Fascination N−D−File
恐怖の館

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オウム特別指名手配とされている者達の中の1人である菊地直子。潜伏の噂でミャンマーが上がったのだった。

1995年に発生した地下鉄サリン事件以降、指名手配された彼女で、現在(2008年)まで逃亡しているが、その先はかつては国内、国外諸説があったが、彼女の居場所が正格に把握出来たのである。それは、ミャンマー東部の「黄金の三角地帯」とも呼ばれるアジアの奥深くなのである。ここは麻薬王が独立王国を形成しており、当然のように無法地帯の魔境である。1996年まではクンサーが君臨していたが、現在は旧ビルマ共産同の軍事部門の少数民族であるワ族統一軍が制圧している。

ワ族とは、中国漢代の雲南「てん王国」の頃から戦士だったと言う勇猛な民族であり、首狩りの習俗で恐れられていた。だが、人口は45万人。中国雲南省西南地域と泰北部国境地域に麻薬であるアヘンと覚醒剤の生産拠点を持っている。そこの泰国境沿いにモンギョンと言う町があり、彼女は1996年にそこに逃げ込んだと推定されている。ここは警察でも匙を投げるぐらいの絶妙な隠れ家であるらしい。

彼女は北海道釧路での目撃証言、愛知県での列車の切符からの指紋検出等、曖昧な情報が相次ぐ。他にも埼玉県所沢市のマンションに他のオウム逃亡犯と一緒に潜伏していた話もあった。しかし、警察が踏み込んだ所で逃げられたのだが。

実際は元総会屋のX氏を中心とした十人程度のチームの働きで1995年末には偽造のパスポートで日本を脱出し、泰へと逃れたのである。主にオウム愛知県支部の女性信者から形成されるチームのメンバー達も12月中には泰の北部・チェンライに終結し、X氏の旧知の泰人女性達が居住していたと言う。チームはチェンライ近郊で彼女を匿って執拗な「東京海上火災恐喝」や「狂言誘拐」を仕組んで菊池の潜伏を隠蔽しようとしていた。

狂言誘拐とは2人のオウム女性信者がX氏に誘拐されたと言ってチェンマイの日本領事館に駆け込んだものである。所が、チェンライ警察の捜査官は彼女の泰潜伏証言を丹念に集めていた。例えばチェンライ市内のレック・ゲストハウスのオーナーはXを訪ねて彼女が数回現れ、郊外の借家に車で送った事があると証言しており、ハッピー・ゲストハウスのオーナーはここで彼女が宿泊したのをハッキリ覚えてると証言。

慌てた彼女は数人の仲間と逃亡。そしてその先こそがミャンマーである。それを見定めたらしいX氏は彼女は泰北部にいて最近、携帯電話で話したばかりだとマスコミに証言したのである。

チェンライの郊外、ミャンマー国境への途次にある水田の中にある一軒家。この辺はジャパゆきさんの故郷であり、時折日本語が飛び交うのである。

当時、日本警察が動かなかったのはなぜなのだろう。X氏を拘束した泰国家警察の中佐が言ったのだと言う。日本大使館の内部がギクシャクしており、政務班と領事部がしっくり行っておらず、結果的に彼女の情報を握り潰す形になったのだと、言っている。2003年頃に泰国家警察でただ1人の日本人であった戸島国雄大佐が泰北部の少数民族の調査中にオウム逃亡犯ミャンマー潜伏情報を耳にし、その後に彼女らしき女の目撃証言は次々と集まる。現地に長期滞在を許された建設業者の事もあれば、警察当局への証言を拒む麻薬業者の事もあった。相手は世界中の犯罪者が逃げる闇にいるのだが、手は出せないのである。

だが、それから1年後にその闇のモンギョンに乗り込んだのだが、その潜入の方法が意外と容易なものだったと言う。泰の最北端の町・メサイの川を挟んだ反対側がミャンマー・タチレクであり、ここも怪しい町。黄金の三角地帯の山岳少数民族の一つにラフ族がおり、狩猟、焼畑農業に従事、虎を狩る人と呼ばれている。人口はワ族程度の40万人で、ワ族が麻薬生産者ならラフ族は泰北部の麻薬流通を実質的に掌握している。その民兵組織がタチレクを拠点に、覚醒剤ビジネスを全面展開したのである。

ある雑貨商が取った写真には明らかに彼女と思われる女性が写っていたが、指紋だのDNAだと言われても捜査権も逮捕権も無いエリアなのだから状況証拠でも充分なのである。

モンギョン地区を支配するのはUWSA171師団、司令官はウェイ・シュア・カンである。米国では200万ドルの懸賞金を懸けられており、泰の法廷では死刑判決が出されている。この男が日本人達を保護して手足のように使ったらしい。最初はヤーバの製造技術取得だったのだろう。当時はまともな技術者は少なかった。

そして、彼女であるが、ウェイ司令官の昇格と同時に行動を共にしている。それでは恐らく補佐官所か、右腕であるかもしれない。
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