「!!」

少女は咄嗟の出来事だったが為に、ただ驚く事しか出来ずに投げられざまにその赤い瞳を強く閉じる。



「こいつっ!!」

テンブラーはバイオレットの大胆な攻撃に対して驚いたかのような声を上げるが、
それよりもまずすべき事は、少女を受け止める事である。



――やがて、男と少女がぶつかり合い……――



「きゃっ!」

ぶつかった際の衝撃で少女は思わず小さい悲鳴をあげ、
そしてテンブラーは両腕で少女を抱きながらも、反動を殺しきれずに
そのまま後ろへと倒されてしまう。



αα バイオレットは再び武装する!! αα



「二匹揃っておねんねしなっすぁああああああい!!!」

▼π バイオレットの昇天宣言ペインソウル!!

▼δ いざ、装備!イクイップメント――機関銃マシンガン

▼υ 蜂の巣キラービーホールをテンブラー達に精製するのだクリエイション!!



ダララララララララァララァラララァララ!!!!!!!!!!!!!!!!

バキバキバクゥバキバキバクィイバキイィバキィン!!!!!!!!!

バララルァアアアラララルァラララァラァアアア!!!!!!!!!!



β 木片を飛び散らせ、弾丸が無数に宙を舞い、火薬の匂いを撒き散らす! β



■■χχ 急逝誘惑の集中射撃アンスマイルパレード・シングルタイプの一秒前のお話/GIVE ME RELIEF!! χχ■■

テンブラーの行動は鈍くは無いのだ。
バイオレットの性格を知っている彼ならば、即座にテーブルを倒し、
盾を作る事で自分も、目の前の狩人用装備の薄い赤髪の少女を護れる事を知るはずだ。

結果、二人はその場で魂を抜き取られる事は無かったが、はっきり言って






βοβ 凄まじいシフティ』 これに尽きる βοβ






「嫌あぁ!!」

少女はすぐテーブルの向こう側、そして上を飛び交う銃弾の轟音により、頭を両手で押さえながら悲鳴を上げる。

「心配すんな! 必ず助けてやる!」

テンブラーは銃撃戦には慣れているのか、いつものように低音のだらしない声色で、少女に励ましの一言を渡す。

――そして、とあるもの・・・・・に目をつけ……――







θζ バイオレットの絶滅射撃一角獣グシャワーは止まる事を知らず…… ζθ

「どぉおしたやぁああ!!!??? なぁあああんかして来おぃいやぁああああ!!!!!! そんまま穴だぁああらぁあけんしてやあああっぞおおぉおお!!!!!!」

激射鬼バイオレットはテーブルの上に堂々と立ったまま、テンブラー達の隠れているテーブル周辺を
容赦無く撃ち尽くす。

弾丸一つ一つの威力は単にテーブルや床をえぐると言う意味では低いとは言えるものの、
人間が受けた場合の被害は甚大なものとなる。
だから迂闊に身を乗り出すのは不可能に近い。



φψ バイオレットの緑色の眼デーモンアイズに映ったのは…… φψ

テーブルの横からうっすらと映し出された胴体だ。
今にもそこから飛び出すかのように上体を見せ付けている。
どうせ飛び込み回避でもするつもりなのか?

■◇■ だが、殺しの遊具マシンガンは容赦しない

「あぁ!? そぉおおこぉおくあぁあああああ!!!!!



――見えたその胴体目掛けて照準を合わせつける!!――

ROCK ON!!

ターゲット捕捉!!





バララララァアララララァララララ!!!!!

その胴体ターゲットはテーブルから飛び出すも、簡単にバイオレットの標的となる。

容赦無く弾丸を撃ち込まれ、簡単に傷だらけと化してしまう。
だが、それは本来狙うべき標的では無かった。理由は簡単過ぎる。
火竜装備を纏っていたからである。

――テンブラーは武具では無く、紫スーツの姿だから……――



「残念でした〜!!」

火竜装備の既に弾丸を受ける前から絶命しているハンターの反対側から現れたのはテンブラーであり、
バイオレットの音量に対抗するかのような大声と共に、がら空きの胴体を狙う。

ピュウゥン!!

