遂に初会 希求の獣人ミート・キャット/ライブリー・オア・グルーミー

今回の会うべき相手は、やはり、猫人の真似をした人間では無かった。
当たり前と言えば当たり前であるかもしれないが、
猫人そのものだったのだ。

しかし、その猫人は四人と会ってすぐに口を聞いた訳では無かったのだ。
何か傷でも負っていたのか、しばらくは眠ったままだった。



 四人はこの荒野に建てられた、建設の由来と目的を知る者がこの世を去っている今、様々な謎を抱える事となったこの小屋で四人はゆっくりと、猫人が目覚めるその瞬間を見届ける。

「お、猫人起きたぞ!」

 ただ一つの木造のテーブルの上で仰向けになって寝かされていたベージュの毛並みを持つ猫人がゆっくりと、両目を開き、そして同時にスキッドが声をあげる。

「やっと起きたかこのニャー公めぇ」

 フローリックは双角竜装備のヘルムを外した状態で猫人を上から見下ろすような目線で睨みつけながら、侮辱の意味を込めたような呼び方で対応してみせる。

「ここって……どこだ……?」



――ようやく猫人は意識がはっきりとし、声を出し始める――



 愛らしい外見に似合わず、やや低めで男前な印象を与える声色が四人の耳に届く。

 その小さな上半身を持ち上げ、深紅の可愛らしい瞳で周囲を見渡し始める。



「ここは小屋の中です。猫人さんどっか痛い所とか無いですか? ここなら安全ですので遠慮無く申し付けて下さい!」

 クリスはテーブルの両手をついてやや前屈みの姿勢になりながら、この場所を答え、そして身体の無事を確かめる。

 猫人のすぐ横からクリスの赤殻蟹のヘルムの額当ての間からうっすらと映る水色の瞳が見つめてくるが、それに特に妙な感情も覚えず、猫人は再び言葉を発する。

「お前ら、誰だ?」

 初めて見た相手に対してはごく一般的な言葉であろう。猫人から見ればどこの誰だか分からない四人組が一体何者なのかを訊ねるのは当たり前の話である。



「私、クリスティーナって言います。あ、これからはクリスって呼んで下さい。それからこの人達は私の仲間なん――」
「おいちょ待てクリス。こいつなんか妙じゃねぇか?」

 クリスは言われるがままに自分の名を明かし、そしてそのまま残された男三人の名前も紹介しようとしたが、フローリックが横から現れ、止められる。



「なんだ? 妙ってのは」

 猫人は残された男三人がクリスの仲間であると言う事を理解したのかを答えず、フローリックの言葉にのみ反応を示す。

「お前一応オレらに助けられたんだからよぉ、『誰だ』とか言う前にまず礼ぐれぇ言えって話だぞ」

 猫人の態度が気に入らなかったのだろうか、フローリックは威圧的に右手をテーブルについて寄りかかりながら、上から目線で睨みつける。



「ハンターなんか金で動いてんだから助けんのが当たり前だろ? 礼は報酬金が証明してんじゃねぇのか?」

 フローリックの威厳のこもった態度にも屈する事無く、元々ハンターは報酬金を一番の目当てにしているであろうと、猫人は意見を述べる。その態度はどこか上目線にも見えてくる。

