――◆◆――

みさなん ほじんつは わしたの さひんくを よんで いだたき ありとがう ごいざます

さかっとは つねに どしくゃの たばちに たって ものたりがを つくる ひうつよが あのるです

たえとば あたなとっにて みすやくても あていとっにて よるとめは かりぎすまか?

いいがと こよのうな しぱっいを おしかて しまう ひとが おいおのが じつでじす

じうぶゅんに ちいうゅを しださくてい これに きづなかい ラーイタは からなず こかうい しまてしう

たんにの きちもに なって ものを かえるがんのは かんんたな こでとは あませりん

わしたは ころこを よむ ほううほを おえしる ことは でませきん あなたちたが かがんえて くさだい

とろこで こぶのんを あたなは つづまずかに さまいごで よむ ことが でましたきか?

                            ――◇◇――







どうでしたか?

人間とは不思議な生き物だと思います。

過去をゆっくりと思い出してみて下さい。

貴方は今まで数え切れないくらいの誤字、脱字を見つけてきたはずです。
貴方が文章を好む性格でしたら、確実にその光景を目にした事があるはずです。

勿論、ここでそれを教えろとは言いません。
ただ、思い出して頂くだけで結構なのです。
どれだけ思い出したか、その量によって勝敗を決めるつもりもありません。

ここで私がお話したいのは、その誤字脱字に直面した時、貴方はそこで立ち止まりましたか?
確かに視覚で訴えられる情報としては、間違いは間違いとして貴方の脳へと伝達されるでしょう。

しかし、貴方はそのまま間違ったままの状態で解釈をしてしまうのですか?
きっと、誤字は誤字でも貴方の頭で正しい読み方を探しながら、読んでいませんでしたか?
僅かなミスであれば、貴方の頭が自動的に正しい読み方を教えてくれる事でしょう。

これは錯覚なのかもしれません。
しかし、この不思議な力に助けられた方々も多いのは、恐らくは事実でしょう。
前後の情景を見れば、人間は不思議と正しい意味を把握する事が出来るのです。



ですが、世の中には限界というものも存在します。
貴方は異世界の存在に突然異言語で話し掛けられた時、普段通りのコミュニケーションを図る事が出来ますか?
そもそも、相手の言った事を理解する事が出来ますか?

無理は言いません。
ですが、世の中には理解出来る者が僅かながら、存在するのかもしれません。
もしそんな人がいたとしたら、貴方は必ずその人から離れないようにして下さい。

その人だけが、貴方にとって重要な情報源となるのですから……







                     ≪≪―― 人知れぬ、真夜中の暗黒世界ナーストレンド…… ――≫≫

                        青い風と香りを流す美少女と……
                           薄緑の龍骨が全てをひざまずかせる異星の屍骨龍……

                         ▼▼ 大丈夫……殺し・・はしないからね? 殺し・・は、ね?

                         ▲▲ノィリヴェラドバピルフィーラッソ……、バフィーラッソ……








「ゼーランディア様〜、やっと来たんですか〜? 遅過ぎですよ〜?」

緑色の服を纏ったポニーテールの少女、メイファは針葉樹の真上に立っている龍の影を見上げながら、
可愛らしく右手を大きく振り続ける。

敬語で接している割に、回りくどく叱責しているように見えるのが少しだけ憎たらしいかもしれない。



『ミリガルビィアイデル……』

針葉樹の上で、その龍人の影を保っている何者かは、この星の言語とは思えないような言葉を呟き、
そして、通常の人間ならばまず行わないような行動を取り始める。



――針葉樹の真上から、飛び降りた……――



一体どれだけの高さがあるのか、分かっているのだろうか。
10m以上は平然と超えるその高さから、ネーデルの目の前を目掛けてそのまま飛び上がりながら、
そのまま重力に従い地面へと迫ってくる。

重力加速も、落ちれば落ちる程尋常では無い値に上昇していき……



ドスゥン!!



