―Ж▼ 暴走破壊集団/RIOT ▼Ж―



「沈んじまえよぉおお!! ハンター無しじゃなんも出来ねぇこんな街よぉ!!!」

分かれ道の都合上、何台か減る事になるが、それでも男達の威勢が失われる事は無い。

ハンターによってアーカサスこの街は非常に大きな発展を遂げているものの、
裏を返せばハンターがいなければここまで見事な成長はしなかったと言う事だろう。

まるでハンター以外の一般人が街の発展に何一つ貢献こうけんしていないかのように
悦楽を混ぜて怒鳴り散らしながら、再び火炎瓶を投擲してみせる。



ц だが、なぜわざわざそんな事言う必要が……



「っつうかハンターいようがこっちにゃあカンケーねぇんだよ!!!」

別の乗車した男も最初に叫んだ男に続くかのように、叫び狂う。
やはり火炎瓶とバンダナマスクで武装した彼らにとっては、
ハンターも対した危険人物インヴェイドナイトにはならないのだろう。

ってかこの言葉を発する原因になったのは、



λ 鉱石の装備の男三人組……

白に近い金色の分厚い防具を纏った男三人が、投げられた一つの火炎瓶の餌食となる。

「うわっ! わぁああああ!!」
「あち! あちぃいいい!!」
「やめろぉおおお!!」




顔面を隠したヘルムの影響で直接その苦痛に満ちた表情を窺い知る事は出来ないが、
叫ぶ声色を見れば、どれだけの痛みを味わっているかがすぐ分かる。

全身を隙無く守られたとは言え、熱を遮断する事は容易い事では無い。
立ち上がる炎が武具の内部にいる人間をじっくりと焼き始める。



「いい気味だぜぇえ!! 狩るしか能ねぇ脳味噌筋肉どもがよぉおお!!」

ρ 炎に苦しむ三人組トリオ ρ

彼らに対して右の中指を立て『死ね』のサインを送りながら怒鳴った後、再び投擲体勢に戻り、
他の仲間と共に、別のハンターや、一般人目掛けて火炎瓶を投げ飛ばす。



■◆◆ 最早、やりたい放題だ……/BOMBS AWAY ◆◆■



駆動車小型トラックの速度は人間の足ヒューマンズパーツとは比べ物にならないくらい、速い。
軽々と周囲の人々の姿が新しく更新され、同時にターゲットも新しくなる。



―◆ そして、相変わらず投擲とうてきされ続ける火炎瓶の数々……



火炎瓶ボトルが持つ汚濁で強烈な印象とは対照的な、華麗な山を描きながら、建物と建物に挟まれた空間を舞う。
しかし、その華麗さをのんびりと眺められる時間は一抹なものであり、そして、芸術作品のように評価する評論家もまず存在しない事だ。
これは愚作なのだから。

――等と下らない呟きを飛ばしている間に……

駆動車の後ろを見れば分かる通り、まるで足跡のように
炎が残り、それに巻き込まれたものが如何なる痛手ダメージ、そして最期ラストを見たかが伺える。



ω 建物が焼かれスローダウン人間も炎の餌食にイロージョン! ω



◆ё◆ 小型科学兵器とは言え、侮るな!/TECHNOLOGICAL REVERSE! ◆ё◆

一般人か、ハンターかはもう炎の前にとってはまるで関係無い話。
邪魔な人間やろうは灼熱にやられてしまえばいいのだ。

建物も、対象外とは言えない。
人間どもと同じく、炎に触れれば軽々と包み込まれるのだ。
そして時間と共に黒く染められ始めるのだ。

長い月日を経て建設された建物も、火炎瓶を前にすれば、ただ壊されるだけの儚い存在スクラップと化してしまう。

炎を纏った建造物には人は近寄れない。その時点でもう機能を失っていると言えるだろう。



巻き込まれていく一般人、そしてハンター達。

ハンターに至っては背中に武器を携えていると言うのに、
普段飛竜と戦っている時のような勇ましさを見せる前に
重症ケガを負ってしまうのだ。



я やはり、駆動車相手に攻撃すら仕掛けられないのか? я

いや、距離があるから攻撃出来ないと言う言い訳をするのなら、
ボウガンや弓を持ったハンターはどうなるだろうか?

