Fascination N−D−File 線型結合

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やさしく学べる線形代数


線形代数学


プログラミングのための線形代数

線型結合(せんけいけつごう、linear combination)は線型代数学およびその関連分野で用いられる中心的な概念の一つで、平たく言えばベクトルの定数倍と加え合わせの事である。一次結合或いは線型和とも呼ぶ。線型を線形と表記する事もある。

いくつかのベクトルを組み合わせると他のベクトルを作ることができる。 例えば、2次元数ベクトルを例にとれば、ベクトル v = (2, 3) と w = (1, 2) を用いて 2v + 3w のようにすれば、(7, 12) と言うベクトルを作る事が出来る。

このように、いくつかのベクトルを何倍かしたものを足し合わせたものを、それらのベクトルの線型結合と言うのである。

定義

有限個のベクトル v1, v2, ..., vr とスカラー k1, k2, ..., kr に対して

を、ベクトル v1, v2, ..., vr の(k1, k2, ..., kr を係数とする)線型結合という。ベクトル v1, v2, ..., vr を変数と見たときの斉一次式であるので一次結合とも呼ぶ。

係数は 0 でも良いし負でも良いので、v1 - v2 等も線型結合。

諸概念

独立・従属

n 個のベクトル v1, ..., vn に対して、その線型結合でベクトルを表すとき、各ベクトルがただ一通りの表示を持つならば線型独立、少なくとも 2 通りの表示が可能であるならば線型従属という。言い換えると、ベクトル v1, ..., vn が自明でないどんな一次関係式も満足しない時、即ち

が満たされるのが、全ての係数 ki (i = 1, 2, ..., n) が 0 の場合のみに限られる時線型独立と言い、そうでないとき線型従属であると言う事が出来る。或いは同じことだが、与えられた幾つかのベクトルが、互いに他のベクトルの線型結合では表せない時、これらは線型独立であると言い、線型独立でない事を線型従属と言う。

生成

K 上のベクトル空間 V と、その有限部分集合 S = {v1, v2, ..., vr} に対し、V の部分集合で S を含む最小の部分線型空間となるものを span(S) あるいは <S> と表す事にすると、それは S の元からなる一次結合の全体と一致する:

これをベクトル v1, v2, ..., vr によって張られる部分空間或いは SK 上で生成する部分空間といい、S をこの部分空間の生成系という。係数を明示して SpanK(S) とか <S>K のように記す事もある。また、S が無限個のベクトルからなる V の部分集合である時、S の生成する部分空間とは

即ち、S の有限個のベクトルの線型結合として表されるベクトル全体の成す V の部分集合となる。

V = span(S) となる部分集合 S のうち極小なものを V の基底と言う。基底の濃度は常に一定であり、基底の濃度としてベクトル空間の次元が定義される。たとえば、S = {v1, v2, ..., vr} が線型独立なベクトルからなるならば、S はそれによって張られるベクトル空間 span(S) の基底をなし、span(S) の次元は r となる。

一般化

環上の加群についても、スカラー倍と和からなる式を考えて一次結合と言う。二つの環 A, B に対してアーベル群 M が (A, B)-両側加群であるなら、M の元 x1, x2, ..., xn の一次結合は

(aiA, bjB) という形に書く事が出来る。

V が位相線型空間で V の無限個の元からなる部分集合 S を考える時、その無限項の "線型結合"

(ciK, viS, i = 1, 2, ...) のうち V の位相に関して収束するものの全体を考えると、それは S 及び span(S) を含む最小の閉部分空間となる。


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