やがて、降りてきたのだ。

その緑の混じった白い骨で構成された両脚を大きく開きながら着地時の衝撃を吸収し、
やがてはゆっくりとその骨だけで模られた両脚が伸ばされる。



「はぁ……はぁ……とうとう、来たわね……」

今降りてきた、その無傷で立ち上がったそのゼーランディアの姿を見て、
ネーデルはその穏やかな声を震え上がらせながら、頬から流れ出た汗を指で拭った。

もう流れる風だけではネーデルの緊張の汗を涼しさで消す事は不可能だろう。
それだけ、目の前に降りてきた幹部が恐ろしいのだ。










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1111101ガイケ0110110011011111110110トクチョ0101001101010メノイ10101011101100000000ドウタイ011011001100101101100トウ01111
01101001ヘンカンチュ1001001コウシンチュ010010ウ0100010コウシンチュウ10011101001100ヘンカンチュウ011010010000000コード01001010カンリヨ01

010人種01000101010体色100110100外見001010101010Creature Type100110Blood color10111011
11011サンプル10100010101データ101010100100000身体構造1011111001異星生物1001010011001



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                    COMPLETE!!

                           TRANSFORMATION!!



でーたノヘンカンヲカンリョウイタシマシタ
タダイマヨリ、アノイセイブツノでーたヲヒョウジイタシマス

ショウショウオマチクダサイマセ



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      ◆ψψδδ◆ ALIEN’Sエイリアンズ PROFILEプロファイル ◆δδψψ◆



  DATA.T ANOTHERアナザー PLANET’Sプラネッツ FORMATIONフォーメーション

骨格だけを見れば、この星の人間と大差は無い可能性がある。
恐らくは出身の惑星で人間の姿を真似て、この形態を取っているという予測すら出来てしまう。

但し、頭部だけは人間とはかけ離れた風采ふうさいをしているのは事実だろう。

龍のように、口部が突き出ており、異型を思わせるには充分な迫力だ。
骨だけの頭部であっても、そのまま相手を噛み締め、砕いてしまう様子を連想させる。
その鋭く並んでいる牙も、龍ならではの鋭さを提供する。

後頭部からは3本の角が背後に向かって伸びており、人間にとっての頭髪の役割を負う重要な存在だ。
先端部に進むに従い細くなっていく形状はこの星と近似しているが、突き刺す為の鋭利状態では無いだろう。

その龍の眼窩がんかに埋められてるのは、深青の魔眼ダーク・ブルーアイズではあるが、それは眼と表現するよりは、
そこで青く灯っていると表現した方が相応しいのかもしれない。
暗い色でありながら、その夜中の空間で恐ろしい程にはっきりと光が見えているのが禍々しい。

   BONE DATA…… 頭蓋骨とうがいこつ ββ ossa cerebralia

   BONE DATA…… 側頭骨そくとうこつ σσ Temporal bone

   BONE DATA…… 篩骨しこつ σσ ethmoid bone

   BONE DATA…… 涙骨るいこつ σσ lacrimal bone

   BONE DATA…… 鋤骨じょこつ σσ vomer

   BONE DATA…… 頚椎けいつい σσ cervical spine

   BONE DATA…… 脊椎せきつい σσ vertebrae sacrales

   BONE DATA…… 肋骨ろっこつ σσ costae

   BONE DATA…… 橈骨とうこつ σσ radius

   BONE DATA…… 尺骨しゃっこつ σσ ulna

   BONE DATA…… 大腿骨だいたいこつ σσ thigh bone

   BONE DATA…… 中節骨ちゅうせつこつ σσ phalanx media



                                                etc……



  DATA.U NOノー VISCERAヴィッサラー NOノー MUSCLEマッスル

骨で構成されているという事は、その外側は皮膚や鱗等で一切覆われていない事になる。
皮膚が無ければ今度は筋肉や血管の組織が剥き出しになっていると連想する事が出来るが、それも一切存在しない。