テンブラーの場合は連射では無く、単発なのだ。
だが、命中率は充分と言える。



「けっ! デコイかぁ、下んねぇ!」

バイオレットは身軽な服装に相応しく、上体をねじって弾丸を回避し、一度テーブルの下へ降りる為に後方へと跳ぶ。
一時的に連射が途切れ、それが決定的な隙となる。



(よっしゃ今だ!!)

テンブラーはこの隙を期待していたのだろう。
弾丸の途切れは鈍っていた思考力を回復させる。この僅かな時間を使い、咄嗟に思いついたのだ。

α 何を考えたのか?

α それは勿論バイオレットを素早く仕留める為の手段




















β なんかでは無い

β もっと別の、最優先すべきものがあるでしょう

β 簡単な話だ。この少女を酒場から逃がす事だ



「嬢ちゃんこっちだ!!」

テンブラーは勇気を出して少女の腕を掴み、そして出入り口へ近づく為にそこに近い場所にあるテーブルへと素早く進む。

「え、あ、はい!」

涙で目元が濡れていた少女だが、焦るように返答する。



――迂闊うかつだと捉えたバイオレットは……――



「やっべ! 逃がしちまっぜ……」

大人しく少女を逃がすような真似をしてしまえば一種の計画が崩れてしまう。
バイオレットは遮蔽物テーブルから身を乗り出した二人を早急に始末してしまうべく、再び機関銃を向けるが……



――テンブラーはスーツの裏に左手を伸ばし……――



「お前にもプレゼントやる! しっかり受け取れ!」

長方形の立体をした小型の武器を取り出し、それをバイオレット目掛けて投げつける。
テンブラーのそのメッセージだけを見ると、ぬるいものと感じられるが、実際は勿論違う。



―パァン!!



弾ける音と共に、多量の煙が立ち上がり、物理的に視界が遮られていく。
どうやらこれは爆破性の発煙弾だったようだ。



――ιι バイオレットの視界をくらました後は……/BLIND SPACE ιι――

「けっ! 豪華プレゼントじゃねぇかぁ!」

流石に物理的に視界を奪われてしまえば、バイオレットとしても辛いものがあるはず。
狙うのも難しいし、逆に狙われやすくもなる。
舌打ちをしながら、煙の向こうにいるであろう二人の姿をただ思い浮かべるしか出来ない。



(これでやっと逃がせっぜ……)

テンブラーは心中で遂に自分の計画が成功すると笑い、そして次は直接少女にとある質問をぶつける。

「所で嬢ちゃん、いきなし悪いけど、名前教えといてくれや。俺はテンブラーってんだけどな!」

もし無差別射撃でも受けて意図しない銃弾の被害を受けないよう、再びテンブラーは
近くにあったテーブルを横に倒しながら、狩人用装備の少女の名前を聞く。

「えっと、私はディアメルです! ホントにありがとうございました!」

狩人用装備の少女、ディアメルは素早く頭を下げながら、即座に目の前に映る出入り口へ進もうとする。

「分かったからいいから早く行け!」



――そのままテンブラーは少女の背中をやや乱暴に押し飛ばす――



「はい! っとと!」

ディアメルはバイオレットに襲われる事無く出入り口を抜ける事に成功するが、
足元に転がっていた黄甲蜂装備の男性ハンターの死体に足がぶつかり、転びそうになってしまう。

だが、少女は成功したのである。



■φ■ 脱出を!!/ESCAPE!! ■φ■



大衆酒場に居合わせていたハンターで三人目の生還者はどこへ向かうのかはテンブラーには分からない。
だが、一つだけ残っているのは、目の前の悪魔との決闘である。

「こっちも早くなん――」

テンブラーはそのサングラスの奥にある視線を出入り口から煙の立ち上がっている場所へと戻すが……



ο 煙の奥に映るのは…… ο

μ 誰かの人影なのだが…… μ

κ それがなんと…… κ

ψ テンブラー目掛けてぶっ飛んで来る!! ψ



「逃がしたなぁああ!!」

バイオレットである。

既に右手には何も持たれておらず、代わりに拳が握られており、
飛び掛り様に殴りかかろうと飛び込んできたのである。



――テンブラーも既に拳銃はふところへとしまっており……――



「もう第二ラウンドかぁ!?」

テンブラーの顔面に飛び込んでくるのは、バイオレットの拳である。

この拳は先程の一角獣装備の女性、フューリシアを容易く黙らせたのである。
男性としては僅かながら身長は劣るものの、それでも破壊力は油断ならない。



―パシィッ!!