彼らなら充分反撃出来るはずだ。

だが、実際、出来ていない。

それは、彼らが単なるお遊びで投擲しているのでは無く、プロの壊し屋キラーだからこそ、
遠距離からの予想外の攻撃を受ける事無く、自分自身の攻撃だけを的確に成功させるのだ。



Э さて、分かれた他の者達も今頃破壊活動パラダイスを楽しんでいるのだろうか? Э

今この道を走っている駆動車も恐ろしい程に炎を撒き散らしているのだから、
他の場所でも恐ろしい程に燃え上がっている事に疑いの余地は無いだろう。



「死ねやぁ!! この腐れ原始人どもの寄せ集めがぁあ!!!!!」
「竜殺す事しか考えらんねぇのかぁああああ!!!」


どれだけの力を喉に提供しているのだろうか。
はたから見ればそろそろ声に損傷をきたしてもおかしくないだろうと考えるに違いない。

それとも、彼らの体力スタミナが相当なものなのか、それは彼らにしか分からない。



車両の前部の操縦座席に座っている運転手ドライバーは背後の投擲手フレイマーズに破壊活動を託し、
これからどこへ向かおうか考えている。

住宅街を狙うか、それともこの繁華街を襲い続けるか、手っ取り早くハンターズギルドに襲撃をかけるか……。
いずれにしても脅威である事になんら変わりは無い。

邪魔な建物があれば焼き尽くせばいいだけの話。
邪魔な人間がいれば焼殺しょうさつすればいいだけの話。

色々と考えながら加速装置アクセルを踏み込ませ続け、
無様に逃げ惑う人間どもを窓越しに眺め、バンダナマスクの裏でにやける。



―ヒュン……



――車内には聞こえないが、外からだと確実に聞こえる風斬り音……



「あぁ?」

運転手ドライバーはすぐにその音を発している正体を理解する。
音は聞こえなくとも、実物が迫れば音を気にする必要は無いのだ。



ч 鉄製の刃物アイアンブレードが飛んでくる…… ч

――空中で横に回転し

――そのまま駆動車のフロントガラスへ……



「わぁ!!」

―バン!!

元々防弾か何かの特殊な仕様が施されている為か、
完全に割れるとまではいかなかったが、投げられた刃自体の強度が高かった為か、
まるで木造の壁にでもぶつかったかのように刺さり、周囲にひびを入れてみせる。

「あんにゃろう!!」

どうやら、ただ刃だけが勝手に飛んできた訳では無かったようである。
まるで、誰かを恨むかのように舌打ちをしながら、二度、警笛クラクションを鳴らし、
荷台の仲間に合図を送った後にブレーキをかける。



―◆◆ 今、駆動車の前を何かが横切った…… ◆◆―



完全に停止したのを確認すると、運転手ドライバーはドアを開いて外に出るなり、荷台に乗っている仲間に声をかける。

「なあ、今変な奴見なかったか? 車ん前横切った馬鹿いたんだが」

バンダナマスクのせいで相変わらず表情をよく見る事は出来ないが、
仲間に対しての言葉である為、敵対心を表現するような顔つきはしていないとは思うが、
相変わらず声色だけは威圧的である。

「やっぱお前も見てたのか。どうりで止まりだしたと思ったぜ」

荷台から降りた投擲手フレイマーの男の一人がまるで停車した理由を全て把握しているかのように、
道の脇を指差しながら、ドライバーに近づく。

「そいつならあそこに逃げ込んだぜ」

別の荷台に乗っていた男が道の脇にある建物の間を指差しながら、仲間達に伝える。

「派手な事する割にゃあ随分臆病腰じゃねぇか。ちょっと甚振いたぶってやるか」



――あれだけ派手に投げてきたのだから、報讐を受けるのは当たり前の事か……――



バンダナマスクを被った男達は始末する対象が一人だと言う事を分かっている為か、
手ぶらで建物の間へとぞろぞろを足を運び、誰が停車させる原因を作ったのか、それを確認する為に進んでいく。

「何そんなとこで突っ立ってんだよ? あぁ?」

意外とあっさりと見つかったのである。この空間は建物の間とは言え、なかなかの広さがあり、
男達が並んで歩いても大して気になるような狭さでは無い。

その場所で、一人の人間が壁に寄りかかり、特に怖がった様子も見せずにいた。
最も、派手に刃物を投げ飛ばしてきた身なのだから、それなりの度胸は持ち合わせているのだとは思うが。



▼▲ 黄色い病衣に、暗い赤のジャケットを着た……



「随分派手に破壊活動してるみたいじゃない。いい気なもんね」

高いトーンが特徴的な声色から、恐らく少女だろうが、
それにしては怖がる様子を一切見せ付けない所がある意味怖い。

男達に多少恐れたりはしないのだろうか?