まさに骨だけで作られたその身体であるが、その内部に存在するはずである内臓すらも一切存在しない。
動力源が体内に存在しないその異型の龍型の生命体の姿は、人間でいう筋肉質な大男から放たれるような力強いオーラは無かった。
もしあるとすれば、その身長であるかもしれないが……

因みに、衣服としての役割を負っているのは、骨の色と比べるとやや濃い緑の布切れのようなものであるが、
それを襷掛たすきがけのように纏っているのだ。



       POSITIONポジション OFオブ POWERパワー SOURCEソース /// /// UNKNOWNアンノウン……

         ――動力源の位置の読み取りは不可です。不明な情報として処理します――



  DATA.V COMPAREコンペア THE ALIENエイリアン WITHウィズ THE GIRLガール

    ――BARRIER!!――  ――BARRIER!!――  ――BARRIER!!――  ――BARRIER!!――

データの受信中に不意の電波障害が入りました。しばらくは障害の除去に取り掛かります。
作業の間、再び本編に戻ります。もうしばらくお待ち下さいませ。
除去が終わり次第、再度データを掲載致します。








      ◆◆ηη RESTARTリスタート!! STORYストーリー INイン THE MIDNIGHTミッドナイト!! ηη◆◆





『ナィリベラリケルバイト……。アシュガラパイト……トラアィ・・・・……』

淡い緑を塗った白の龍骨を持ったゼーランディアは、充分に距離の離れている青い服のネーデルにゆっくりと近づいていく。
龍をイメージさせる頭部に影響されてなのか、その両手の骨の作りも人間と比較すると、指が3本である事さえ除けば、
太くそして力強い印象を与えるその両手を特に握り締める事も無く、特に攻撃を加える様子は見えない。

その理解し難い言葉を言い切るなり、ピタリとその骨だけで構成されたもろそうな両脚を止める。
ネーデルやメイファよりも細い脚をしているが、骨だけという事情を考えると羨ましさよりも気味悪さが伝わってくる。



――しかし、ネーデルはその場から一歩も下がらず……――



「メイファの説明は駄目だったわ。貴方が言う程盛り上がる事だって無かったし、っていうかまともな話には成ってなかったわ」

きっとゼーランディアからはメイファと盛り上がっていたのか? とでも言われたのかもしれない。

距離は充分に取っているというのに、ネーデルはまるですぐ目の前に身長差の激しい相手が立っているかのような
上目遣いでその距離を取って立っている異型の生命体に向かって返答をする。

両手の拳は強く握られ、腕の関節も僅かながら曲げられている。



――腕を組んだゼーランディアも……――



『チャベリゴーレルブリパィレブト』

ゼーランディアの背後で、木の幹に寄りかかっているメイファを一瞥しながら、文字通り見下ろした視線で小柄なネーデルに言った。
ネーデルを見下ろすその暗い青の眼は、感情すらも上手く表現せずに灯り続けている。

「当然じゃない? 仲間同士だったらしっかりと目的は共有しないといけないのに、メイファは幹部としてはまだまだ子供だっていう事よ。でもやっぱり貴方は分かってるみたいね、分かってるなら、もっと部下にはしっかりしつけしなさい」

そのゼーランディアの古代言語でも無い異世界の言語に対し、ネーデルは今まで普通に人間同士で会話をしている時のように、
無駄な間を置かず、すぐに自分の意見を鋭く、そして冷静に述べる。

同じ所属として動いているメイファがどうして組織の真の目的の理解を曖昧にしてしまっているのか、
等と、ネーデルはその鋭い知能を見せるかのように、ゼーランディアに対して赤いその瞳を強く向け続ける。



――だが、見下された少女はと言うと……――



木の幹から背中を離してすぐにゼーランディアの隣にまでズカズカと進み、
ネーデルに向かって乱暴に指を差しながら怒鳴りだす。



「ってネーデル! あんた誰に向かって子供だって言ってんのよ!? しかも躾とか……あんた随分ワタシの事見下してるみたいねぇ! そういうあんたこそワタシにパン―」
ゾリグェダラアペン!!