テンブラーの左手が素早く動き、バイオレットの拳を見事に受け止める。
そしてその左手だけでバイオレットの反動による全体重も見事に支える。

――そしてテンブラーも……――

δδ 空いている右手を飛ばす!!



「へっ!」

―パシィン!

バイオレットも同じように左手でテンブラーの拳を受け止める。
今、互いに右手を押さえられ、そして左手で押さえている所である。

そして、今にも縛られた拳が解放されてしまいそうな程に震えている。



「そう言やあなあ、一角獣の装備したアホな女がおれに殴りかかってきたのよ。地味に大学卒業だの卒論優秀だの頭脳明晰ぶった事ほざいてたんだけどなあ、すっぐ負けたんだぜ? それで分かった訳よ。まあ今頃言うのもあれだけどよぉ、世ん中学歴イコール強さじゃねぇんだよなぁ。お前はどうなんだろぉ……」



――そのままバイオレットは――

緑色をした眼をゆっくりと細め、両手以外の四肢に力を入れ始める。
それに気付いているのかどうかはテンブラーにしか分からないはずだ。

「なぁ!! 見してくれやぁお前の本気ってのをよぉおおお!!」

εε 垂直に伸ばされるバイオレットの右脚!! εε

テンブラーを下から蹴り上げようと企んだにまず違い無い。
しかし、相手も反射神経ならば負けるような人間では無いのだ。



――両腕でしっかりと受け止める!!――



「オッケェ!! じゃあちゃんと見てろよぉ!!」

受け流し、距離を僅かに取ったテンブラーも足技をバイオレットにお見舞いする。
ハンターと言う肩書きを持ちながらも、このスーツ姿の男は対人戦もこなすのだ。



α 一発目ファーストアタック!! 右脚で横に沿って蹴り上げる!!

確実にバイオレットの首筋を狙っていたが、バイオレットの左腕によってことごとく防がれる。

β 更に二発目セカンドキック!! 回転を加えて左脚で蹴り飛ばす!!

威力が最初の蹴りよりも増大したその蹴りを、再びバイオレットは左腕で受け止める。



「面白れぇじゃねぇかぁ! もっと遊ぼうぜぇ!?」

バイオレットにとってはテンブラーの蹴撃は脅威しゅうげきでも何でも無い様子だ。
寧ろ、非常に面白いものとして捉えているだろう。

そんな感情を口に出しているバイオレットに再び迫るのは



υυ 右脚による素早い前蹴りだ!!

「そうだなぁ!!」

テンブラーのものであり、身体を軽く横へと向けながら高速で突き出す。
まるで飛竜を貫くランスの如く。

上手くバイオレットへ命中するものの、左膝を持ち上げる事で
その衝撃は相当吸収されてしまう。

だが、酒場の中央部へとバイオレットは押し出されるのである。
周辺は血に塗れたハンターの死体が大量に転がっているが、これはただの好都合でしか無い。



「そこら辺玩具がんぐだらけだかんなぁ!!」



σσ その子供が使うような単語が意味するものは…… σσ

――床に転がった猛毒性の手斧アッパータバルジンを拾い上げ……

――テンブラーへと投げつけたのだ!! 縦回転を加えながら!!



とむらう気持ちは微塵みじんもねぇって訳かぁ!」

顔面に飛んでくるその片手剣を、屈んで回避する。
外れたアッパータバルジンはそのまま壁へと突き刺さり、そのまま動かなくなる。

その武器の持ち主の想いを踏みにじるような行為に対して報いを受けさせてやろうと、
テンブラーも結局元は生きていたハンターの所有物だったであろう魚竜の睡眠性大剣蒼剣ガノトトスを拾い上げ、
持ち前の怪力を使いながらバイオレットへと振り落とす。



ドスゥウウウン!!

