深緑竜の巣の内部では、例の2人のハンターが抵抗を続けていた。

「うわっ! こっち来んなぁ!!」

 紅い鱗で作られた武具を纏ったハンターが、目の前から走り寄ってくる緑色の体躯と大きな翼を持った飛竜を眼中に入れながら叫んだ。

「バカ! ジン早く正面から外れろ! 何してんだ!」

 青い甲殻で作られた武具を纏っているハンターが、ジンと呼ばれる紅い装備のハンターに向かって叫ぶ。



 この深緑竜は、ハンターに対して猛烈な突進を仕掛けてくる事が多い。しかし、その大きな身体を左右に制御するのは難しい為に、方向修正が上手く出来なくなってしまう。

 その為、確かに正面からずれてしまえば即座に回避は出来るのだ。だが、ジンは適切な回避手段を取らない為に、その深緑竜に弾き飛ばされてしまう。



 ジンの扱っている武器は太刀であり、それでも飛竜の甲殻を叩き斬る為にそれなりの大型サイズで作られている。

 深緑竜の動きも確認せずに攻撃を仕掛ける為、太刀の動きに振り回されている間に反撃されてしまうケースが多かった。鎧に加え、受け流し自体はしているからある程度の防衛手段は取っているが、やはり吹き飛ばされている事に変わりは無い。

「お前なあ……慣れてないくせにそんな使い辛い武器持って来るなよなあ」

 きっとこのジンでは無い青い甲殻の装備の男はガロトなのだろう。

 ガロトは立ち上がるジンに対してそう言った。

「おれはこれでも最終的にはちゃんと倒せてるんだからいいじゃん」

 攻撃を受け続けているにも関わらず、ジンは結果さえ良ければ全てが良いと、言い返した。



「傷薬が無いと何も出来ないくせにな」

 ジンの極めて悪い回避技術をいくらか補ってくれているのは、回復薬のおかげである。その薬品は飲み込むと身体の損傷箇所を瞬時に治癒する効果がある。

 だからこそジンは討伐自体は毎回成功させているが、飛竜の攻撃を受け流す技術もなかなかのものであり、骨折等の大怪我も非常に上手く免れている。



*** ***



「あれだな……。でもあんだけぶっ飛ばされててよくやるなぁ……」

 洞穴に入ったアビスとロジャーだが、アビスは深緑竜の伸びた尻尾で吹き飛ばされたジンの姿を見るなり、そう呟いた。

 だが、そんなジンもすぐに立ち上がり、そして反撃をおこなっている。

「急ぎましょう! あのままほっといたらいくらジンでも危ないですよ!」

 ロジャーはすぐに鉄製の片手剣を持ち、暴れている深緑竜を強く見続けた。戦わなければ、終わらないのだから。



「当たり前だろ! あんな危なっかしい奴初めて見たぞ!」

 正直、しっかりと回避すらしないハンターを見るのはアビスにとっては初めてだったのだ。そして、ロジャーと共に、深緑竜へと近づいていった。



「ジン! ガロト! 遅くなってごめん! 今頼れる人を連れてきました!」

 深緑竜と対峙している2人のハンターは互いに声を掛け合いながら武器を振るっていたが、ロジャーの声を聞いて2人は振り向いた。

「ロジャー、随分遅かったなあ。こっちは馬鹿なジンのせいで色々振り回されてたってのに」

 ガロトは鉱石でヘッドを作っているハンマーを持ちながら、ロジャーへと言い返す。よほどジンと共に行動していたのが辛かったのだろう。



「そんな事無いですよ。ちゃんと急いでお連れしたつもりなんだけど……」

 ロジャーはそう言い返すが、ガロトが時間を遅く感じるのも無理は無かっただろう。

 大型のモンスターに襲われ、恐怖心と緊張感にも襲われている時は通常よりも時の流れは早く感じてしまうものである。アビス達が来るまでの間、幾度と無く深緑竜に攻撃され続けたであろう、そのジンの鎧には大小様々な傷が残っている。

 勿論、ガロトの方が傷は少ない。



「じゃあロジャー、早く俺達も援護しようよ? 多分もうすぐ倒せると思うし」

 アビスはロジャーに言いながら、バインドファングを取り出した。

 目の前の深緑竜を倒す為ではあるが、彼らがどのように戦っていたのかは詳しくは分からないだろう。それでも、今は共に戦うしか無いのだ。

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