――ゼーランディアに手で払い除けられる……――



その3本しか無い左手で前に突き進もうとしていたメイファの身体を後ろへと押し戻す。
身長差があまりにも激しく、そのゼーランディアの手を持ち上げなくても、素の状態でもメイファの胴体に接する程である。

例えるなら、大柄な成人男性と幼児ぐらいの差は余裕であるだろう。



「……分かりましたよ……、ふん、この貧乳!」

きっとゼーランディアに『めろ』とでも言われたのだろう。
いちいち時間を無駄にする事で仲間――上司とでも言うべきか?――に迷惑をかけてしまうと感じたメイファは、
未だに自分自身の障害となっているゼーランディアの左手をどかし、そしてネーデルに1発悪口を飛ばす。

「なっ……! で、でもそうやってすぐ怒る所が子供よね?」

言われたネーデルは、その青い服の内側から小さく膨らんでいる自分の分身には目を向けず、
込み上げてくる感情を何とか抑えながらメイファの欠点を口に出す。



「ふん、そういうあんたこそゼーランディア様の事さっきまで怖がってたくせにいきなりゼーランディア様頼るんだぁ? 変なねぇ」

今一そのネーデルの台詞の後に今のこの台詞を言う関連性が掴めない可能性があるが、
それでもメイファは何としてでも相手の少女に言い返したかったのだろう。

ただ、今現在はメイファよりゼーランディアの方に意識が行っているから、ネーデルの態度にも腹が立ったのかもしれない。
まるで自分が放置されているかのような状況が嫌だったのだろう。

『カルパライラ……』

左を向いたゼーランディアは、まるで我侭を言って聞かない子供を落ち着かせるかのように、
やや強引に左手でメイファを横に向かって押し出し、再度木の幹に背中を預けさせる。



――そして、ゼーランディアは再びネーデルへと向き直る――



『ミーケンロァベラッカポッベリブリベルヴァドレス。ジャスレロッパユペリラン』

人間とは異なるその骨だけの容姿であるから、ゼーランディアの表情はいつも見えない状態である。
その灯るような深青しんせいの魔眼の動きを見るとややその感情を読み取る事が辛うじて出来るが、きっと完全には無理だろう。

だが、僅かながらその魔眼が細くなったように感じられた。

「へぇ、そうなの……。わたしから見たら飛竜なんてそこまで執着する必要無い存在だとは思うけど? 貴方のような宇宙人にとって珍しくても、そこまで至高な力なんて無いわよ」

どうやらこの星以外の生命体にとって、飛竜は神秘な存在として、検分するのに充分過ぎる程の価値を持つものとして意識されているようだ。
ネーデルはその価値観の違いから僅かに首を傾げるが、何だか気分が落ち着かない気分を覚え続けている。



『ヤシュヴェイリン?』

ネーデルと比較しても1mぐらいの身長差はあるゼーランディアは、随分と背の低いネーデルを見下ろし続けながら、
疑問系を思わせる異世界言語を放つ。

他の惑星の生物の特徴なのか、その声色は野太く、そして反響エコーすらも含まれているが、僅かに女性の色合いも含めている。

「それくらい他所よその惑星の人より分かってるに決まってるでしょ? 普通自分の星の事は自分が一番分かってるはずよ?」

一体ゼーランディアは何とネーデルに言ったのだろうか。
それでも、ネーデルは飛竜に関する知識を誇り、その部分についてはゼーランディアに譲る様子を見せなかった。

いつの間にか、今まで流れていた冷たい夜風は止んでいた。



『ロジティビクレバレガォ』

常人であれば、どんなに短文であってもまず解読不可能な言語を相変わらず飛ばすゼーランディアであるが、
突然ゆっくりと両手を肋骨むねの前にまで持ち上げる。

「……どういう意味よ?」

この星の知識は充分であるだろうネーデルにまるで歯向かうような態度でも取ってきたからなのか、
ゼーランディアに対してネーデルは、これから飛んでくる可能性のある反論にまるで覚悟を決めるかのように、一度呼吸を整える。