「んなもん関係ねぇだろ。助けられたら『ありがと』ぐれぇ言えや。こっちはなぁ、さっきバサルの野郎とやりあった後だったんだぞおい。まあ今は寝かせてっとこだけどなぁ」

 相変わらずフローリックも引き下がらず、まずは礼儀を弁えるように施すが、それで猫人が納得すれば苦労はしないだろう。



「てかそんなのよりなんでこいつ『ニャ』って言わねぇの? 普通猫人だったら言い終わったとこで『ニャ』って言わなかったっけ?」

 スキッドはこの猫人の特異な部分に気付き、ある意味でフローリックの威厳の篭った言葉からフォローするかのように、言った。



――確かに通常は語尾に『ニャ』とつけるものであるが……――



「なんだ? 猫人だからってそんな決まりきった約束守る必要あるってか?」

 相変わらずこの猫人は誰に対してもそのきつい口調を緩める事は無く、スキッドを睨むように見つめながら問い質す。

「なあクリス? こいつ猫人だけど全っ然可愛くねぇなぁ? っつうかお前それ以前に早く名前教えろっつの。それとも『猫人』ってそのまんま呼んでもいいのか?」

 スキッドも猫人の態度にやや腹を立てたのか、すぐ隣にいるクリスに訊ねてすぐに猫人に向き直り、自己紹介をやや強引に勧めようとする。



「種族で呼ばれるっちゃあ気分悪くなんなぁ。俺はエルシオって名がある訳だ。そっちで呼んでもらわんとな」

 この猫人は名前を明かしていなかった為に周囲からは種族名で呼ばれ続けていたが、やはり名前がある以上はそっちで呼ばれる方が良いのだろうか、態度は相変わらずだが、ようやく明かしたのだ。

「えっと……、エルシオさんですね! 一体ここで何があったんですか!? エルシオさん外で凄いぐったりしてたんですよ!」



――名前を知られると、ここまで明るく接されるものなのだろうか?――



 クリスは早速その猫人の名前を呼び、そして心配そうに多少声を荒げながらも、優しく接してみせる。

「実はだ、俺にはちょい仲間がいてだ、でも途中でデス――」
「お前クリスに対しちゃあすっげー素直じゃねぇかコラ。オレらだってわっざわざおめぇの事助けてやったんだぞコラ」

 クリスに対してエルシオは特に躊躇とまどいも見せずに淡々と事を説明しようとするが、やはりフローリックとしては先程までのまるで見下されたような態度を放置出来なかったのだろうか、強引に横から入り込み、喧嘩でも売る勢いでエルシオを睨み始める。



「折角話に入るとこだってのにお前は俺の機嫌損ねてもいい訳だ?」

 エルシオは少女に話しかけられている間は平常心を保っていたが、男が入ってきた途端に先程と同じ威圧感を再発させ始める。

 まるで自分が非常に希少価値の高い何かを持ち、それを誇るかのように小さな腕――前足の事であるが――を組み始める。

「んだとコラァ! てめぇそろそろ口閉じねぇとしばき潰すぞ!」



――とうとうフローリックは右手だけで猫人を乱暴に持ち上げ……――



 その光景に残された三人は多少の驚きを見せるものの、結局の所はエルシオの態度に問題があるとして殆ど口出しをしようとはしなかったが、約一名だけは例外だったようだ。



「ちょっとやめて下さいフローリックさん! この子怪我してんですよ!」

 暴君と化し始めたフローリックの右腕をクリスは両腕で抱きかかえるように押さえ、暴力を止めようとする。

「クリス、心配すんな。これは教育っつってなぁ、助けてもらった側の分際で偉そうな事ほざいてる奴はこんぐれぇされんのが丁度いいってやつよ」

 フローリックの意識では見た目以上の暴行を加えるつもりは無いのかもしれないが、やはり黙って見ている訳にもいかない光景である事に間違いは無いだろう。

 クリスの真剣な水色の目線に気まずさを覚えたのか、ゆっくりと猫人ことエルシオをテーブルに降ろす。



「最近はレジスタンスな猫もいるもんだぜ〜。そんなにヒューマンが嫌いだってか〜?」

 ジェイソンは珍しい反抗的な性格の猫人を見つけたからなのか、フローリックのように怒りを露にする真似は見せず、まるで観賞するかのように腰の両側にそれぞれの手を当てながら口に出す。