「てめぇだよなぁ? 俺らん車にあんなデケェ剣みてぇなもん飛ばしたアホっつうのは」

男の内の一人がズボンの両側のポケットにそれぞれ手を突っ込みながら、
まるで抵抗も出来ない弱者から恐喝かつあげでもするかのように、ゆっくりと近づく。



「ご名答めぇとぉ〜♪ ってな訳でもうこんな馬鹿みたいに騒ぐのやめてくれる? ハッキリ言って迷惑なんだけど?」

少女は最初だけ、元々高いトーンを更に上げ、潜在されていた別の可愛らしさを極限にまで強調させるかのように
ふざけた感じも混ぜて刃物を投げた犯人が自分自身であると教えた後、
まるでそのふざけが嘘だったかのように、真剣な口調へと戻り、そして軽蔑の意味まで覗かせる。

「そんな口叩いていいのかぁ? そんな病院から抜け出した格好なんかしてよぉ、弱った身体もっと傷つく事なっぜ?」

病衣を纏っている時点でここに来る前は病院にいたと言う事は、男にも分かっている事だったのだろう。
だとしたら、なんかかんかで本来の力を完全には出し切る事は出来ないだろうと考え、何故か余計に強がり始める。



「へぇ、どうなっちゃうのよあたし? それと、なんで病院にいたか、そこもっと究明しようとか考えない訳?」

男の威圧感にも負けず、少女らしき人物は壁から背中を離し、腕を組み始める。



――態度に耐え兼ねた男はと言うと……――



「無礼てっと殺すぞ!!」



▼▼ 洗礼として飛ばされる右腕からの拳……



「だから当たんない……」

一瞬、少女の頭の中であまりにもマンネリズムワンパターンな光景が浮かぶが、
黙っていてはそのありがちな攻撃をまともに受けてしまう。

軽く喉の奥から笑いを零しながら、軽々と、いつものように左へと避けてパンチを回避し、

そして……



「っつの!!」



掛け声と共に放たれた膝蹴りは、一撃で男の動きを停止させる。

「うぐっ!」

両目がまるで肥大化するかのように力を入れられ、そしてそのまま苦しさのあまり、地面へと沈む。

「そう言えばさっきからあんたらハンターが馬鹿だの能無しだの好き放題言ってたみたいだけど、そんならここにいるあたしの事倒してから言ってくれる? こう見えてもあたしハンターだし、流石に馬鹿にされて黙ってる訳にもいかないからさあ」

地面に崩れた男を捨て置き、少女は自分自身に指を差しながら、挑発してみせる。
きっとその中には自分自身の地位でもある『狩人ハンター』と言うものをけがされた事に対する怒りも
混じっている事だろう。