『ガーバンディズベロッカ』

今度はその持ち上げた両手の間に、片手で持ち上げられる程度だと思われる非常に小規模な竜巻を作り上げ、
その竜巻を左右に引き伸ばすかのように、ゼーランディアは両手をそれぞれ外側に動かした。



――うっすらと黄色を帯びた半透明の小型の立方体フロートキューブがゼーランディアの目の前に現れ……――

――不規則な方向に軸回転をしながら徐々にゼーランディアの身長と同じサイズとなる……――

――意図したサイズになると同時に、不規則回転も停止する……――

――その黄色い空間の中に、1頭の翼を開いた飛竜が映される……――



「ご親切にどうも。丁寧に説明して下さるなんて」

大きな立方体の中に映し出される飛竜の立体映像ホログラムを見ながら、ネーデルは左の耳にかかっていた青い髪を指だけでどかす。
風の影響だったのかもしれないが、指で払い除けた事により、再び髪の間から耳が食み出ている状態となる。



『フフェイレオボロベンツィヴィスペート』

その一応の感謝を携えた挨拶に対して返答をしたのかどうかは一切不明であるが、
ゼーランディアはその黄色の空間を自分の右に持っていくかのように、骨だけで作られた右腕で空間をずらすように動かす。
ただ、腕を動かしてから、僅かにテンポが遅れてその空間が動いていた為、物理的に触れて動かしたとは考えにくい。

しかし、そんな中で、立体映像ホログラムの飛竜にも変化が訪れていた。



――飛竜の胴体部分だけが拡大表示され……――



――体内から球体のようなものと、血管が抜き出され……――



――説明文らしき記号の羅列が、その今抜き出されたものと直線で結び付けられる……――



――無論、その記号は人間ならば読めないはずだが……――



「体液? それに紅玉? そんなのただの体内物質でしょ? 確かに飛竜学者による研究は常にされてるけど、貴方はどういう見方してるの?」

立体映像ホログラムの飛竜から検出されたデータを目視したネーデルは、
それらが特別な力を持っている訳では無く、偶然体内で生成されているだけの存在であると口に出した。

因みに、その立体映像ホログラムはうっすらと光を放っている為、夜中の空間であっても鮮明に内部を映し出す事が出来る。



『ジリペィカイラァント。ナプラポスリクリィベン……』

すると、今度はゼーランディアは一瞬だけ右手を捻るように動かすなり、飛竜の体液と紅玉を表しているであろう映像の隣に
更に大量の記号の羅列を表示させる。

当然ではあるが、それは通常の人間が読み取れるようなものでは無い。

「詳細なデータをわざわざありがとう。だけどその数字みたいなの表してるそれって一体どんな意味示してるの?」

ネーデルはその線と線が絡み合ったような複雑な羅列をまるで正確に読み取るかのように赤い瞳を集中させている。
だが、読み取れていても、意味自体を理解する事は出来なかったから、立体映像ホログラムを見続けながら、問う。



『ベェンコライチェファティローパイラメスファロ』

そして、人間が親指を立てるかのように、右腕の3本しか無い指の、順手の状態で見て最も内側に位置する太めで尖った指を立て、
自分の首を切るようの左へと動かした。

それに連携するかのように、立体映像ホログラムに映っていたその数字を表しているであろう線と線の記号が拡大表示され、
ややゆっくりと、更なる記号の羅列が下から上へと流れ始める。
しかし、常人であれば見れば見る程頭が痛くなるような内容だ。

