同時に、二本の剣が背中に突き立てられる。
ゴム製の皮とは言え、これでも飛竜の一種として生きる飛竜である。
尖ったその攻撃をも受け止める。

だが、真っ直ぐ突き立てられれば無傷では済まされず、いくらか奥にまで行き届けられる。



――毒煙鳥も、背中に走る痛覚を受け取り……――



「そろそろデンジャーだな!」

ジェイソンは毒煙鳥がこれから痛みに身体を震わせてくるだろうと予知し、素早く毒煙鳥から飛び降りる。

χ χ その背後では……



――グガァアアア

人間で言う、呟きのような鳴き声を発しながら毒煙鳥は標的を目の前のスキッドから、
背後に斬撃を仕掛けてきたジェイソンに変更チェンジする。

毒煙鳥は両脚を動かして身体の向きを変えたのだ。



「カマーンだぜ! このチキン野郎め!」

距離はあるが、事実上向き合った状態である毒煙鳥に向かって、ジェイソンは
双剣の<インセクトオーダー>を持った右手で手招きをし、すぐに構えに戻る。



ψψ 毒煙鳥はまるで挑発に乗るように……

――軽く脚部を曲げ……

――翼に力を込める!



▲▲■■ 灰色の怪鳥は飛び上がる!!/CHICKEN FLYER ■■▲▲

空を駆け巡る為に遥か上空まで飛ぶ必要等は無い。
ただ、地面から両脚を離せばいいのである。

だが、折角低空ではあるが、飛んだのだから、これを何かに繋げるのも悪くは無い。



その跳躍軌道バードオービットは、山形やまなりだ。



――【高次の灰風落下スタンプ・マウンテンライン】――

ジェイソンに向かって飛び掛るように低空跳躍し、そのまま押し潰そうと毒煙鳥は企む。
飛竜の体重は人間とは比べ物にならないのだから。

飛び込むように、ジェイソンへと向かい、毒煙鳥の両脚が地面を踏み鳴らす。



「へっ! ヒットなんかしねぇよ!」

命中しない事を鼻で笑いながらジェイソンは素早く左へと避ける。

だが、目の前の光景は一般人ならば耐えられないかもしれない。

ββ 勢い良く落下する両脚…… ββ

砂煙と風を周囲に走らせ、巻き込まれた時の悲劇を物語る。
戦士ハンターの鍛えられた根性がそれに対する耐性を作り上げていると言える。



「なかなかビガーじゃねぇかあ!!」

その落下の迫力を多少褒めながら、ジェイソンは次なる斬撃を仕掛けようと毒煙鳥に接近しようとする。



――毒煙鳥は察知する……――

横を見れば人間が自分に向かって攻撃して来ようとしている。
このまま好きなように放置しておけば無駄に身体を傷つけられてしまう。
一度追い払う必要があるだろう。



▼▼ だったら、追い払う必要があるだろう……



ρ 毒煙鳥は口を紫色に染め始める ρ



「アタック決めてくんのか?」

ジェイソンは攻撃体勢と同時に足も走らせていたが、毒煙鳥の様子を見失う事も無く
すぐに、上から落下する液体・・を回避する。

その落ちてきた物とは……

毒物質ポイズンリキッド



―ボチャン!!



紫色に染まった物質が地面に叩きつけられ、近辺には毒々しい煙が立ち上がる。
だが、その病気を振り撒くような迫力を気にも止めず、
ジェイソンは再び攻撃体勢に戻る。

「小細工決めてんじゃねぇぞ!!」

そんな力強く、低い声色が毒煙鳥の横から響き渡る。
同時に毒煙鳥に入れられたのは、その声の主の得物である。



ε 斬破刀の斬撃が毒煙鳥に走る!! ε

ジェイソンに集中していたであろう毒煙鳥の横腹へと深く浸透した刃により、
毒煙鳥の痛覚神経に久々な刺激サンダーボルトが素直に伝わったのだ。

横からがれた太刀を操っているのはフローリックであり、
その前に叫んだものが意味するものは、先程のあの閃光フラッシュである。

ディアブロスの武具で纏ったその身体には力がみなぎる事だろう。

一つの対象ジェイソンにばかり気を取られていた毒煙鳥はゴム質の胴体に深い傷を付けられたのだ。



「ナイスフレンドだぜ!!」

毒煙鳥が怯む姿と、その原因を作った人間ハンターを確認したジェイソンは
剣を右手に持ったままで親指を立てて手早く礼を飛ばす。



コザカシイマネヲ……

心の中できっと思っているであろう毒煙鳥は小癪こしゃくな一撃を与えてきた男こと、
フローリックに対して、よく伸びる尻尾で追い払おうと身体を捩じり始める。



――だが、まだ仲間・・がいるのだ……――



「はぁああああ!!」

その可愛らしい少女の気合が響き、毒煙鳥の動きに一瞬鈍さが生じる。
一体どこからその声が響き、そして声を発している人物がどこにいるのだろうか。



その赤殻蟹の甲殻と言う、軽量な特性を使ったとしても、
あまりにも大胆な場所から、その少女は現れる……。



――毒煙鳥の頭部の真横から飛んできたのだ――



σ 左手に握られる銀色の刃が

ι 鋭く、軽やかな直線を引きながら……

κ 鶏冠とさか目掛けて風を斬る!!

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