Fascination N−D−File スペクトラム拡散

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情報理論(電気・電子系教科書シリーズ)


情報理論のエッセンス


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―量子情報理論が解読する、宇宙という驚くべき暗号 (単行本)

スペクトラム拡散(スペクトラムかくさん、SS:Spread Spectrum)は、通信の信号を本来よりも広い帯域に拡散して通信する技術。無線通信に多く用いられる。スペクトル拡散周波数拡散とも言う。

スペクトラム拡散の代表的な方式には、周波数ホッピングと、直接シーケンス(直接拡散)とがあり、いずれもノイズ(雑音、干渉)に強く、秘匿性に優れるとされている。

CDMA方式の携帯電話や、無線LAN(IEEE 802.11シリーズ)・無線アクセスなどに用いられている。 なお、電子デバイスのクロック発生に用いられるスペクトラム拡散は、クロック信号に対して意図的にジッターを加え、電波障害の原因となる特定周波数へのエネルギー集中を緩和し、妨害を軽減する物である。本質的には通信で使われている技術と同質である。

 なお、「スペクトル拡散」とはただ単に「通信方法」ではなく、「情報の処理方法」についての原理である。従って、「スペクトル拡散」の原理はさまざまな分野に応用可能である。たとえば「画像のデジタル処理」などの場合にも、「ある情報をスペクトル拡散の原理(特に、「直接シーケンス」方式)により処理し、目で見てもわからない、画像の色調などの変化として画像の中に「封入」する」ことが可能である。「スペクトル拡散」の原理の具体的な応用範囲は機微な情報に属するため各自、研究、推測されたい。

周波数ホッピング

周波数ホッピング(しゅうはすう〜、FH:Frequency-Hopping)は、周波数を一定の規則に従い高速に切り替え、送受信機間で通信を行う、スペクトラム拡散の一方式。周波数ホッピング・スペクトラム拡散(FHSS:Frequency Hopping Spread Spectrum) とも言う。

送信側と受信側でホッピング・シーケンスと呼ぶ一定の規則を規定し、それに従って一定の通信帯域の中で高速に通信周波数を切り替えて、通信を行う。通信用帯域の一部にノイズが局在した場合でも、高速に周波数切替をするおかげで実際に妨害を受ける確率は低減される。よってノイズに強いとされ、またホッピング・シーケンスが分からなければ通信を傍受しにくいため、ある程度は通信の秘匿性にも優れているとされる。

無線局ごとに異なるホッピング・シーケンスを適用すると、多重通信が可能となる。

尚、この技術の基礎的発明は女優のヘディ・ラマールと音楽家のジョージ・アンタイルによってなされた。

直接シーケンス

直接シーケンス直接拡散(ちょくせつ〜、ちょくせつかくさん、DS:Direct Sequence)は、拡散符号により本来よりも広い帯域にエネルギーを拡散して通信する、スペクトラム拡散の一方式。直接シーケンス・スペクトラム拡散直接スペクトラム拡散(DSSS:Direct Sequence Spread Spectrum) とも言う。

送信側で元の信号に対して拡散符号による演算を行い、本来よりも広い帯域にエネルギーを拡散して、送信する。受信側では、送信側と同一の拡散符号を用いた演算により、広がった帯域を集約して元の信号を復元する。通信用帯域の一部にノイズが局在した場合でも、その影響も拡散されるためノイズに強いとされ、また拡散符号が分からなければ通信を傍受できない(単純な受信機だと出力レベルの上がったノイズにしか聞こえない)ため、通信の秘匿性にも優れているとされる。

無線局ごとに異なる拡散符号を適用すると、多重通信が可能となる。(符号分割多元接続)


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