「神通力? なんかそっちの世界じゃあ随分飛竜って大袈裟なのねぇ。だけど、それだけの為にわざわざあの組織に加わるなんて……ホントの目的は違うんじゃない?」

一体ネーデルはどのような教育や指導、教練を受けていたのだろうか。

その意味不明な羅列の中から特に気になるポイントを見つけたのだろう。
冷たい夜風を浴びながら、違う世界での飛竜の見られ方について少しだけ自分なりの想像を立ててみる。

だが、その力を狙うだけならわざわざ組織に加わる必要性があったのかとも、疑問に感じてしまう。



『ケンベェラ……。ワシュマィカーレキュロルボァレスクロェ……』

一度立体映像ホログラムを放置するかのように、一歩だけ前に出るなり、夜空を一瞬見上げてそう言った。
夜風の冷たさはゼーランディアにとって、どのように伝わっているのだろうか。

「へぇ……そう……。アイブレム様の考えだから貴方はよく分かんないと……。そう言えば、わたしの母さんが貴方にわたしを連れ戻す事を依頼したみたいだけど、貴方はわたしなんかに興味無いはずなのに、なんでそこまで積極的なのよ?」

きっと、メイファの言っていた最高司令官の名前をネーデルは聞き取ったのだろう。

ネーデルはその場から一歩も進まず、そして下がらずの状態で、自分の母親の話を持ち出した。
この後、ネーデルは捕まってしまう可能性があるのかもしれないが、捕まえようとする理由を知りたかったのだ。



『チェプクァシグレィ……。ビースィゴルァソォ……』

ゼーランディアは話の流れが切り替えられた事を悟ったからか、今まで表示状態だった立体映像ホログラムを閉鎖させる。

右に向かってゆっくりと伸ばされた右手が握られると同時に、その立方体は縮むように小さくなり、やがて消滅する。
きっと表示させようが消滅させようが、ゼーランディアの思うがままなのだろう。

「ヴェパールだったの、貴方に依頼したのって。じゃあメイファはまたちゃんと人の話聞いてなかっただけなのね……」

しかし、立方体を消滅させながら話していた内容は、誰に依頼をされたか、というものである。
ネーデルは消えていく立方体に興味を向けず、真剣に話だけを聞いており、そこで1人の女性の姿が頭に浮かんだ。



――
白い装束と、真っ黒な目玉の不気味な女……――



「ネーデルってさあ、そうやって地味〜に人とがめるの好きなのね〜」
ジォン!!



メイファは軽い口調を飛ばしながらも、実質的には苛々しているからなのか、右手に赤い稲妻のような光を弾けさせながら
木の幹から背中を離すが、その後の行動から予測される事態を意識してなのか、
ゼーランディアは一般人にとってはあまりにも短過ぎる一声でメイファを払い除ける。

しかし、その短過ぎる単語には色々な意味が含まれていそうである。



「……はいはい、分かりましたよ〜」

諦めたのか、メイファは右手に溜めていた妙な光をゆっくりと消滅させる。
そして、先程とほぼ同じ状態で、背中を木の幹へと預ける。

その濃度の強い緑の服は風を受けても殆ど揺れる事は無かった。



『ナデューヨスティロカンゼィード……。アラピラィクネデァライマイジ』

夜中のこの木々に囲まれた空間の中で、ゼーランディアの青の魔眼がより一層輝いた。
その異様な身長の中で、まるでそびえ立つ灯台を一瞬連想させてくれた。

「……交換条件、ね……。貴方が人間の死体を集める理由なんて……別にいいわ……」

どうやらゼーランディアはヴェパールと1つの契約を交わしたらしい。
しかし、ネーデルにとってはその詳しい理由を聞くつもりは無かったらしい。

と言うよりは、聞きたくなかったようにも見えてくる。

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