「嫌いなはずねぇだろ? 俺も人間なんだからなあ」



――何を言っているのだろうか? この猫人は遂に人間を出し始める……――



「何言ってんだよこいつ。人間ってかもう猫人そのものだろ? とうとう人間を夢見るようになったってか? やっぱ可愛いとこあんだなあ!」

 勿論エルシオはどこからどう見ても猫人そのものである。だから台詞は全く説得力を持たないのだ。

 スキッドはそんな自分の種族とは別の物に憧れを抱くような所が猫人の外見と同じく可愛らしく見えたのだろうか、からかうように指を差してみせる。



「馬鹿にしてんのか? 俺はこれでもにんげ――」
「そっかお前まっさか人間に変身出来るとかほざくのかコラ。んな魔法みてぇな事出来っ訳ねだろこの妄想たらしが」

 まさかエルシオは特殊な秘儀を発動させる事で人間にもなれるのかと考えたフローリックであるが、結局はそれは魔法のような原理であると馬鹿馬鹿しくなり、意味の分からない事を喋りだしたエルシオのやや小さい頭を軽くどついてやる。

 双角竜の甲殻で作られた篭手アームを装備したままである為、相当力を抜いてやったが、被害者側エルシオはかなり辛いものがあるかもしれない。



「いってぇなこの野郎! 何様だてめぇ!」

 エルシオはあのなごやかな猫人とはとても思えないような乱暴な口調で怒鳴り、圧倒的な体格差がありながらも、恐れる素振りも見せずに今にも飛び掛ろうと立ち上がる。

「お前が言ってんじゃねぇぞゴラぁ」

 相変わらずフローリックも相手にペースを譲る事をせず、身を乗り出しながら、元々低めで威圧的な口調に更ににごりを混ぜて威圧感を与えている。



「ちょっとやめて下さいってば!」
「マジでストップだぜ」

 相変わらず喧嘩をやめようとしない二人に対して再びクリスは声を荒げ、そしてジェイソンも後に続くように落ち着いた態度で静止を投げかける。

「っつうかどっからそんな人間とか考え付くんだろうなぁ、結構メルヘンな猫人ちゃんだこと」

 喧嘩を直接は止めようとしていなかったスキッドはやや後方からエルシオを嘲弄ちょうろうしてみせる。



「俺を疑うのか?」

 周囲から見れば人間だと言う話はただの馬鹿みえでしか無いとは思うが、エルシオの瞳から真剣な色が抜ける事は無かった。



「いや疑うだろ? 普通変身っつったら……んとおれが知ってる奴ったら魔法少女とかの変身シーンとかだぞ!」
「はぁ?」

 スキッドは突然非常に妙な話をし始め、フローリックは今度はスキッドに対して鋭い目線を飛ばし始めるようになる。



「お前なんだその話……」

 エルシオもスキッドの話に途轍もない違和感を覚え始め、深紅の瞳を細めながらスキッドにその続きをさせる。



「ああこれかぁ、漫画で見た事あんだけどなぁ、未成年ぐらいの少女がだなぁ」
「おい」
「お約束のアイテム使ってそのまんま明らか魔法使いって感じの格好に」
「ちょ待てやおい」
「なってだ。して敵どもをその魔法でビシバシ可愛く仕留めるっつうのが醍醐味だいごみって内容だぜ!」
「いい加減やめろお前」

 スキッドは間にフローリックの言葉が入ってきても全く口を止める事無く、自分の趣味話を続けるが、ようやく終わりを迎えた所でフローリックの静止の声がスキッドへ鮮明に届く。



「何だよ『やめろ』って。おれはなぁ、こいつが現実じゃあありえない変身とか言ってっから、おれが分かりやすい例持ってきて説明したってのに」

 スキッドは止められた意味の奥を理解していないのだろうか、とても人の前で言うべきものでは無かったと言うのに、自分の説明を未だ誇らしげに思っている。

「説明なんかどうでもいんだよ。っつうかなんだよ魔法少女とか。しかもお前後半『可愛く』とかすっげー調子こいだ事言ってたじゃねぇかよ。もっと別の例え持って来いって話だぞお前」