バキィイイン!!

轟音、そしてテーブルが容易く割れる音が一瞬だけ響き渡る。バイオレットからのコメントも飛んでくる。



「へっ! お前も人ん事言えねぇだろ!!」

横へとずれながらそんな事をバイオレットは口に出す。
これを表に出す頃には既に大剣によってテーブルを両断されていたのである。



――だが、テンブラーの言い分としては……――

「俺は武器借りっだけだ! お前みてぇにはいかねぇよ!!」

テーブルを豪快に破壊した大剣をそのまま手放し、今度は素手による攻撃をバイオレットへ見せ付けるのだ。



βμ 右手によるパンチが豪速で放たれる!! μβ



「なんか総合格闘戦みてぇだなぁ!!」

油断をしないバイオレットは左腕でテンブラーの軌道を反らし、彼もまた、反撃を試みる。



αχ 右手によるアッパーだ!! χα



「そうだなぁ!」

テンブラーはそのまま素早く上体を反らし、バイオレットの一撃を空振りさせる。
回避後は素早く体勢を戻し、身体を左に向かって大きくひねる。
それが意味するのはもうすぐ分かる事なのだ



λλλ 左後ろ回し蹴りだ!! λλλ



「だから効かねって。お前に土産くれてやらぁあ!!」

驚異的な威力を誇るであろうその攻撃も、バイオレットは難なく躱してしまう。
後方へと跳ぶように下がり、そしてテーブルの影へと身体を軽く屈め、
何か・・を拾い上げたのである。片手で。

それが何か、確認する暇も与えないかのように、そのままテンブラーへと投げつける。



「なっ!」



そうである。飛んできたのは……

―θθ 血塗れになった桃毛猿装備の男性ハンター φφ―

既に生気を失ったそのハンターを、テンブラーは素早く横にずれる事で回避する。
そしてハンターはそのまま床に叩きつけられ、重苦しい音を響かせる。



「どうだぁ!? 豪華プレゼントだったろぉ!? これもオマケだぁ!!」

バイオレットは既に息絶えたハンター達を人間としては見ていないのだろう。死体を投げつける事に対して
何の罪悪感も感じさせないような台詞を笑い顔で飛ばしながら、また同じような事を繰り返す。



鋭利な刃物で斬り落とされたであろうハンターの脚部を拾い上げたバイオレットは
面白がるかのように再びテンブラーへと投げ飛ばす。

――それはコーヒージャージーに覆われた脚であり……――

ο 太腿部分が直接曝け出されている事から女性用であると認識出来るが…… ο



「お前い加減しろよ!! ハンター投げて来んじゃねぇよ!!」

それでも直撃すればかなりの打撃を負う事だ。
テンブラーはバイオレットの人権感覚に対して罵声を飛ばしながらも、易々とその脚を回避する。





――■ やはり、ここは即席の規律ルールを破るべきなのか…… ■――

バイオレットの異常な殺人欲に対抗する為には、やはりこの手段しか無いと考えたテンブラーは
紫のスーツの懐から愛用の拳銃を一丁取り出した。



――そして!!――

バァン!



テーブルの影に隠れる事を忘れずに、テンブラーは銃弾の一発をバイオレットに放ったのである。

その後に来る感想はもう想像に難しくない。

「はぁ? やっぱお前はそっち好きかぁ。じゃあおれもそっちに直すわ」



身をずらす事で回避したバイオレットも、やはり男同士の語り合いは銃器に限るだろうと確信し、
両手を交差させるかのように漆黒のロングコートの裏側にそれぞれ腕を忍ばせる。

コートの裏側がどうなっているのかはバイオレットにしか分からないが、
そこから取り出されたものは並の人間なら、まるで魂が抜けたかのように口を開いたままにするしか無くなるだろう。



取り出されたのは……







■◇◇■ 二丁の機関銃シルバーソルジャーズ/WASTE THE HUNTER ■◇◇■

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