少なくとも、この少女の力量なら、力と力のぶつかり合いも難なくこなせる事だ。



「ふん、今のだってどうせまぐれだろ? とっとと終わらせてやっぜ!!」
私刑リンチかましてやっぞゴラ!!」
「ついでに犯してやっか女ぁ!!」



――そして、一気に攻め込まれる……――



「来たわね!」

■■ 少女は、素早く構え……ARE YOU READY? ■□□

□□ 迎撃に入る!ATTACK!       □■■



「おらぁ!!」

最初の一人目アタッカーが良いがたいを生かした一撃を見せてくれる。



――まずは、下からの突き上げアッパーだ――



少女は単純スタンダードに横に避け、右手で手刀しゅとうを作る。
そして手早く男の首筋を狙う。

「はぁ!」

短く、そして鋭く響く少女の気合。



――それは、力強く、筋肉に溢れているであろう首へとめり込む



「う゛あっ!」

倒れこそしなかったものの、一時的に動きを止めるには充分な威力だ。

▲◆ 横から迫る威圧的な気配……

「落ちろやぁ!!」



――少女の顔元に飛んでくる男の脚部!――



「ふっ!」

咄嗟に、そして同時に的確に両腕を上手く使って衝撃を最小限に抑え、
男の足を地面に戻す間も与えず、少女は……



――横蹴りを二連、食らわす!――



「うえっ!」

同じ足で蹴り払われた男の呻きを無視した少女は
今度は同じく横にして反対側から飛んでくる拳に神経を集中させる。

「おらぁ!!」



――気合と共にやってくる拳……――



――だが、真後ろからも……――



「ふっ!」

横から迫る攻撃こぶしは回避出来たのだが……

真後ろのこれ・・だけは……



「死ねぇ!!」



――これが、真後ろからのあれ・・である……――



「うぐっ!」

少女は背後からの攻撃に対して一瞬反応が遅れ、顔を横殴りにされてしまう。
勿論、男の言葉通り、死ぬ事も、倒れる事も無かったが、相当痛い一撃だっただろう。

その攻撃に少女は一瞬だけふらつくが、男どもはそれを好機チャンスと見たのか、
更に畳み掛けようと接近するが、少女としては一瞬の出来事に過ぎなかった。

「今だ! やっちまえ!」



――目に力を入れながら走り寄ってくるが……――



「負けるか……」

少女は一度呟き、



「っつの!!」



――男の首筋を足で力強く叩きつける!!――



広い空間だからこそ、足を思いっきり伸ばせたのだろう。
大きく外から攻めて来た右足によって男の一人が倒され……



――続いて、顔面パンチストレート!!――



「はぁあ!!」

少女は別の男に向かって、気合と共に真っ直ぐ突き出した右腕をバンダナマスクで覆われた男の顔面を吹っ飛ばす。
男の方も拳による攻撃を仕掛けようとしていたが、少女の方が早かった。



――そしてまた背後から……――



顔面を攻撃されて痛がりながらよろめく男から意識を離し、少女の後ろから狙ってくる男に意識を注ぐ。

「このやろ!!」

男は自分達が押され気味である事に気付き始めたのか、焦りを見せてくる。
台詞に暴力的な印象を乗せ、同じく台詞だけで少女に威圧感を飛ばそうとするも、それはこの少女・・・・に対してはほぼ無意味だ。



――少女は一度軽くしゃがみ込み……――



――下から蹴り上げる!――



「とぅあっ!!」

慣れない掛け声と共にあげられた左足は男の顎に直撃し、まるでアッパーのような様子を見せつけてくれる。
まだまだ周囲の連中がくたばる様子は無いものの、それでも流石にここにずっと長居する訳にもいかない。



「早く皆に会わないと……」

少女はこの街のどこかにいるであろう自分の仲間を思い浮かべ、
バンダナマスクを被った荒くれた連中を放置するかのようにその場から離れようと、足を走らせる。

「つっ……てめ、待てやコラ!」

負けっぱなしなのが気に入らなかったのだろう。
きちんとこの少女を叩きのめしたかったに違いは無いが、叶わぬ願いと化してしまう状況になろうとしていた為、
男の一人が呼び止める。

痛がりながらも、右手を伸ばしながら。

「悪いわね、あたしもここで遊んでる暇なんて無いのよ。友達に会わなきゃなんないし」



少女は暗い赤のジャケットを軽く正しながら振り向く。

「このまま俺らが黙って返すと思ってんのか?」

まだ強がっているのだろうか。男はバンダナマスクの裏で怒りの表情を作りながら
少女に楯突たてつこうとする。

「いや、別にあんたらなんてあたしちっとも怖いとか思ってないし、それにあんたらからじゃあこの状況・・・・ちゃんと聞けそうも無いから、別当たる事にしたって訳。そんじゃ、あれ借りてくから」

少女は男達をまるで自分の敵として認識している様子は無く、
一度殴られたと言うのにそれもまるで嘘だったかのような涼しげな表情を見せ付ける。

そして、勝手に話を進めながら例の物に指差し、この建物の間の空間から出ようとする。



μ 例の物・・・とは、四輪駆動車小型トラックである…… μ



少女の背後にいる男達が気になるのか、多少駆け足気味になっているが、
それは男達だけの為に時間を使う訳にもいかず、
それに数が多すぎては情報を聞き出すにも何かと面倒が生じてしまう。
だからこそ別に当たろうとしたのかもしれない。



――そして……――



α ショートカットの緑色の髪が特徴的な……

β この少女は……






δ ミレイである……

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