 フローリックは今スキッドが話した内容をどう捉えているかはまだ分からないが、それより、例えに使った材料に対して言い分を持っていたようである。



――しかし、そのような例え方を使うとは……――



「まあ別にいいだろフローリック。そう言うのがキッズのホビーって言うんじゃないのか?」

 ジェイソンは落ち着いた様子でフローリックをなだめようと、僅かながらスキッドのフォローに回ってやっているが、なだめる必要があるほどフローリックも荒れていた訳では無かっただろう。

「けどよぉジェイソン。魔法少女っつったらかんなりそっち系のあれだぞお前」

 いくら友人に言われたとしても、フローリックは納得出来ない様子である。



「なんだよ! 馬鹿にすんなよなぁ! あれでも男のロマンの集大成ってやつなんだぞ! 現実に飽きた若造達を未知の空間に――」
「お前は一回帰れ。して一遍死んで来い」



――遂にフローリックはとんでもない宣言を下し始める……――



 フローリックは隣に立っているスキッドを強引に後方へと腕一本だけで押し飛ばし、淡々とした口調で言ったのだ。



「って何言って来んだよ! 死ねってお前禁句だ――」
「お前な〜にが現実に飽きただお前。完全妄想行ってんじゃねぇかコラ。結局お前もこのニャー公と同類だっバーカ!」

 力強く否定され、スキッドは歯向かおうとするも、即座にフローリックに止められる。

 スキッドの台詞からは、現実では味わえない魅惑の世界を堪能出来ると言うある意味で淫らな行為が読み取れたのだろう。結局の所、『変身』とか言っている時点でエルシオもスキッドと同類に近いと言う事なのだろう。



「スキッド君……」

 一応クリスはスキッドの味方ではあるが、やはり今のスキッドの趣味と邪念の混じった発言は彼女の思考を歪ませるには充分だったかもしれない。

 名前を呟いた後、なんと声をかけて良いか思いつかなかった。

「誰がニャー公だおい! そいつと一緒にすんな!」

 エルシオも負けじと怒鳴り、スキッドと同類にされる事だけは何としてでも回避しようと必死にあらがう。



「こっちはなぁ! お前に説明してやったせいでこんな扱い喰らったんだぞ!」

 スキッドも折角役に立とうと説明を施したと言うのに逆に自分の評価が下がる破目になってしまい、両拳を握り締めながらエルシオに怒鳴りつける。

「おいおいマジでストップしといた方がグッドだぜ? 元々何ヒアーすっかフォーゲットしてねぇだろうなぁ?」



――そろそろ本題へ行かなければいけないのでは無いだろうか?――



 ジェイソンは下らない話題から始まった言い争いを止めようと、エルシオの座っているテーブルと、フローリックの間に無理矢理入り、そして両腕をそれぞれ両側へ押すように広げていく。



「分かってるっつうの。っつうかスキッドこいつの今言った事もう完全ドン引き決定だろ?」

 フローリックも理解はしていたようであるが、それでもスキッドの先程の言葉が頭に染み付いていたのだろう。隣にいるスキッドを荒々しく右親指で差しながら、いかに問題があったかを話す。



「なんだよ〜ドン引きってよ〜。だからあれは男のロマ――」
「ああんも〜! スキッド君も大丈夫! 大丈夫だから! それとエルシオさん! お願いです! 早く話聞かせて下さい!」

 再びスキッドは歯向かおうと、どうでもいいような話を継続させようとするも、クリスはジェイソンと同じく強引にスキッドを自分側へ引っ張るように止めながら、なんとかエルシオに話をしてもらうように懇願する。



「ったく……じゃあ今喋っから、しっかり聞いてろよ」

 エルシオは猫人らしかぬ行為として、舌打ちを一度し、そして短い後足を胡坐あぐらでも組むように曲げて座り込み、話す体勢に移る。

「っつうか元々言やあお前が……や、いいや、早く言え」

 実際の所はこの猫人エルシオが早く話をしなかった為にごたごたが発動したのだ。だからそこについて一言言ってやろうかとフローリックは思ったが、また面倒になると考え、途中でやめておいた。



「んとだな、俺らは狩猟区域管理局のもんでな、この荒野ココに調査に来てたんだよ。仲間とな」

 先程と変わらずその視線には威圧的なものが感じられるものの、今は真剣な話だからか、ゆるんだ様子が一切見えない辺りからいかにこの話が重要であるかがうかがい知れる。

「管理局とかいかにもって感じだな。所で仲間って結局猫人の集団か?」

 スキッドはその区分に敏感に反応し、僅かながら興味を抱いたような笑みを浮かべながら、その他の仲間について質問を投げる。



「仲間は猫人じゃないな。鳥と、牛と、羊と、後は爪の奴ってとこか……」

 どうやらこのエルシオと同行していた者は人間ならざる者達のようであるが、最後にあげた人物は何に例えれば良いか分からず、半ば適当である。

「随分豪華なメンバーじゃねぇか。っつうかなんの調査来てたんだよ」

 腕を組みながら、フローリックはここに来た目的をやや威圧的な態度は相変わらずでそれを聞こうとする。



「ふん、それだなぁ、なんかここで妙な岩壁竜の大量発生があったって聞いてだ、踏査とうさしに来てたって訳だ」

 やはりフローリックの態度が多少気に入らなかったのだろうが、他の者達はそのような態度を今は取っていなかったし、元々話す事が前提となっていたのだから、躊躇ためらわずに説明する。

「大量発生だぁ? あんなもん一頭いっぴきしかいなかったぞ? お前の気のせいじゃねぇのか?」



――確かに彼らは一頭の岩壁竜しか目にしていなかったが……――

戦ったのは一頭だけだし、それに通り道に別の者に出会った訳でも無かった。
いくら大量発生と言われた所でしっくり来るとは言い難い。
何を意味しているのだろうか?



 フローリックはエルシオの言葉がどうも信用出来ず、勘違いか何かでは無いかと言い返す。



「それはお前らの話じゃないか? 大量発生ってのは事実だ。こっちは従前じゅうぜんから調べ続けてたんだからなあ。管理局の力無礼なめんなよ」

 どうやらバブーン荒野ここの調査は結構昔から行われていたようである。エルシオは疑い続けるフローリックを何としても納得させようと、取り乱さず、やや冷静に説明を続ける。

「でもファクトはそんなグループで出てくるって事は無かったぜ? オールドタイムのストーリーなんかあてに出来るのか?」

 いくらエルシオの説明があった所で、実際の所は集団で出てくる事も無かったし、それにあの岩竜との戦いの最中に乱入される事も無かったのだから、昔の事を信用出来るのだろうかと、ジェイソンは考え始める。



「そこまで古い話じゃないんだがな」

 しかし、気が遠くなる程の昔の話では無いようである。エルシオは二本の小さな腕前足を揺らしながら凝りをほぐす。

「でももしエルシオさんの話が本当ならずっとここにいるのは危ないんじゃないんですか?」

 クリスはエルシオを信じているのだろうか、言っていた内容が真面目なものなら、ここに長居するのは危険だと判断し、この小屋を後にしてしまおうと言う判断を提案する。



「心配は要らん。この小屋周辺にはビルネっつう植物が生えてる。そのビルネの匂いは岩壁竜が嫌うもんだから、ここにいりゃあまず襲われん。この小屋が残ってるのもその為だ」

 流石は長い間この地を調査していただけの事はあり、エルシオはこの地の特徴を話し、この小屋がいかに安全であるかを知らしめる。

「確かにこいつのインフォメーションは正しい訳だなぁ。もしあいつがうじゃうじゃウォークでもしてりゃあここもセーフティエリアじゃなくなるからなぁ」

 このような場合はその地に詳しい者がいれば非常に助かるものである。飛竜と言う脅威を改めて考え直せば小屋は決して盾と言う役割を完全には果たしてくれないだろうと結論が出るはずだ。



 ビルネと呼ばれる植物が岩壁竜を追い払ってくれているのは非常にありがたい事だ。

「さて、これからどうする? もうオレらはいちおやる事済ませた訳だし、もう帰っか?」



――元々の目的クエスト猫人エルシオの救出だから……――



 これ以上ここに残っていてもやる事は実質残っていないのだから、フローリックの提案は正しいものだろう。

 下手に別のものを欲張って命が尽きるような事になっても面倒だから、帰るのも決して悪くは無いはずだ。



「そしてリワードってやつ、貰わんとな! それがハンターだからな!」

 ジェイソンは帰った後に貰えるであろう報酬金を期待し、力強く両腕を伸ばす。

「とりあえず俺は仲間がどうなったか知り……!」

 エルシオはテーブルから飛び降りようと、立ち上がるが、突然声色が強張こわばり始める。



「ん? エルシオ、お前なんかあっ――」

―バン!!



――スキッドの言葉を遮ったのは、木造のドアが乱暴に開く音……――



「やっぱこんなとこいたかエルシオ〜!」

 その謎の男は恐らく、確実に、足でドアを開けたであろう、ゆっくりと右足を地面へと戻す。






■□■ エネミーデータ/Dreadful Memory ■□■

人種/Creature Type : 亜人

体色/Skin Color : 青

髪型/Hair Style : 珠をいくつも埋め込んだようなかたち

髪色/Head Color : 金髪

服装/Equiping State : 黄土色のクオーターパンツ・漆黒のレザーブーツ・
               両手首に付けられた神聖的なブレスレット・
               頭部に嵌められた漆黒の細い金属製ヘッドバンド・
               そして、裸の上半身

目色/Keen Eyes : サングラス着用の為、不明

武器/Beloved Weapon : 金色の杖のようなデザイン/ヴァナプラスタ
                ―◆先端を除く部分は二本の縄が捻れたような形状
                ―◆先端はやや膨れ上がり、更にその先端には穴が開いている

           〜〜END〜〜






 右手に黄金のロッドを持ち、まるで神様が地上に舞い降りたかのような風貌を見せつけながら、目的の人物猫人を見つめ続ける。



「なんだあいつ!?」

 フローリックは壁に立て掛けていた斬破刀を手早く手に取り、初対面の相手に単純に驚く。

「ビジターって奴だなぁ!」

 ジェイソンもインセクトオーダーを両手に取りながら、わざわざ自分達の為にここへおもむいてくれた客のような立場を持った相手に妙に笑顔で対応してみせる。



「また煩くなるぞこれ!」

 スキッドはグレネードボウガンと、弾薬の詰まれたショルダーバッグを背負い、いつでも相手に対応出来るような状態を作る。

「エルシオさん! 誰なんですかあの人!?」

 クリスは青い皮膚を持った謎の男がエルシオの名前を呼んだ辺り、何かしらのえんがあるのだと読み取り、金のつるぎと銀の盾をそれぞれ素早く装備しながら手早く訊ねる。



「デストラクトだ! モルガナんとこ所属のなぁ!」

 エルシオは手早く説明しながらテーブルから飛び降り、そして猫人特有の槌のような杖を右腕に持ち、やや頼りなさげに見えるも、勇敢な姿を見せつける。



―― 一方で、青い亜人こと、デストラクトは――

――まるで自分が有名人であるかのように、誇った笑みを口元に浮かべ

――ロッドをまるで銃のように構え、先端を彼らへと向ける……



「分かってんじゃねぇか。それより……」



◆■ ロッドを握る両腕が強くなり…… ■◆

「地獄の炎見せてやああんぜぇえええええ!!!」



π 吹き荒れる火炎/Vermilion Scream π

そのロッドから放たれた物は……
高熱を帯び……
巻き込んだ相手を容赦無く……

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